お母さんのランクは?
宿屋の中は天井が高く。テーブルがいくつもあった。ここでパーティーでもするのだろうか。それとも飲食店みたいになるとか。ラズもそこで働くんだろうか。もしかしてもしかしてウエイトレス姿になったりとか……。って、ないよな。
ラズのおかげで妄想が捗る。ラズならどんなウエイトレスの衣装も似合うだろう。はあ、みたい。神戸屋みたいな制服だったらマジで最高。
「お待たせー」
「大丈夫? 怒られなかった?」
「うん、誰もいなかった」
「よかった」
「じゃあこっち、私の部屋行こー」
「う、うん」
ラズに引っ張られて宿屋の奥に行くと、関係者以外立ち入り禁止の看板が立っていた。その看板の先の扉を抜けると、居住スペースのような空間が広がっていた。
「あ、ラズ。包丁返しなさい」
「もう返したよ」
ネーロがリビングでくつろいでいた。どうやら休憩中のようだった。ラズの母親というだけはあり、ネーロも胸が大きく綺麗だった。
というか本当に母親か?
と思えるほど若い。
「そ。それならいいわ。次からはちゃんと理由を言ってから持って行きなさいね」
「はーい」
ラズは一体どうやって持ってきたのだろうか。あんなに怒られていたのだから相当無理矢理持ってきたに違いない。何に使うかの説明もしなかったのか。
「で、そこの彼は誰かしら?」
「こ、こんにちは……」
リョクは頭を下げて挨拶をした。
「リョクっていうの。私のお客さん」
「そ。転生者ね。あんまり変なことはしないようにね」
リョクは自分に言われているような気がして引き締まった。
「ねえ、リョク」
ラズはリョクの耳元でこそこそと話した。
「な、なに?」
「お母さんのランクなに?」
「え、お母さんの?」
「うん。ちょっとかんてーしてみて?」
「いや、それは……」
「おねがい」
甘い声が体を支配する。気がつくとリョクはネーロを鑑定していた。
『鑑定結果……ランクSS ネーロ・ライムストーン 年齢、今のレベルでは鑑定できず。経験人数、今のレベルでは鑑定できず。上から92、55、88。魅力的な体。スキルの魅了、催眠は最大レベル。今のレベル、装備では到底勝てない』
な、なんだこれ、鑑定できず?
ていうか最大レベルの魅了と催眠を持っているのか……。
でもそれにしてはネーロに対してそれほどの魅力を感じるような気がしない。かといって催眠をかけられている感じもしない。鑑定の通り到底勝てない。ようするに興味もないってことか。もしかしたら魅了はレベルが上がるとかけるタイミングや相手を選べるのかもしれない。
「どう? どうだった?」
どうしよう、同じだったと伝えるか、上だったと伝えるか。それとも下か?
いや、下はないな。
「えっと、ランクAだった」
「ランクAって?」
「うん。ラズの一個上」
「くううー。そっかあ。お母さんの方が上かー。いつか抜かせるかな?」
そういや人間のランクは変動するんだろうか。っていやいや、ラズのランクはSSだ。おそらくこれ以上上がらない。
「上がると思うよ。頑張って」
「何こそこそしてるの?」
「な、なーんにも! 行こ! 私の部屋こっち!」
ラズが慌てながらリョクの手を引いて階段を登った。二階に上がると扉が三つあった。そのうちの一つにラズはリョクを連れ込んだ。
「そこ座っていいよ」
ラズはベッドの上を指差した。
「いや、ベッドの上は……」
気にせずラズはドレッサーの前にある椅子に座った。どう考えても俺がそっちが良かった。ベッドの上は流石に緊張する。
と思いつつ、リョクはベッドの上に座った。思っているよりふかふかしている。というかめっちゃいい匂いがする。やばい、理性が飛びそうになる。
「ねえ、リョクはこれからどうするの?」
「え、あ、うん。そうだなあ。今日は流石にここに泊まって、明日出発かなあ」
「魔王退治?」
「そう、魔王退治」
「魔物退治にしない? 隣町でさ」
「だめなんだよ。頭の中で何度も言われるんだ。魔王を退治しろって。もしかしたら女神様の呪いかもしれない」
「そんなあ。女神様が呪いなんてかけるかなあ」
女神の呪いが何度も何度も魔王を殺せと語りかけてくる。でも、それと同じくらい、ラズと一緒にいたいと思っている。
もしも、ラズが、着いてきてくれたら。そしたら魔王を倒す旅もできて、ラズとずっと一緒にいられる。そうなってくれるのが一番嬉しい。
「あ、あのさ……」
「ん? なあに?」
何かを感じ取ったのか、ラズはリョクの隣に座り直した。




