「正しさと正しさ2」
「正しいだけじゃこの世では生き残れない。別の正しさもこの世に存在する。そのことの重みを知りました。」
山口総一はこう語った。
「誰も、間違ってなんか、いなかったんですよ。」
こう悔しげに歯噛みした。
急に、会議があるからお前も出てみたら、と言われ、出たところ、そこは会議という名の処刑場だった。
大野さんは出席せず、いたのは工場長、瀬田さん、おそらく瀬田さんが導入しようとしている業者、あとは瀬田さんの息がかかっている人たちだけが会議に参加していた。
あれからなぜか、澤井さんも改善活動に参加できず、徐々に私との接点も減っていた。
「ご説明、始めてもよろしいでしょうか?」
そこから先は反論を許さない、一方的な会議の進行だった。
資格は意味がない、私の経歴の否定、業者のやり方は教授とのつながりもあり、研究的にも正しい。周囲は頷き、空気で支配し、教授の経歴やとにかくきれいな業績、ストーリー。誰も私のことなど見ていなかった。ペンを握る手が少し冷たかった。
否定したくても否定できなかった。
声に出したくても喉が詰まってしまい、反論できなかった。
きっとこういう正しさもあったのだ。それに私は気づけず、目を背け続けてしまった。
私にはもう誰も味方がいなかった。組織に所属する以上、こうなってしまってはもう何もできない。
「私はどうすればよかったんだろな。」
そう呟いた言葉が風に紛れて消えていった。
「あいつを助けてやれなかった。その後悔だけが残ったよ。」
俺がある会議に山口が参加した、と聞いたのは、会議が終了した少し後だった。
「クソッ」
俺は珍しく感情的になって机を叩いた。
どうすればよかったんだ。いったいどこで判断を間違えたのだろう。
ただ、もう取り返せないところまで来てしまっているのはわかっていた。
隣で驚いている同僚に、
「ちょっとタバコ吸ってくるわ。」
と言って部屋を後にした。
喫煙所で吸ったタバコの煙が消えていく様子、それが引っかかり、頭から消えなかった。




