第2章 お返事
シゲは面白いものを見つけた。
最近使い慣れてきた電子掲示板の隣にあったコルクボードの掲示板、とてもアナログなものだ。しかもこれが大ウケして流行って居るらしい。
昔の時代の雑誌の余りページを活かそうと、読者参加型募集コーナーの様な内容だった。
譲ります、友達募集中、恋人募集中等
色々ある。業者も居るらしくて、よく見ると
"◯◯を始めてみませんか?"と言うよくある教材の勧誘だ。
この掲示板、目的別に分かれて居るらしく各ボードが並んでいる。
"〜モード"と白と黒とで分かれて居るが、印字が擦れてて"〜"がよく読めなかった。
「最初に見つけた"同じ曲を好きな人‥"のジャンルが面白そうだな?」
そう思ってもう一度探してみると、
ここは音楽好き、楽器好きな人の掲示板らしい。しかも邦楽、洋楽、ポップス、ロック等詳細に分かれている。
中にはムード歌謡や演歌が‥
まだそんな年齢ではないので、
取り敢えず愛聴してるロックの中から探してみようとするシゲ。
「どれどれ‥んーとー‥」
音楽好きロックの掲示板、その中でも80年代ヒッツ!ってのが有ったので嬉しそうに見入る。
「あった!さっきの人のだ‥」
電子掲示板からアナログ掲示板へ始めに目に入った人の書き込みだった。
"自分と同じ曲を登録して居る人は居ませんか?わたしは THE CUREのJUST LIKE HEAVENが好きです!"
「おっ!?定番じゃんねーこれ!
嬉しいねー‥早速書き込んでみようかな。」
シゲは得意そうに、自分の好きなアーティストの曲を見つけた、しかも始めに発見したものだった。
返事を書き込みするには、
付箋紙のような紙を買い、ボードの横にある鉛筆で書いて返事をする。
紙は一枚10銭、この世界の1円の1/10になる。シゲの居る世界では物価がとても安い、まるでこちらの100年前位の相場だ。
「カキカキカキ‥、
よし!これで返事が来るかどうかだなー、折角だから会社のメールアドレスと電話番号も書いておこう、うん。」
シゲは書き込んだ後、先に書き込んだ人の下に貼り返事を楽しみにしてその場を立ち去った。
時間を掲示板の書き込みに費やしてしまったので出社がだいぶ遅れてしまった、しかし何とか間に合った。
出社してから、午前が過ぎー、
お昼休みも過ぎー、午後もぼちぼち捗りー‥その日の帰り際の事、
「そろそろ終業時間だなー、
あー‥今日もよく働いたなー‥」
両手をあげて背伸びしてそう呟くと、この日の最後の社内メールチェックをした。
すると外部から一通受信されて居る。
「えー!残業?!外部からだなー、誰だろう‥」
件名が無題になって居る、クリックして開けてみる事にしたシゲ。
内容に目を通すと‥
"こんにちは、初めまして。
駅の掲示板の書き込みで返事をありがとう!‥"
「あ⤴︎ッ?!今朝の掲示板の書き込みの返事だぁー、スゲー掲示板!!」
終業時間も近くなると、社内はとても静かだったがシゲのこの一言に一斉に視線が集まった、
気まずくなり、画面に顔を隠し少し赤面のシゲ。
そのまま静かに内容の続きを読む、
"(前文略)わたしと同じ好みの人が見つかりとても嬉しいです、今度お会いしませんか?お返事待っていますネ♡".
モテないシゲに幸運が訪れたようだ、
人生最高の幸せと感じる。
「掲示板から返事した方が良いのかな?取り敢えず、ここから返信してまおうーっと。」
"件名: 御返事ありがとう!
本文: こんにちは。お返事をメールでありがとうございました。こちらも是非お会いしたいです、今度の日曜日辺りどうですか?都合の良い場所と時間の返事を待ってます!"
「よし‥、送信ボタンをオーンッ!」
メール返信したシゲ、また明日を楽しみに今日はこれで帰宅する事にした。
つづく




