表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトメアフィルム ~屋上の惨劇~  作者: 結城智
第三章 正義の代償
22/50

第22話 屋上の惨劇(ルーフトップ・ナイトメア)

 東野静。――今のところ、サッカー部でイジメを受けていると見られる人物。


 三十人を超える部員数の中、すでにレギュラー候補にまで名を連ねている一年生だ。

 観察してみると、イジメによる萎縮なのかは判断できないが、決して愛想のいい子ではなかった。ほとんどの部員が「撮ってください」とねだる中で、東野さんだけは僕の前に来ると「私は結構です」と小さく言い、立ち去ろうとした。


 ――その腕を「そんなこと言わず、一緒に撮るわよ」と花園さんが掴んで引き留めてくれたおかげで、なんとか東野さんの写真を一枚、撮ることができた。


 そのネガを見つめたとき、僕は息を呑んだ。まさか惨劇にまで発展するような事態にはならないだろう――そう、自分に言い聞かせるように高を括った。


 しかし願いは裏切られる。僕は見事に外れを引いてしまったのだ。

 東野さんの写った写真を現像液に浸し、静かに揺らす。印画紙の上に彼女の姿が浮かび上がる、その瞬間――。

 同時に、僕は別の次元へと引きずり込まれていった。




 視界がゆっくりと闇に沈んでいく。

 世界から光が剥ぎ取られ、意識だけが宙に浮かぶ。


 ――次に見えたのは、見覚えのない学校の屋上だった。

 コンクリートの床、無機質なフェンス。風の音すらなく、静寂が支配している。

 そこに二人の人影が向かい合って立っていた。

 どちらも、うちの制服を着ている女子生徒。


 一人は必死に何かを訴えているようだった。口は大きく動いているのに、声は一切聞こえない。ただ、絶望的なまでの必死さだけが伝わってくる。

 もう一人は――無。

 表情は影に溶けて見えない。それでも「何もない」ということだけが、異様なほどはっきりと伝わってくる。


 そして、その無の人物の手には光を反射するナイフが握られていた。

 次の瞬間、訴えていた方の女子が目を見開き、後ずさる。だが、冷たい腕に掴まれ――そのまま太ももへと刃が突き立てられた。


 音はない。

 それでも、世界が軋むような悲鳴が脳内に響き渡る。

 しゃがみ込んだ少女の太ももから赤が滴り落ち、床を濡らしていく。

 それでもナイフを持つ者は微動だにしない。

 恐怖も後悔もなく、ただ無表情のまま、冷ややかに見下ろしている。


 やがて――その唇が、かすかに動いた。

 何かを告げている。だが、音は届かない。

 届かないのに、理解だけが心臓に突き刺さる。

 それは言葉でなく、呪いそのもののように――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ