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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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6/9

手を繋いだらいいんじゃない?

「顔赤いよ? 大丈夫? 振り回し過ぎちゃった?」

「だ、大丈夫。そ、それよりこの強化がどれくらいの時間続くのか。それと一度に何人までかけられるかが気になる……」

「時間かー。確かにどれくらい強くいられるんだろ。ずっとだったらすごいね。これなら私も魔物とか倒せそう!」


 ラズは袖を捲って両腕に力こぶを作ってみせた。その姿がとてもバカっぽいのだが、なぜか可愛い。


「あ、そうか。ちょっとラズ、そのツボ両手で持ってじっとしててくれる? あ、足元は注意してね。力抜けたら落っことしちゃうと思うから」

「うん! いいよ!」


 ラズはツボを持ち上げた。



「…………」



「…………」



「ねえリョク? 私どれくらい持ってればいいの?」


 ラズは軽々ツボを持ち上げて立ち尽くしている。


「えっと、わかんないけど、強化が切れるまで?」

「えー! やだやだ! そんなのつまんない!」


 ラズがツボを置いてぴょんぴょん飛び跳ねた。いつもよりジャンプ力が高く、胸が激しく揺れる。


 ごん!


 ラズは宿屋の屋根に頭を打った。


「いてて、頭打っちゃった……」

「大丈夫? 強化されてジャンプ力も上がってるみたいだね。気をつけて」

「うん、ありがと」

「強化の持続時間は俺がやるよ。ラズは時間数えといてくれる?」

「わかった。数えとくね!」


 リョクは自分の手を見つめて、身体能力向上パラメータアップと唱えた。


 先ほどと同じように水色の温かい光が自分の体を包んだ。

 光は一瞬んで消えたが、強化をかける前と比べても、何も変わらない気がする。


「よっこいしょ」


 ツボは簡単に持ち上がった。ということは二人までは同時に強化をかけられることがわかった。次は時間だ。何時間か、何分か、知っておかないと。


「ねえ、まだあ?」


 ただただツボを持って立っているリョクを見るのに飽きたラズは玄関先に腰を下ろしている。ちょうどその位置がリョクから見るとラズのパンツが見えた。

 アニメで見る上井さんのパンチラが、目の前で実際に起こっている。目が離せるわけがない。そのおかげで数えていた時間がわからなくなった。


 リョクは一応、一から時間を数え始めた。


「ねえーリョクー」

「なに?」

「私思ったんだけどさ。そんなの持ってないで手繋ごうよ。痛くない程度に力入れてさ。そしたら切れたときわかるんじゃない?」

「た、確かに……」


 それは思いつかなかった。もしかしたら自分は相当バカなのかもしれない。あれほどの量のアニメやゲームを見てきたのに。


「ほら、凹んでないでこっちおいで。おててつなご」

「う、うん……」


 リョクはツボを置いてとぼとぼとラズの隣に座った。


「なにしてるの? 今切れちゃったらどれくらい続くかわかんなくなっちゃうよ。ほら。ぎゅー」


 ラズはリョクの手を取って握りしめた。


「うっ」

「ごめん、痛かった?」

「いや、大丈夫。そうじゃないから」

「ほら、リョクも力入れて。そうじゃないとわかんないでしょ」

「うん……」


 手が汗ばむ。


 心臓が跳ね上がる。


 顔が熱くなる。


 肩まで引っ付ける意味があるのだろうか。隣に上井さんがいる。ラズがいる。可愛い。


 こんなの数を数えるどころじゃない。


「まだ切れないねえ。ねえ、リョクはこれから何するの?」

「うん。魔王倒しにいく」

「また魔王? 転生者の人みんな『魔王を倒しにいく』って言って出て行ったけどまだ魔王生きてるよ」

「うん。だから俺が呼ばれたんだと思う。倒しに行かないと」

「それは絶対なの? もっと違うことしたいとは思わない? 例えば魔物狩りとか。隣町には魔物狩りって職業があるんだよ。それだったらリョクすごく似合ってると思うな。うん。そうだよ。魔物狩りになりなよ。私もついてくしさ」


『魔王を殺せ』


 リョクの脳内に何度も流れるのは女神の声だった。この声が、魔王を倒しに行けと背中を押してくる。それ以外のことをしてはいけないと言われていないのに、してはいけないと思わされてしまう。たとえそれが、最推しにすごく似ている女の子に結婚しようと言われているとしても。


「うーん、すごい魅力的だけど、やっぱり魔王を倒しに行かないと。それが俺の使命だから」


 こんな日常が続けば、それは絶対に楽しいだろうな。そう思えるのに、『魔王を殺せ』と女神の言葉が何度も頭の中で響いてそれ以外を許さない。そして、素直に魔王退治に行かないといけないと思ってしまう。


「そっかー。絶対いいとおもったんだけどなー。あ、リョクの力が一気に抜けた気がした!」

「ほんと? 強化切れたのかな?」

「そうかも! ツボ持ってみたら?」

「そうだね。よいしょっと」


 先ほどと同じように持ち上げたのに、こんどは重たくてぴくりともしなかった。


「だめだ、持てない。強化切れてるみたい」

「あはは。私も持てなーい!」

「結局いろんなこと考えてて時間数えてなかった……」

「えー何してるの! でも大丈夫、十五分くらいだったよ?」

「ラズ数えててくれてたの?」

「だって数えてって言ったじゃん。リョクが言ったんだよ? ね? えらいでしょー」

「ふふっ」


 もう笑うしかない。なんなんだこの可愛さは。ラズは可愛すぎる。上井さんに似ていることを差し引いても可愛すぎる。本当に、今まで出会った女性の中で一番可愛いと思う。


「ラズのおかげで色々わかってきた」

「ほんと? 力になれてよかった!」

「本当にラズのおかげだよ。強化の持続時間と掛けられる人数。とりあえず効果時間は十五分程度で、掛けられる人数は今のところ二人まで。これ以上の人間にかけられる可能性はあるけど、そもそも何回使えるのかもわかんないし、これ以上俺の能力を人に知られたくないからとりあえず実験はここまでかな」


 次はどうしようか。お金を集めるためには魔物をから魔石を集めないといけないんだっけ。


「ねえ、リョク?」

「うん? どうした?」

「私ってかんてーできる?」

「ええ? ラズを?」


 ラズが突飛なことを言い出した。

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