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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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18/25

旅に出るの?

「リョクー! 朝だよー!」

「ううん……。もう?」


 つい先ほどまで起きていたリョクはまだ眠気に襲われていた。


「私はお仕事してくるけど、リョクはまだ寝てる?」

「うん。もうちょっと」

「そっか。じゃあお仕事終わったら起こしにくるね」


 ラズはベッドから降りて服を脱いだ。リョクはその姿をしっかりと見た。

 正直のところ見ようとは思っていなかったが、まさか自分がいるのに服を脱ぎ出すとは思わなかった。やはりラズはブラを着けていなかった。先ほどまであれだけ眠たかったのに、完全に目が覚めた。


 しかし、リョクは寝たふりをして黙って見ていた。ラズはタンスからブラと服とスカートを取り出して着替えた。異性の着替えを見るのは始めてだった。女子の着替えってこんなにえっちなのか。


『鑑定結果……ランクSS ラズベリー・ライムストーン 十八歳。処女。上から92、56、84。プロポーション抜群。常々働きたくないと思っている。ラズベリーと結婚すれば必ず成功する。魅了チャームと回復魔法が得意』


 間違えて鑑定してしまった。


「あれ? リョク起きてる?」


 バレてしまった。しかしラズは着替えを覗いていたことになんの言及をすることもなかった。


 そういやラズってこうだった。


「う、うん。目覚めた」

「じゃあちょっとお仕事手伝ってくれる?」

「仕事?」

「うん」

「いいよ。わかった」


 リョクも元着ていた服に着替えた。ラズがいる中で着替えるのは恥ずかしかった。なんで男の俺が恥ずかしがって、女の子のラズが恥ずかしがってないのか。普通逆じゃないか?


「私は部屋のシーツ整えてくるから、リョクは表の掃き掃除してくれる?」

「うん。おっけー」


 二人で分担すると、当たり前だがいつもの半分の時間で仕事が片付いた。


「お母さーん! 今日買い出しは?」

「ないよ。大丈夫」

「はーい! じゃあお仕事終わり! なにする? もうちょっと寝る?」

「ううん。そろそろ隣町に行こうかなって思ってる」

「そうなんだ。ついて行っていい? 私も一緒に?」

「うん。でも昨日も言ったけど、魔物退治はできないよ? 魔王退治に行くんだ。魔王退治を止めようとすると電流が流れる呪いにかかってるんだ」

「そうだよね……」


 リョクは顔はタイプじゃないけど、それでも一緒にいて楽しかった。これから一緒に生活するのも楽しいだろうなって思ってた。結婚はわからないけれど、一緒に暮らしてみたいって。

 それなのに、女神様に呪われているなんて。


「だから、俺は旅に出ないと。転生者だから」


 旅は嫌だ。でも、リョクと離れるのは寂しい。まだまだ一緒にいたい。


「私、ついてくよ」

「ついてくって、魔王退治の旅?」

「うん。ついてく。だって、魔王倒せたら一緒に暮らせるんでしょ?」

「多分……」

「じゃあ外で待ってて! 準備してくるから!」


 ラズは部屋に戻って大きなリュックの中にたんまりと着替えを詰め込んだ。


「えーっと。これとこれと。あ、これも。あとこっちのスカートも」


 カバンからはみ出るくらい衣服を詰めて、ラズは宿屋の前に戻った。


「うわ、すごい荷物だね」

「うん、着替えはいっぱいないとね。……あ! ちょっと待ってて!」


 ラズはカバンを地面に置いて宿屋の中に戻った。調理場の中を見たけれど誰もいない。お父さんとお母さんはリビングにいた。


「どうしたラズ。そんな慌てた顔をして」

「お父さん、お母さん。私、転生者のリョクの旅について行くことにしたから」

「え?」

「だから、この家出て行くね。でもたまに帰ってくるから」


 ブラウンとネーロは目を丸くしている。あまりの衝撃に、言葉が出ない様子だった。


「お父さん、お母さん。急でごめんね?」

「そ、そんないきなり言われても……」

「もう! お父さん! ラズがこう言っているのよ? ラズのやらせたいようにやるって言ってたのはお父さんじゃない。ああ、ついにラズも旅に出ちゃうのね。寂しくなるわね」

「うん。お母さん!」


 ラズはネーロに抱きついた。そしてブラウンにも抱きついた。


「そうだなネーロ。こうなる時がいつかはくるのかと思っていたが。今日がその時か。ラズ、気をつけてな」

「リョクっていうのは昨日の子でしょ? タイプじゃないけど強そうでいいわ。たまには帰ってきてね」

「うん、絶対帰ってくるから!」


 ラズは少し目に涙を浮かべながらリビングを出た。


「おまたせリョク。じゃあ行こっか」

「もういいの?」

「うん。あんまり時間かけちゃうとお父さんたちから離れるのがもっと寂しくなっちゃうから」

「そっか、じゃあ行こっか」

「干し肉屋さん寄って行こうね」


 二人は手を繋いで干し肉屋に向かった。


「あら、ラズちゃん。今日はどうしたんだい?」

「隣町に行くからそれまでの食料を買いにきたの」

「隣町に行くのかい! そりゃ大変だ。二人分だね? これだけありゃ足りるだろう」


 干し肉屋のおじさんは、干し肉を3パック分。お弁当箱のようなものに入れて渡してくれた。


「ありがとうおじさん」

「ラズちゃんはいつ帰ってくるんだい?」

「うーんわかんない。私旅に出るんだ。魔王を倒す旅」

「そこの転生者の子と一緒にかい」

「うん!」

「そうかー。寂しくなっちゃうな。これ、最後のおまけだ」


 おじさんはもうひとパック追加で渡してくれた。


「じゃあね、おじさん!」


 干し肉屋を後にして、南門に向かった。

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