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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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3/8

どうして転生者は逆さ向けなの?

 ケーブの玄関先に置いてあるツボの中から縦に綺麗な黄緑色の光が立ち上っているのが見えた。ラズはこの光の正体を知っていた。


 これは……。


「転生者だ!」


 ラズは走ってケーブの玄関先に置かれたツボの元に向かった。


「転生者だ! 転生者だ!」


 絶対同い年がいい!


 ラズはそのことだけを考えて懸命に走った。

 大きな胸が揺れる。


 ツボの前に辿り着くと、ツボの中から天井に突き刺さるように光が昇っていた。


 きたきたきた!


 今度はどんな人が出てくるんだろう。絶対同い年がいい。それで、恋に落ちるの。

 それはそれはロマンチックな恋に落ちるの。


 先程まで眩く光っていた光の柱が徐々にその眩さを失っていく。それと同時にツボの中から飛び出した足のようなものの影が現れ始めた。


「あら。また逆さだ」


 そう。いつも転生者は逆さ向け現れる。ラズが見た限りでは全ての転生者が逆さ向けで現れていた。

 両親に聞いても、逆さ以外は見たことがないらしい。なぜかはわからない。わからないけれど、逆さ向け現れる。


 ラズはツボの中の転生者に声をかけた。


「何歳ですかー?」


 逆さ向け転生させられた人間にかける一言目とは思えない言葉だ。そもそもまだ彼か彼女かすらもわからないのに。とても酷な質問だ。


「だ、誰かいるんですか? ていうかここどこですか? どうなっているんですか?」


 あ、声はいい。聞き心地のいい声だ。男の人だ。これで同い年だったら最高かもしれない。


「はーい。いますよー。あなたは今ツボの中で逆さ向けになってます。というか何歳ですかー?」

「ツボ? どういうことですか? 俺って、あれ?」

「転生者さんですよね? 何歳ですかー?」

「俺の知ってる転生者と違う……」


 ラズは逆さ向けの転生者に何度も年齢を聞いた。徐々に状況を理解してきたのか、転生者が年齢を答えた。


「じゅ、十九歳です! なんか自分じゃ出れないっぽくて、助けてもらってもいいですか?」


 十九歳!

 きた。同い年じゃないけど一歳だけ年上だ。声も好き。これは恋の始まりだ。


 ラズはそう思って足を引っ張った。


「よいしょっと」


 おもいきり引っ張ったのに転生者の体はツボの中から全然抜けなかった。そもそも普通に考えてラズのような小さな女の子がツボから足がでるほどの青年を持ち上げられるわけがない。


「だめ。私の力じゃ持ち上げられない」

「自分もこのままじゃ出られそうにないです。このツボってもしかしてあなたのですか?」

「んー。あなたのっているより、うちのって感じです」

「うちの?」

「うん。うちの宿屋に代々伝わるツボです」

「なるほど……あの、倒しちゃってもいいですか?」

「そっか! いいですよ! 忘れてた! いつも倒してたんだった。

このツボ頑丈なんで倒しても壊れたことないんです」

「じゃあ揺すって倒します」

「私も手伝うね! せーの!」


 ツボは少しぐらっと揺れたが倒れるまでにはいかなかった。


「これ繰り返しましょう! そしたら勢いついて倒れそうです!」

「はい! 私も頑張ります!」


 顔も名前も知らない彼を助けるため、ラズは一生懸命になった。力をあわせる。それだけで恋が芽生えた気がする。


「せーのっ!」


 ごりっとツボと地面が擦れる音がして、砂粒を潰しながらツボが倒れた。ようやく倒れたツボを目の前にして、ラズは飛び跳ねた。もちろん大きな胸はそのたびにたゆたゆと揺れる。


 ツボの中から青年がぞぞっと這い出してきた。ツボの中から這い出てきた青年を見て、ラズは固まった。胸がさっきの飛び跳ねの余韻で少しだけ揺れている。



 し、しまった。顔が全然タイプじゃない……。



 ラズは思ってしまった。顔が全然タイプじゃない。と。

 でもどうしよう、せっかく同年代が現れたのに。タイプじゃないけど、仕事辞めたい。声は好きだし、働きたくない。隣町行きたい。


「えーっと、大丈夫? 固まっちゃってるけどどうかした?」

「あ、大丈夫。ちょっと驚いただけ。えっと、転生者の人だよね?」

「だよね、俺って転生者なんだよね?」

「え。た、たぶん。女神様に会ってきたんでしょ?」

「会ってきた。めっちゃ綺麗なブロンドのロングヘアで、胸おっきくて薄着で。あーたまらんかった。めっちゃドキドキした。えっと、俺上井さんの限定フィギュア買った帰りに雪で滑って転んだんだけど、そこで死んじゃったっぽいんだよね。それで……」

「うえいさん?」

「ふわりウエイトレスの上井さんっていうアニメがあって、そのアニメのヒロインの上井さんが最推しなんだけど。って、あれ?」


 青年がラズの顔をじっくりと見る。そして体を。舐めるように。


「な、なに? 私の顔に何かついてる?」

「君、上井さん? ここって上井さんの世界?」

「ち、違うと思うよ。私はラズベリー。みんなにはラズって呼ばれてる」

「いや、上井さんだ。すっごい似てる。すごい、その髪色って地毛? やっぱ転生先の世界はファンタジーの世界なんだ。やば、めっちゃ緊張してきた。ていうかめっちゃかわいい。やば」

「えっと、名前聞いてもいい?」

「ああ、ごめん。和卓綠わたくりょく、リョクっていいます」

「リョクね。転生のこと詳しいの?」

「詳しいっていうか、流行ってたんだ異世界転生もののアニメ。だから知ってるっていうか、自分が主人公になれるの嬉しいっていうか。ラズがまじで上井さんすぎて可愛すぎるっていうか」


 なんか面白い人だな。これなら一緒に住んでも楽しいかもしれない。


「ねえねえ、リョクのこともっと教えて!」

「え、俺のこと。いいよ」

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