第3話:ついに帰還!そしてなぜか昭和……
ガーベラと暮らし始めて早50年が過ぎている。
俺の魔法もすっかり上達し、多少はガーベラと地球に戻る「送還魔法」についての話もできるようになった。
と言っても、少しは理解できるようになった分、とても難しいという事がわかるようになっただけなのだが。
一方、肉体の再構築魔法は完成した。
ガーベラでもなかなか苦戦してたのだが、地球ではSTAP細胞とかIPS細胞などといったものがあって、どんなものにもなるとか話題だったなあと、呑んでるときに酒のつまみ程度に話題に出したところ、「魂の根源部分以外はすべてはガーベラ細胞であり、自由に肉体の再構築ができるものとする」というのを魔法で定義して操る術式を組んだところ上手く行ったのだ。
体積も重量も自由自在。筋肉にも骨にも羽にも毛皮にもなれるし、何なら腕をオリハルコンの刃にもできるのだ。
地球人としては「なんでもってそう意味じゃねえよ?なんだそれ」って話だが、魔法の世界の住人からしたら「STAPやIPS細胞ってなんにでもなれる自由なイメージなんでしょ?なら体積も重量も自由!」ってことらしい。
そんなんでいいのだろうかと思うのだが、魔法というのはイメージを具現化する事なので、発想さえできたらあとは術式さえ構築できれば簡単らしい。
そうガーベラは言ってたが、50年魔法教わって、そこそこ魔法使える様になった俺からしても術式が難しいと思える。
ガーベラだから言えることで、やっぱりコイツは凄えよ。
因みに、いままであった「変身魔法」ってのについてガーベラから聞いてみたこと纏めると、狼になりたいなら魔法で「狼になる」と定義し魔法で作り変えるもので、粘土を狼の型に無理やり押し込んで魔法でギュウギュウと押し付けてその形にするような物らしい。
だから自分より極端に大きな物にはなれない、入れる粘土が足りないから。
逆に小さなものには根源部分(魂そのものや脳や魔臓とかが必要らしい)さえあれば成れるが、型からはみ出す部分は切り落とされて戻ることはできない。
例えば柴犬になって戻ろうとすると、改めて人間に戻る為の型は五歳児程度にしか作れず大人として戻れないのだ。まあ、成長はするらしいので上手く使えば不老に使えるのかもしれないが、使いづらく、しかもはみ出す部分が切り落とされる時は結構な「痛み」があって、それもあってあまり行う人がいないらしい。。
鳥や小動物になって、あまりに多くその辺が切り落とされると、思考が低下し忘れてそのまま動物として生きるか、魔法は少ししか使えなくて知能はそのままってケースも。
使い魔って猫とかに変身してみたら戻れなくなった人間と契約したり、魂を契約魔法で縛ってからわざとこういう風に作り変えるのだとか……怖いわぁ
まあ、これで俺のオーガの肉体もゴブリンの皮膚もすべて「ガーベラ細胞」にしてから「人間の肉体」に変われと魔法で再構築すれば人間に戻れるように。細く太くも自由自在、マッチョにもなれるし外人にも、何なら女にもなれるのだから文句はない。
ガーベラと、色々と組み合わせて楽しんだのは内緒だ。
肝心の送還魔法だが、そもそも送還に必要だと思われる大量の魔素が、どうやったってこちらでは足りない。
しかし、これについてはガーベラの方で考えがあるみたいで、『まず座標が分ったら、地球との間に小さな穴をあけて、地球から落ちてきた魔素を使う』方法なら、大丈夫な計算らしい。
小さな穴さえ開けば俺が来た時の様に、地球側の大量の魔素で、普通なら無理な大魔法でも簡単に起動は出来るだろうと。
前回は太の犠牲が必要だった、地球からの魔素流入も地球に着けば、豊富な魔素でノリディアでは使えないような大魔法を使えるので、ガーベラがふさげるとの事だ。
しかし、そもそも地球の座標が何年調べてもわからない。
やはり、地球の座標探すには手掛かりが欲しいなと、ガーベラと二人で壊れた召喚魔法陣を調べていたある日。
ふと思いついて、日本で「死んだ日の俺」をイメージして、体の再構築をしてみた。
「これって、例えばDNAとかで手がかりにならんかな?」
「そうか!DNAはともかく、お主の地球での肉体には、ノリディアの魔力とは明らかに違う『別の世界の波長』が微かに刻まれとる!この波長を増幅して、世界の壁の向こうへレーダーのように飛ばせば、同じ波長を持つ『地球』がエコーを返すはずじゃ!」
こうして、50年目にしてやっと手がかりを見つけたのだった。
しかし、そこから波長の検出や増幅法、更に世界の向こうに向けて波長を飛ばす術式の構築などで、更に時間がかかった。
そして、俺達が地球の座標を確定したのは、俺がノリディアに来てから100年が経った頃なのだった。
「100年か。まあ、今更感もあるけど、お前に地球見せてやりたいからな!……でも俺、今更地球で上手くやれんのかなぁ」
「ワシ…私の方がドキドキしてるのじゃ…わよ?」
ガーベラが、のじゃロリ属性を捨てて、なれない言葉に苦労しているのを横目に、俺は送還される場所や時代を考えていた。
俺には戦国時代に戻って無双するとかの願望は無いし、バブルに戻って競馬したり、株や土地で儲けるってのもねえ……
ガーベラは俺の記憶見てるから、普通の日本人位の知識は持ってるんだよね。これで実際にネット等に触れば、ネットバンキングや、仮想通貨なんかの仕組みを理解するのも、直ぐだろう。
何兆ならともかく、俺達が遊んで暮らすくらいの金額なら、犯罪するまでもなくネットの海に沈んでるはずだ。
何年も持ち主不明で動いてない口座とか、仮想通貨とかをサルベージしていくだけで何億、何十億はすぐだ。
そう考えると、死んだ日に戻って『太田太』として戸籍や口座あるほうが面倒がないだろう。変に昭和だバブルだって時代より、令和の方が色々と快適に暮らせるだろうし決定だな!
「ガーベラよ、時間と場所は死んだ時の1分後くらいで」
「お、未来でも過去でも無いんじゃ…ですね?」
「お前の戸籍はまだだが、俺の戸籍や口座生きてるし、ネットなんかも令和の方が使いやすいしな」
「ふむ、確かに面倒はない方が良い…か。」
そして、ガーベラは送還魔法の術式を練っていく。
まずは地球とノリディアの間に小さな穴を空け、起動に必要なだけの魔素を用意してから送還魔法を起動する二重の魔法だ。
実は今回の送還魔法は、国には無許可で行う。
国の頭脳であるガーベラが異世界に行く許可が出ないのは、俺でも分かるので最初から許可申請もしていないのだ。
そして、いよいよ術式が組みあがり地球から魔素が落ちてきた。送還用の魔法陣に魔素が溜まっていく、俺はその荘厳な景色に見とれていたのだが、ガーベラから指示が飛ぶ。
「太!ボーっとしとらんで、変える座標や日付を思い浮かべんか!魔法陣がお前の思考読んで飛ぶのじゃぞ!」
俺はあわてて、変える場所や日付を思い浮かべる。
場所は北海道のエス〇ンフィールドそばのマンションの一室。
時間は2026年の5月5日だ。子供の日で応援に行って、レイちゃんの一発で逆転勝ちしたのではっきり覚えてる。
……魔法ってこんな感じで飛ぶんだなあ
最近見たドラマとかだと、選べないで行く時代は決まってたんだよね。……そういやあのドラマ面白かった。当時はあんな体罰上等な先生ばっかりだったし、あんなヤンキーばっかりだったわ。みんな仏恥義理とか夜露死苦とか言ってたし、短ランやボンタン履いてたなあ、考えたら厨二病と同じくらいの黒歴史だよね
「よし!起動したぞい。いざ行かん異世界の地へ!」
「あ、え?!ヤベッ」
それから目の前が暗くなり、何とも言えない浮遊感と船酔いに近い不快感を感じながら俺達は地球に降り立ったのだった。
だが、そこはマンションの一室ではなく、建物すら建ってない雑木林の真中で、エ〇コンフィールドもない。周りも、まだ住宅はまばらで、暗いが東から夜が明けてきているようだ。
ガーベラは何やらおかしいなと思いながらも、まずはノリディアとの間の穴をふさいでいる。
俺はその間に、近くの家の新聞の日付を確認した。
「昭和56年5月5日」
……やっちまった、思考読まれるときに昭和にタイムリープするドラマのこと考えてたから、引っ張られちまったんだなあ
そりゃマンションも建ってないし、この辺はまだ田舎だわ。
「おい、太。お前の家に飛んだのではないのか?」
「あー、1981年の地球へようこそ!賢者様!」
「……2026年だと聞いてたがの」
こうして俺は、無事に地球に帰還を果たした。
可愛い嫁と魔法を覚えて帰って来たのだ!……昭和にね!




