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六十二話


こちらに飛んできた魔王の腕をキャッチする。

その腕に巻かれるように付けられた私の大切な物を外して、腕はなげ捨てた。

自分で取り戻したかったものだが、彼に会えたことだし、そんなことはもうどうでも良くなった。


「ろか ろか」

「どうどう、ありがとう、クロービス」


いつかのように首に甘噛みされながら押しつぶしたいのか抱きしめたいのかわからない彼を、わさわさ振られる尻尾ごと片腕で抱きしめる。

左腕が痛いからあまり強くしないでね。


「折レタノカ?」

「ううん、無理したら肩が外れちゃった。これを髪に付けたいから治してくれない?」

「ワカッタ」


軽く左手を持ち上げたクロービスが私の外れた肩に平手打ちを叩き込イッターイ!

痛みと痺れは残ったがとりあえず肩は入った。

これで少し長くなった髪に鱗を付けることができる。

クロービスも心なしか嬉しそうだ。


「それにしても…町からずいぶん早く着いたのね。あと一ヶ月はかかるもんだと」

「空ヲ飛ブとかげニ乗セラレテキタ。アレハ早イ」


空を飛ぶトカゲと言われて思い出すのは町を半壊させたアレだが。

そんなわけないよな。あれより小さい奴のことか。

乗せて飛ぶなんてこと誰が思いついたんだろ。

クロービスと見上げる空にはそれらしいものは見えない。


「詳シクハコレニ書イテアルカモシレナイ」

「なにこれ。手紙、と斧?…アリシアさんからだ」


いい斧だった。

なんの金属かは判らないが、銀色に輝く刃と柄。全て金属で出来てるのに驚くほど軽く私にも振るいやすい重さしかない。これは私に使えってことだろう。

ゴブリンは金属が嫌いだからアリシアさんが用意してくれたわけじゃないよね。

その辺は手紙に何か書いてあるのかな。

トカゲの事も斧についても書いてなかったけど…


「ディーパね」


もやっとしてて手紙を書いてたのをすっかり忘れてたが、手紙を読んでやっと思い出した。

というかディーパ教と魔王の繋がりもぜーんぶ書いてある。


「アホくさ」


じんじん痛む肩を斧で叩きながら、左手切り取られて唸っている魔王みて呟く。

人間の国を滅ぼしてディーパの名を広めたかったのか?

ディーパとして恐れられるのではなく、ディーパを崇めて欲しいのか?

そんなもん力があるなら捻じ伏せてからやればいいのに。

アリシアさんもそんな奴を殺す気になれなかったんだろうな。


「私が殺すであろうことは分ってるみたいだけど」

「手伝オウ」

「ありがとうクロービス、でも一人で大丈夫よ。…さて、魔王を名乗るなら腕一本でダウンするほどヤワじゃないでしょ』


さっき殴った時もダメージ入ってたから、痛みには弱いようだけど。


『何がしたかったのかは知らないけど、その首置いてってもらうわよ』

『何も知らない者が!訳もなく私の邪魔をするというのか!』

『するわね。なんなら八つ当たりとでも思ってくれてもいいよ』


理由も必要ならつけてあげよう。

それで納得したら。



『力に屈すれ』


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