表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトメアフィルム ~屋上の惨劇~  作者: 結城智
第四章 惨劇予告の写真は、誰を指していたのか
35/50

第35話 助けたはずなのに惨劇は終わらない――スカーフが告げる真実

 ……惨劇?

 先日の未来予知が発動した、あの写真が脳裏に浮かんだ瞬間、全身に激しい悪寒が走った。次の瞬間には、もう体が勝手に動いてしまう。


 僕は部室へ向かって、無我夢中で駆け出していた。 

 ――廊下は走るな? そんな規則、今の僕には関係ない。

 勢いよくドアを開け放つと、部室の中には神楽坂さんと姫野さんがいた。


「どうしたの。そんな怖い顔して」

 肩で息をしている僕に、神楽坂さんは瞬きを一つして、しかし落ち着いた声で問う。

 一方の姫野さんは目を丸くし、心配そうに僕を見つめていた。

 僕はその問いには答えず、真っ先に机へ駆け寄る。


 写真が保管されている引き出しを開け――そして、見つけた。

 あの写真。

 僕が未来予知を発動させた、問題の一枚がそこにあった。


 「……嘘だろ」


 喉の奥から、自然に言葉が漏れる。

 ありえない。そう願いたかった。けれど、否定できる材料もまた、何一つなかった。

 僕の未来予知――写真を現像する際、その中に写った者の未来の惨劇が映像となって脳裏に焼きつく力。


 ただし、その人物は真っ黒に塗りつぶされた影のようで、誰なのかは特定できない。

 さらに致命的な欠点がある。

 そう――もし写真に複数人が写っていれば、誰に惨劇が訪れるのかは判断できない。

 今回の写真。東野さんの横には、ピースサインをする花園さんの姿があった。


「ねぇ、凪君。……大丈夫?」


 覗き込んでくる姫野さんの顔に、我に返る。

 慌てて笑みを作り、「大丈夫だよ」と答えた。


 ――その時だった。

 ふと視界に入った姫野さんの首元。そこには、きゅっと巻かれたスカーフ。

 途端に、脳裏で再びフラッシュバックするあの映像。

 まさか――。

 全て逆だったというのか。

 僕の予想は外れていた。

 解決したと思っていた惨劇は、まだ終わっていなかった。




 正直、人助けなんて面倒臭いと思っている。――それは今も変わらない。

 とはいえ、あの惨劇の映像が頭をよぎる以上、何もしないでいるほうが、かえって不気味で気味が悪い。

 ああ……だから、人物写真なんて撮りたくなかったんだ。

 悪態をつきたくなるが、今さら言っても仕方ない。

 頭の中は混乱していた。


 あの時見えた映像――ナイフを持っていたのが東野さんで、刺されたのが花園さんだと、僕はそう思い込んでいた。

 花園さんが東野さんに刺される。

 だから東野さんを助ければ、花園さんが刺される理由は消える。


 それでハッピーエンド――単純な話のはずだった。

 ……だが違った。

 もし、加害者と被害者が逆だったら?

 刺したのが花園さんで、刺されたのが東野さんだったら?

 未来予知で見た映像を思い返す。

 二人はどちらも制服を着ていた。そして女子の制服には必ずスカーフがある。


 ――刺した子は、ピンクのスカーフ。

 ――刺された子は、緑のスカーフ。

 うちの学校では学年ごとにスカーフの色が違う。

 三年は青、二年はピンク、一年は緑。


 つまり、あの事件。

 東野さんが花園さんを刺したのではなく――花園さんが東野さんを刺した可能性のほうが高い。

 七海さんの言葉を信じるなら、花園さんは本来、正義感が強く、いじめなんてしない人間。

 それなのに三年生を脅すという極端な手段をとり、東野さんを追い詰めようとした理由が、ただのレギュラー争いだなんて……あまりにも不自然だ。


 ――もっと別の理由がある。

 花園さんが東野さんに対して、抱かざるを得なかった深い恨み。

 そう考えたほうが自然だろう。


 ……結局のところ。

 僕はまた一つ、面倒極まりない謎に足を踏み込まざるを得なくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ