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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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上井さんってだれ?

「えっとね、おれは普通の会社員でただのアニオタで、異世界転生ものもまあ普通に好きだったんだけど、まさか自分が転生者になるなんてって感じで。ていうかそうだ女神様にはスキルをもらったんだ。鑑定スキルとバフスキルっていってた。あ、ちょっと待って、今のなし、聞かなかったことにして」


 突然リョクが口を噤んだ。ラズに対してすこし不信感を抱いたのだ。こういった転生者がよく現れる村の場合、転生者狩りをしている可能性が高い。というのをアニメで見たことがある。もしかしたらラズもそうなのかもしれない。


「リョク? どうしたの?」

「えっと……」


 か、かわいい。こんなかわいい子が転生者狩りなんてことがあるか?


 そもそもこんなに上井さんに似てるんだ。上井さんに似てる女の子が悪い人間なわけがない。


 そうだ、そうだよ。


「ら、ラズのこと、教えてほしいな」

「私? いいよ。えっとね、私はこの宿屋の一人娘で、ここで働いてるの。あ、そうだ、十八歳だよ。リョクとは一歳差だね。結婚できる」

「け、結婚?」

「うん。私働きたくなくてさ。恋人探ししてるの。一緒に住んでくれて、私の代わりに働いてくれる、そんな人。そしたら今リョクが現れたの。運命かなって思って。リョクは私じゃダメ?」

「え、ええ、ダメっていうか。ちょっとまって」


 転生者狩りかと思ったら、美人局だったって可能性ある?


 でも、もし本当に結婚できたら。それはとてもいい人生になるかもしれない。


「あのね、隣町では魔物狩りが仕事として盛んでね、リョクには魔物退治をして生計を立ててほしいなって思ってるの。あ、怪我したら私が治すから。私回復魔法使えるの」

「回復魔法?」


 ラズはなんでも教えてくれるし、なんなら何故か手を握ってくれてるし。大丈夫。


 ていうか手汗やばいかも。


 リョクはラズの顔を見た。


「うん?」


 うん、大丈夫、ラズは転生者狩りでも美人局でもない。普通に優しい、本当のことを言ってくれる女の子だ。


「ありがとう。そう言ってくれてとても嬉しい。でも、俺魔王退治に行かないといけないんだ。脳内で女神様に魔王退治をしろって言われてる感じがする。それに、まだ魔物退治が得意かどうかわからないし。俺のもらったスキル、鑑定スキルと、バフスキルなんだ。鑑定スキルは攻撃用じゃないと思うし、バフスキルも自分にかけられるものかわからない。それに武器ももらえなかったし、お金もない。まずは自分のことを知るところから始めないといけないんだ」

「そっか、じゃあまずはスキルの確認する? それとも宿の確保? っていっても宿はうちしかないんだけど」

「そっか、じゃあ宿はここか……。まあお金ないんだけど……」

「お金は働くか魔物倒したら手に入るよ。といっても魔物倒して手に入るのはお金じゃなくて魔石なんだけど」

「魔石?」

「うん、この辺りの魔物だとこれくらいの大きさで、赤とか緑とか、色も魔物によって違うの。見た目は宝石みたいなんだけど、宝石とちがって魔力が篭ってるんだー」


 ラズは右手でオッケーマークを作って魔石のサイズを表した。


「それってお金として使えるの?」

「この村だと骨董品屋さんとかが換金してくれる。それに魔石は魔道具に使ったりするから物々交換もできたりするよ」

「魔道具ってのもあるんだ」

「うん、魔法使いの人が作った魔力ない人でも火を出したりできる道具。料理とか夜に部屋を明るくしたりする時に使う」

「日本の電気やガスみたいなものか……。ということはとにかく魔物を倒さないとダメだな。うん、決めた。じゃあまずはスキルの確認からしていいかな。やっぱり自分の力を知っておきたい。まず鑑定のスキル試したい」

「わかった!」


 ラズは握っているリョクの手をぎゅっと強く握った。


「ていうかさ。ラズはなんで手伝ってくれるの? 仕事とか自分のこととかしなくて平気?」

「大丈夫、ちょうど仕事も終わって暇だったの。手伝ってあげる!」

「ありがとう、助かるよ。ちなみにスキルって使い方わかったりする?」


 頭をかきながら、リョクはラズに聞いた。スキルの使い方は女神様は教えてくれなかったのだ。


 というかスキルの詳細も教えてくれなかった。


 なにかちょっと女神様に一線引かれていた気がする。リョクが女神に対しテンションを上げ過ぎてしまったからだろうか。


 そんなこともあり、目の前に最推しの上井さんに似た少女がいても、テンションを上げなかった。頑張った。本当は触ったり飛び跳ねたり走り出したりしたい。上井さんの良さについて日が暮れるまで語りたい。でもぐっと飲み込んだ。


「わかんない、多分こっちの世界の人はスキル持ってないと思う。魔法は使える人いるけど、スキルって使ってる人見たことない。あ、もしかしたら魔物は持ってるのかも……」

「そうなんだ、じゃあなんとなく使ってみるしかないか……」


 鑑定っていうとやっぱりアイテムとかだよな……ということはこのズボンとか。


 リョクはじーっと足を見つめてみた。しかし何も起こらなかった。


「うーん、どうやるんだろう。見つめてみてもダメみたい」

「そーなの? なんだっけ、かんてーだっけ?」

「うん、鑑定」

「じゃあかんてー!って思いながら見つめてみたら?」

「なるほど」


 鑑定!


 すると、視界に文字列が浮かび上がって見えた。



『鑑定結果……ランクE 転生者のズボン どこにでもあるようなズボン。冒険者が最初に身につけそうな見た目のズボン。その実履いているのは転生者のみである。正直履かない方がいいレベル』

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