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私の家の壺の中から、時折『転生者』が出てきます。  作者: 溝端翔
リョクが出てきた!

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回復魔法がどうしたの?

「ラズ……。よかったら。本当によかったらなんだけど、魔王退治についてきてくれない?」

「私が? 私は魔物倒せないから足手纏いだよ?」

「うん。それでもついてきてほしい。絶対危険な目に遭わせないから。絶対にラズを守るから」

「うーん。魔王退治の旅かー」


 ラズは唸りながら考えた。


 私は仕事がしたくない。顔はタイプじゃないけどリョクと一緒にいるのも楽しい。一緒に旅をすれば仕事はしなくて済むし楽しいし、良い事づくめだ。


 だけど、お風呂に毎日入りたい。旅をしてればきっと毎日お風呂に入れないと思う。


 そんなのは嫌だ。


 うーん、難しい。


「考えとく」

「ありがとう!」

「あー! リョク怪我してる!」


 リョクは右肘のあたりを怪我していた。服が破れて血が出ている。


「ほんとだ。気づかなかった。最後にスライムに吹き飛ばされた時かも」


 それまでは気づかないほどなんともなかったのに、怪我を認識した途端ひりひりと痛みを感じ始める。


「大丈夫。私が治してあげる」


 ラズが手をかざすと、緑色の光がぽわっと傷を包んだ。


 どんどんと傷が治っていき痛みも引いていく。あっという間に傷も服も綺麗に治った。


「すげえ……」


 これが回復魔法の力か。


「えへへ。すごいでしょー。おかげで私が病院みたいに使われてるけどね。誰かが怪我したり風邪引いたりしたら治してーってくるの」

「そうなんだ。ていうか服も治るんだね」


 まさか服まで治るとは思わなかった。俺の知っている回復魔法とは少し違うのかもしれない。


「うん。一回椅子が壊れた時に使ってみたけど椅子も治ったよ」

「そうなんだ……」


 椅子も?


 リョクは静かにラズをみつめた。回復魔法。と意識を集中させる。


『鑑定結果……ランクSS 回復魔法・レベル5 死人は回復させられないが、それ以外なら人間でも物でも正常な状態に回復させることができる』


「人間でも、物でも……。ちょっとラズ、これ回復してみて」


 リョクは腰に携えていた使い物にならない錆びた剣を抜いて、鞘と一緒に床に置いた。


「えー? これ? 剣だよ? しかもすっごい錆びてるし。流石に無理じゃない?」

「多分大丈夫! やってみて!」

「はーい」


 ラズは手をかざして錆びた殺しの剣に回復魔法をかけた。


 徐々に錆が取れていく。刃こぼれ錆びだらけだった刀身がみるみる綺麗になっていった。ほんの数十秒。あっという間に綺麗な長剣に回復した。


「わお! リョクのいう通りだ! ほんとに治っちゃったね。すごい綺麗になった」

「ちょっと待って。鑑定してみる」


『鑑定結果……ランクS 殺しの剣 この剣でつけた傷は自然治癒しない。さらに回復魔法・レベル4以上じゃないと回復できない』


「結構諸刃の剣だな。自分で自分のこと切らないように気をつけないと……」


「どうどう? どんな剣なの?」

「殺しの剣だって。この剣でつけた傷は自然回復しなくなるんだって。多分止血もできなくなるんじゃないかな」

「ひゃー! ぶっそーだねえ。でも強そう」

「まさかこんな序盤からランクSの武器が手に入るとは思わなかった。ラズのおかげだよ!」

「そんなことないよ! でもやったね!」


 ラズがリョクに飛びついて、そのままベッドに倒れ込んだ。


「ちょ、ラズ」

「あははー。ふああ。眠くなってきちゃった。ちょっと寝て良い? 六時からうちの酒場手伝わないといけないから……」

「いや、ちょっと」

「おやすみー……」


 ラズはリョクの上に乗ったまま眠りについた。


 やばいやばい。この状況はやばすぎる。とはいえ動かすと起こしてしまうかもしれないし。動けない。めっちゃやばい。今上井さんと一緒に布団で寝てる。絶対やばい。


 一時間くらいぼーっとしていたリョクは、だんだんと感覚が麻痺してきた。可愛い女の子が可愛いと思えなくなる。いや、可愛いんだけど。


 気がつけば眠っていた。目が覚めた時、上に乗っているラズの重さは無くなっていた。


「あ、おはよ! よく眠れた?」

「うっ」


 リョクはラズの姿を見て鼻血が出そうになる。

 ラズはいつのまにか服を着替えていた。胸の上部が出たミニのウエイトレス姿になっている。オレンジ色のウエイトレス姿が似合いすぎている。ていうか色合いが上井さんとほぼ同じだ。こんなのありえない。耐えられない。酒場の時の衣装なのだろうか。えろ可愛すぎる。というかいつ着替えたんだろう。ここで着替えたのだろうか。起きていればよかった。寝たふりをしたらよかった。


「あ、リョクー! みて! この服可愛いでしょ! お母さんが作ってくれたんだー。スノちゃんほどじゃないけどお母さんも裁縫上手なんだー。いつもこの服で夜仕事に出てるんだよ」

「うん、可愛いと思う」


 いやいやいやいや。可愛すぎる。ウエイトレスが好きな俺にとって可愛いじゃ言葉が足りない。こういう時のために純文学とか読んでおけばよかった。語彙力がなくてもやもやする。


「やったね! ねえ、もうすぐ私仕事なんだけど、リョクはどうする?」

「あー。えっと、行きたいのは山々なんだけど、俺お金ないんだよね……」

「んー」


 ラズは口人差し指を当てて考える。


「よし! じゃあ奢ったげる! いこ!」

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