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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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2/8

同年代の男の子はどこ?

 歩いて少し行ったところにある干し肉屋に着くと、店先では体の大きなヒゲのおじさんが店番をしていた。


「おじさん! 干し肉ください!」

「おお、ラズちゃん。おつかいかい。えらいねえ」

「もう! おつかいじゃなくてお仕事だよ!」

「あっはっは。そうかそうか。ラズちゃんも大人になったねえ。昔はこんなに小さかったのに」


 干し肉屋のおじさんは手を水平にして自分の腰あたりをとんとんと叩いた。


「そんなのはだいぶ前でしょ! もう! 早く干し肉ください!」

「はっはっは。はいはい。今日は何個だい?」

「あ、聞いてこなかった……どうしよう」

「じゃあとりあえずいつもくらいにしとくかい?」

「うん、じゃあいつもくらいで!」

「モゾのもも肉五つとハツ三つね。ラズちゃん可愛いからもも肉一つおまけしちゃう」

「わー! おじさんいつもありがとう!」

「じゃあこれね。重いから気をつけて」

「うんっ。ありがとう」

「またきてくれよ! ラズちゃん!」

「おじさんこそ、今晩うちに飲みにきてね!」


 ラズは後ろに手を回して上半身を前に少し倒した。もちろん胸元が強調される。きらりと音が鳴りそうなくらいの決めポーズだ。このポーズをラズは無自覚でやっているから恐ろしい。


「ラズちゃんに言われたら行くしかねえやな」


 おじさんは顔を赤らめながら言った。


「えへへー、ありがとー。じゃあね」


 大きな干し肉が八つも入った袋を重たそうに持って帰ると母のネーロが頭の鈴を鳴らしながら厨房から出てきた。


「ありがと、助かるわ。じゃあ客室のシーツの支度をよろしくね。昨日泊まってったお客さんの部屋だけでいいからね」


 昨日は珍しく三組が泊まっていた。ラズは綺麗なシーツをしまっている部屋から新しいシーツをとって、部屋のシーツを新しいものに変えた。これがなかなか重労働で、今日の少し暑い気温のせいか少しひたいに汗をかきながらラズは作業をした。


「ふう。おーわり」


 厨房に行くと、ネーロと大柄で少し太ったハンチング帽を被ったブラウンが夜の酒屋のための準備をしていた。


「お母さん終わったよ。もう休んでいい?」

「お疲れ様ー。じゃあ夜お願いね。あんたが出ると売り上げ上がるのよ」

「もう、私で商売しないでよね」


 ラズは関係者以外立ち入り禁止の看板が立っているドアを抜けて、二階にある自室に向かった。


「ふうー。今日も何もなしかー。いつもと一緒。なんかいいことないかなあ。若い冒険者が泊まりにきたりとか、働かなくてすむこととか……」


 ラズは自分の柔らかなベッドに寝転んで天井を見つめた。


『働きたくない』


 とラズの額に書かれている。ような気がした。


 しばらくゴロゴロしていたが、それも疲れてきた。酒場になる六時までにはまだ八時間くらいも時間がある。眠ってもいいけれど今はまだそれほど眠たくない。


「散歩でも行こっかな」


 ベッドから飛び起きて家の裏口から外に出た。どこに行くとかではなく、ただぶらぶらとあてもなく村の中を彷徨い歩く。


「おお、ラズちゃんおはよー!」

「あ、おじさんおはよー!」

「ラズちゃん今日もかわいいね」

「ありがとー! でもそんなことないよ」

「ラズちゃん暇ならおじさんと話していかないかい?」

「ごめんね、用事があるから。もしよかったら夜にうちに遊びにきて!」

「商売上手だなあまったく」


 すれ違う人、通り過ぎる人、おじさんばかりがラズに話しかける。ラズは本当に男性から大人気だ。逆に、女性にはあまり声をかけられることはない。かけられても挨拶くらいなものだ。


 そもそも、この村には若い女性というものがほとんど存在しない。いるのはラズと、村の外れに住むヴェルミヨンという女性だけ。あとは三歳以下の子供か、すでに家庭を持っているおばさんばかり。ラズとヴェルミヨン以外にもいるにはいるけれど……といった感じで訳ありだったりする。


 男性についてもそうだった。男性に至ってはラズやヴェルミヨンの同年代はおらず。一番歳が近くて八歳というものだった。これでは恋愛すらできない。時折出てくる転生者もおじさんが多く、しかも皆揃って魔王を討伐するためにここにきたという。取り憑かれたように。だからラズとは遊んでくれない。


 すこしえっちな目で見られたり、話しかけられたりはするけど。


「隣町とか遊びに行けたらいいのになあ。ヴェルは護衛してくれないし」


 村の外に一歩出ると、そこは魔物の巣窟。強力な魔道具で村を守っているので村の中は安全なのだが、外に出ると魔法の加護が当然なくなってしまう。魔物を倒せるほど強い旅人や、魔法で身を守る商人についていくしかない。しかしそれも皆おじさん。それでは旅も楽しくないし、帰ってきたいと思っても帰ってこれない。

 やはり若い、同い年くらいの旅人が来てくれないか。と毎晩祈っている。できればタイプの。


「はあ。同い年くらいの男の子降ってこないかなあ。そんで私たちは恋に落ちるの。恋ってどんなのか知らないけど。でも、一緒に隣町まで行ってそこで一緒に暮らすの。彼は魔物退治とかで働いて、私は家でごーろごろ。彼が帰ってくるころに合わせてご飯を作って一緒に食べるの。そのあとは一緒にお風呂に入って、一緒に寝るの。くふふ」


 ラズは口元にグーを当てて、くふふと笑った。その可愛さは、誰かが見ていれば問答無用で恋に落ちていたかもしれないほどの可愛さだった。


 あれ?


 なんか光ってない?

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