おじさんはいないのかな?
「えへへ。ありがとー。でも大丈夫! 何もなかったよ!」
「よかった! じゃあ早く入って入って。おかえり」
「ただいまー!」
門番は明らかにリョクを睨んでいた。どうやら完全に嫌われてしまったらしい。
「骨董品屋うちの宿屋の裏だから、その前にヴァトーおじさんち寄ろっか。包丁研ぐの時間かかると思うし」
「うん、そうだね」
二人はまずヴァトーの家に向かった。
「ここがヴァトーおじさんの家だよ!」
門からしばらく歩いたところに、少し大きめの家が建っていた。
「おじさーん! ヴァトーおじさーん!」
ラズは家の中に入って行った。リョクは家の前に取り残された。
「ヴァトーおじさん! 来たよー! ……。あれ? いないのかな?」
ラズは家の中を探し回った。寝室にはいなかったし、トイレにもいなかった。ということは、お風呂かな?
「ヴァトーおじさんお風呂?」
「うわっ! ラズ! いつも勝手に入ってくるなって言ってるだろ!」
三十代ぐらいで顎髭を生やしたヴァトーは股間を隠しながらラズを追いやろうとした。
「ちーがーうの! 包丁研いで欲しいの!」
「わかった! 研ぐから! 机の上に置いといてくれ!」
「はーい! じゃあまた後で取りにくるね。あ、そうだ!」
「なんだ? まだなにかあるのか?」
「今度一緒に入ろうね」
「入らねえよ!」
「ちぇー。じゃあ机に置いとくね!」
ラズは風呂場から出てリビングに戻った。机の上に包丁を置こうとして包丁を持っていないことに気づく。
「あ、包丁持ってるのリョクだった。リョクー!」
ラズがヴァトーの家から飛び出してきた。
「リョク! 包丁忘れてた!」
「ああ、そういえば。はい」
ラズはリョクの手から包丁を引ったくってまた家の中に入って行った。
「ヴァトーおじさん! 包丁置いとくね!」
「だから入ってくんなって!」
「えへへ。じゃーねー。また後でくるね」
ラズはリビングの机の上に包丁を置いて、ヴァトーの家を出た。
「よしっ。おっけー! おまたせ!」
にっこりラズが首を傾げる。
「行こっか!」
「え、うん。包丁は?」
「ヴァトーおじさんに任せてきた。また後でくるねって言っといた」
「そっか、よかった」
「あのね。ヴァトーおじさん人見知りだから私一人で行ったの。一人にしてごめんね?」
「うっ」
可愛い。許せる。
「じゃあ骨董品屋さん行こっか。なんかねー、古いものとか珍しいものとか色々売ってるから楽しいよ。私には全然価値がわかんないんだけどね。みんないいものなんだって」
「なんか高そうだな……。この魔石で交換できる武器があるといいんだけど」
「多分大丈夫。そんなに高いものは売ってないから」
「そっか。それならありがたいんだけど」
骨董品屋の佇まいはまるでお化け屋敷だった。宿屋の裏にこんな薄気味悪いものが建っていたら営業妨害なんじゃないかと思ってしまう。
「ここ、入って大丈夫?」
「大丈夫だよ? なんで?」
「いや、だって見た目が……」
「ふふっ。大丈夫! 行こっ!」
ラズはリョクの手を引いて、お化け屋敷……ではなく骨董品屋の中に入って行った。
「じいちゃーん! こんにちはー!」
「おう、ラズちゃんじゃないか。どうしたんだいこんなところに」
薄暗く埃臭い店の中には味のある小物がたくさん置かれていた。なんだかわからないけれどすべてに価値があるように見えて緊張する。奥にはカウンターがあり、長く白い髭を生やした老人が立っていた。




