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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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戦闘開始(跳)

翔太の作戦が自己犠牲によるものだと察したアリスは、いち早く翔太に追い付き、狂化状態の彼が必要以上に傷つく前に、正気に戻すことを決意する。しかし事態は深刻で彼女の想定よりも早く、翔太は今まさにジューハと相対している。

 森に静寂が舞い戻る。

 しかしその静けさは普段のそれとは異なる。言うなれば嵐の前の静けさ、あるいは合戦が始まる直前の静けさか。

 そんななか、翔太は見定めるように目の前のジューハを観察する。


 ジューハの装備は錆びのついた剣一本と、外套のみ。この時点で既に近接戦での優劣がどちらにあるかなど明白である。

 しかし翔太はジューハについて何も知らない。つまり、ジューハがそもそもその剣を使って戦うのか、果てはそもそもその武器を使うのかなど、どんな戦い方をするのか分からないということである。

 ただし、十年前にジューハが大魔法を使ったことを考慮すると、翔太にとっては未知の領域である魔法との戦闘も視野に入れなければならなくなる。


 なればこそ、翔太が取る手段はたった一つ。

 そこまで考えをめぐらした翔太は、眼前で構えるジューハを獲物を見るかのような目で見つめていた。


 一方、ジューハもまた翔太を観察していた。

 なぜ方向感覚が狂うはずの森で目の前の男は迷うことなく自分のことを追ってこれたのかなど、様々な疑問が錯綜しているが、最優先事項は翔太の撃退である。


 それというのも、ジューハは既に遠見の魔法で複数の冒険者たちが森に入ってきていることを知っていた。そして彼女たちもまた森の中を迷わず進んでくる。

 いや、翔太が通ってきたのと同じ道を通過していると言った方が正しいだろう。


 つまり、翔太が冒険者たちをここまで誘導した元凶なのはもはや明白。だからこそジューハに残された手段はここで翔太を行動不能にし、再び森の中に潜伏、そしてやって来た冒険者たちを不意打ちで倒すといったところだろうか。


 不意打ちで倒すというのは、言わずもがなジューハの戦闘力がそこまで高くないからである。

翔太の足止めのために配置していたスケルトンたちが今現在、冒険者たちと交戦しているわけだが、ジューハの戦闘力はそのスケルトンたちとあまり大差はない。

 つまり、ジューハが冒険者と真正面から戦えば負けるのは目に見えていた。


 そして、スケルトンたちも何とか戦ってはいるが、それでも冒険者たちの歩みをわずかに遅らせることしかできていない。

 もはや、これから始まる戦闘においてジューハが使える時間はそう長くはない状況である。


 とにかく、ジューハはここでどうにかして翔太を、しかも短期決戦で倒さなければいけないのだ。


 そうして、対峙する両者の間に独特の緊張感が漂う。


 しかしこの均衡も長くは続かなかった。

 なぜなら何の前触れもなく、翔太が勢いよく飛び出したからである。


 翔太は真正面からジューハに向かって猪のように突っ込んでいく。

 それに対して、ジューハは手に持っていた剣を盾のように構えて翔太の突撃を防ぐと同時に迎撃の準備、魔法を放つ準備をした。

 ジューハも翔太の身体能力の高さに驚きはしつつも、見切れないほどではないと感じていた。だからこそ、彼の心の中では多少の余裕が生まれていた。


 しかし一瞬で距離を詰めた翔太の一撃がジューハに当たる直前、翔太は急にその場から横に飛んだ。

 ジューハは翔太の予想外の行動に目を白黒させつつも、必死に翔太の行動を目で追った。そしてここで悟った。


 翔太が取った行動が回避ではないということに。


 翔太はジューハの反撃を悟ってその場から飛び退いたのではなく、軌道修正をしたのだ。そしてそんな翔太が行き着いた先には一本の木。翔太はそこで止まることなくその木の幹に足をつけ高く飛び上がると、その勢いのままにそこから別の木へと飛び移った。


 その動きを見てジューハの顔色が変わる。

 そして次の瞬間、その木々を足場にして空中に飛び出した翔太はジューハに鋭い一撃を入れた。

 ジューハも咄嗟に剣でその一撃を受けるも、当然ながら反撃はできず、しかもそれにより剣は折れてしまった。


 すれ違いざまに一撃を入れた翔太は止まることなく、そのまま地面に着地すると今度は茂みの中に潜り込み、ジューハと少し距離を取りつつ森の中を高速で移動しながら、狼のように強かに次撃の隙を窺った。


 これこそが翔太の策である。

翔太は戦闘が始まる前、下手に距離を取って無駄に時間を長引かせてしまうのは得策ではないと考えていた。


 期せずして、二人は短期決戦を狙っていたのである。


 そしてそのうえで、翔太は今の自分がジューハよりも優れている点を客観的に且つ不確定要素を除いたうえで考えていた。

 そこで出した結論が速度と機動力である。


 それを基に考えたのがこの戦い方である。

 魔法とはいえ「放つ」以上、それは拳銃や矢と同じである程度狙いを定めなければいけないと考えた翔太はその狙いをつけさせないために三次元的な動きで敵を翻弄し、一方的に攻撃を加えるというゴリ押し戦法を選んだのだ。


 そして翔太の狙い通り、ジューハにとってこの流れはまさに最悪の状況だった。

 何しろ、翔太の戦い方には多少の駆け引きはあるが、それでも下手な戦術や時間をかけるものではなく、言うなれば高い身体能力のみで戦う、単純なまでの暴力。


 この手は身体能力で遥かに劣るジューハにとっては、一番やられたくなかったことである。

 事実、ジューハは狙いがつけられず、また下手に攻撃すれば隙を曝してしまうことになりかねないため、動きも制限されており、戦いづらいことこの上ない様子だった。


 それに加えて、翔太の持っている‘狂襲の獣(短剣)’もまた厄介である。


 その理由は言わずもがな、その短剣の切れ味である。

 いくら錆びついていたとはいえ、すれ違いざまで鉄の剣を有無を言わさず断ち切るほどの切れ味の鋭さは脅威としか言えない。


 ジューハもすぐに外套に隠していた予備の武器を取り出すも、先ほど受けた一撃からこの剣もまたすぐに壊されるだろうと思っていた。

 案の定、茂みから獣のごとき敏捷性で飛び出してきた翔太の一撃により、再び剣が折れた。さらに翔太は畳み掛けるように、ジューハに連撃を浴びせる。


 ジューハも必死に防御するが、それでもあちこちは切り刻まれ、もはや腕を上げることさえ厳しい状況だった。

 しかし、それでもジューハの心は折れていなかった。


 なぜなら、彼には既に反撃の兆しが見えていたのだから。


    ◇◆◇


 翔太とジューハが戦闘を開始した同時刻。


 アリスたちもまた、翔太が見逃したスケルトンたちとの交戦を始めていた。

 とはいえ、そこまでアリスたちも苦戦はしていなかった。


 なぜなら、スケルトンたちの戦闘力はそこまで戦うはなく、油断しなければ問題なく倒せる魔獣だからである。

 強いて難点を挙げるのならば、スケルトンはその身体を粉砕して倒さなければいけないため、少し時間がかかるところだろうか。


 とにかく、アリスたちは問題なくスケルトンを確実に処理していた。

 そんななか、戦闘には参加していないテイルは溜息をついた。


 そんな彼女が手に持っているのは、とある紙切れ。それは作戦が始まる前に、翔太が彼女に渡していた指示書である。


「まったく、翔太様も面倒なことを……」


 テイルは今なお戦闘中の翔太にそんな悪態をついた。

 それというのも、その指示書には翔太が狂化状態になった自分を止めるための方法を彼なりにまとめたものが書かれていたのだ。


 つまり、翔太はもしもの時はこの指示書にあることをテイルに実行するようにと伝えていたのである。


 ただそれに対して、テイルはどうしたものかと頭を悩ませる。

 なぜなら、書かれていた翔太の指示が曖昧であり、具体的な方法がかかれていなかったためである。

要は、実行するだけでなく手段も考えなければならないため、彼女はそれを面倒だと感じていたのだ。


「ん? テイル、その手に持ってるのは何?」


 そんな時、アリスがテイルの持っていたその指示書に気づき、それを手に取った。

 元々、アリスはスケルトンとの戦闘がもうすぐ終わりそうだから、テイルにまた翔太の位置まで誘導してもらおうと彼女に声を掛けたのだ。


 そしてアリスはその指示書の内容を見て、翔太が自分を犠牲にするようなことをしていると確信した。

 なればこそ、一秒でも早く翔太の元に行かなくてはならないとすぐにその場を後にしようとする。


 しかしそこで一瞬だけ彼女の動きが止まった。

 それというのも、その指示書に書かれていた文字に違和感を覚えたのだ。


 この世界において、一般的に書面にはインクが使用されている。

 しかし翔太が書いたであろう紙にはインクではなく、何か黒炭のようなもので書かれていた。


 それを見て、アリスは一瞬、これは何で書いたものなのか分からなかったのだ。

 それもそのはず、その文字はこの世界にはない技術で作られたもの、シャーペンで書かれていたものだから。


中々時間が取れず、更新が大幅に遅れてしまい、すみませんでした。完全に不定期更新になってしまいましたが、作者を温かい目で見守っていただけると嬉しいです。本当にすみません。

それとは別件で、ついに念願の戦闘シーン(読み合いみたいな感じの戦闘)が書けました! 元々、読み合いを含んだ戦闘シーンが大好きだったので、それが描けて満足です(戦闘が開始したばっかだけど……)。

とはいえ、初めて書いたので拙い文になっておりますが、これからもっと上手く書けるように努力しますので、これからもよろしくお願いします!

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