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第24話 狂気のプラント! 明らかになる生態系の秘密!

 僕たちは手を繋ぐと扉の奥へと進んだ。


 エマの緊張が手から伝わってくる。

 繋いだ手がしっとりと汗ばんでくるのがわかった。


 プシュゥゥゥッ……。


 無機質な扉が、重い音を立てて左右に開いた。

 いくつものドアを超えながら、ただ無言で僕達は歩いた。


 一際異彩を放つ扉。


 何個目の扉かわからないけど、その先には広すぎる異様な空間が広がっていた。


 ウィィィン……。

 ガシャン……。


 中に入ると、聞いたことないのない、何かの駆動音が低く響き渡っていた。


 天井には、見たこともない緑色の不気味な光が等間隔に並んでいる。

 壁や天井の至る所に、金属製のパイプが張り巡らされていた。


 現実世界から、いきなり別の世界に迷い込んだみたいだ。


「フェル、ここ……薬みたいな変な匂いがする……」


 エマが怯えたように、僕の腕にぎゅっとしがみついてきた。

 腕に、女の子らしい柔らかいふくらみが当たる。


 いつもなら顔を真っ赤にして、慌てて飛び退いているところだ。

 でも、今はドキドキする余裕なんて、これっぽっちもなかった。


 目の前に広がる異常な光景に、僕の心臓は別の意味でバクバクと嫌な音を立てていた。


「なんだよ、これ……」


 僕は思わず、乾いた声を漏らした。


 床から見上げるほど高い天井まで届く、巨大なガラスチューブ。

 それが、何百、何千と、奥が見えないほど整然と立ち並んでいたのだ。


 チューブの中には、緑色の液体がたっぷりと満たされている。

 底の方から、ブクブクと絶え間なく泡が湧き上がっていた。


「ねえ、フェル。あの中……」


 エマの震える指先を追って、僕は近くのガラスチューブに近づいた。


 冷たいガラスの表面にそっと手をつき、中を覗き込む。


「……嘘だろ」


 目の前が真っ暗になるような感覚。


 緑色の液体の中に浮かんでいたのは、青くて半透明のゼリー状の物体だった。

 ぷよん、ぷよんと、液体の中で静かに揺れている。


 地下二階で、僕たちが初めて命がけで戦った魔物。

 スライムだ。


「こっちの管には、ゴブリンがいる……! あっちには、狼も!」


 エマが悲鳴のような声を上げる。


 間違いない。

 僕たちが血を流して戦ってきた魔物たちは、自然に生息していたわけじゃない。


 この無機質なガラスチューブの中で、プカプカと人工的に生成されていたのだ。


「フェル……あたし達が戦って来たモンスターも、全部ここで作られたってこと……?」


 エマの声がガクガクと震えている。


「……分からない。 でも、そうなのかもしれない」


 背筋に冷たい汗がツーッと流れる。

 誰かが、意図的に魔物を作って、ダンジョンに配置していた?


(どうして? 僕たちを殺すため? いや、それなら最初からもっと強い魔物を出せばいい)


 まるで、僕たちを試すように、階層ごとに少しずつ強い魔物が出てきた。

 気味が悪すぎる。


 僕たちは引き寄せられるように、さらに奥のエリアへと足を踏み入れた。


 そこには、少し形の違う巨大なチューブが並んでいた。


「あ……」


 その中を見た瞬間、エマがふらりと後ずさりをした。

 顔から、さぁっと血の気が引いていくのがわかる。


「エマ?」


 僕も、そのチューブの中を覗き込んだ。


「うっ……!」


 息が止まりそうになった。


 管の中で、目を閉じて緑の液体に浮かんでいたのは、白い毛並みの動物。

 島で見つけて、罠で捕まえたウサギと全く同じ姿をしていた。


 ウサギだけじゃない。

 地下三階で苦戦した、あの巨大な牛の魔物まで、巨大なチューブの中で生成されている。


「うっ……おえっ……」


 エマが口元を両手で押さえ、その場にうずくまって激しい吐き気をこらえ始めた。


「エマ! 大丈夫か!?」


 僕は慌ててしゃがみ込み、エマの背中をさすった。


(無理もない……)


 エマは食べることが大好きだった。

 僕たちはこの動物たちを狩ってきた。


『ん〜っ! おいひぃーっ!』


 そうやって笑い合いながら、命の恵みに感謝して、残さず食べてきたのだ。

 それが全部、この不気味な液体の中で作られた偽物の命だったなんて。


「フェル……あたしたちが食べてたお肉も、全部ここで……?」


 エマの目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。


「なんなのよ……っ! この島は……このダンジョンは、一体なんなの……っ!?」


 エマが僕の胸に顔を押し当てて、わあわあと泣き出した。

 僕はエマの背中を撫でながら、力強く唇を噛み締めた。


(……都合が良すぎたんだ、最初から)


 今まで、無意識に目を逸らしてきた違和感。


 地下一階にあった、サイズがぴったりすぎる服や装備。

 地下三階の小屋に、わざわざ置かれていた『ふたつのコップ』。

 そして、エマが熱を出した時に見つけた、僕の字に似ている薬草のメモ。


 ここは自然の無人島なんかじゃない。


 僕たちは、誰かに完全に管理された、巨大な箱庭で泳がされていたんだ。


 ウィィィン……。


 無機質な機械音だけが、絶望する僕たちをあざ笑うかのように鳴り響いている。


「エマ、立って。ここから出よう」


 僕はエマの冷え切った手を強く握った。


「でも、どこへ……?」


 涙でぐしゃぐしゃになった顔で、エマが見上げてくる。


「もっと奥だ。この狂った施設を作った奴が、絶対にどこかにいるはずだ」


 プラントの最奥に、次の階層へと続く頑丈そうな金属の扉が見える。


(ふざけるな……。誰だか知らないけど、絶対に許さない)


 この島に隠された狂った真実を暴くため、僕は震えるエマの手を引いて、その扉へと真っ直ぐに歩き出した。

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