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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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敵意の感知(誘)

翔太の言葉でジューハは大激怒。ジューハは筆舌に尽くし難いほどの敵意を翔太に向ける。ジューハからの敵意を認識した翔太は、隣にいたメイサを街まで戻らせると、懐から‘狂襲の獣’を取り出したのだった。

 ‘狂襲の獣(ビースト)’。

 それはかつて翔太が倒したミノタウロスから得た角から作られた短剣で、素人でも一振りで木を真っ二つに出来るほどの切れ味を持っている。


 この短剣はさらに持ち主にある能力を与える。

 その能力とは‘狂化’。一度発動すれば最後、使用者の心を侵食し、身体を強化すると共に「敵」と認識した者に対して殺意が剥き出しになり、冷静沈着に敵を殺す機械兵のごとく敵を屠る存在になってしまう。

 さらにこの能力は、敵がいなくなれば今度は周囲の関係のない者を次の「敵」として勝手に認識し、止まることを知らないかのように誰彼構わず襲いかかる。


 まさに、使用者を手の付けられない獣にさせる、制御不能の力である。


 翔太もこの能力を体験した時は、なんて扱いに困る力だと大層頭を悩ませたものだが、少なくとも今はそう思ってはいなかった。

 その理由は翔太が初めて‘狂化’を使った際に、身を潜めていたアリスをどうして見つけることができたのかという疑問と関係している。


 初めて‘狂襲の獣’の力を解放した時、見えていないにもかかわらず翔太はアリスがそこにいることが分かったのだ。

 それが獣の名にふさわしく野生の勘で見つけたのかは定かではないが、その場所に何らかの気配を感じ取ったのは確かである。


 このことから翔太は、‘狂化’にはある程度周囲の者を感知できる力があるのではないかと考えていた。


 そして翔太はさらにここで一考した。

 狂化状態になると、どんな相手でも敵意があると強制的に思い込んでしまうから周囲の者さえも無差別で襲い掛かるだけだが、もしもそんな狂化状態の者に本物の、しかも身の毛がよだつほどの敵意を向ける者が現れたら、その時彼はどういった行動を取るのか。


 恩には恩を、仇には仇を返すように、敵意にはそれと同等もしくはそれ以上の敵意を持って返す、それが‘狂襲の獣’のならば、その答えがどうなるのかは想像するに難くないだろう。


 これこそが翔太の考えた、‘狂化’の高い感知能力と、ジューハに抱かせた敵意そのものを利用し、翔太が森の奥に潜んでいるジューハを追跡するという、翔太が考えた作戦の第二段階である。


 しかし今までの分析はあくまで理想という名の仮説であって、実際にそれができるという確証は何一つない。

 一応、翔太も敵意を発している者よりも近くにいる者を襲ってしまう可能性を考慮して、メイサには門の内側まで退避してもらったのだが、それでもこれが事前の確認も無しの本番には変わりない。


 それに加えて、この結果次第では街とメイサの運命が決まってしまうため、翔太にかかる重圧は計り知れないものとなっていた。


「頼むぜ、マジで……」


 だからこそ翔太は半ば祈るようにして‘狂襲の獣’の能力を発動させた。


 すると、彼の意識は瞬く間に‘狂襲の獣’に侵食され、彼の景色はだんだんと赤く染まっていった。

 そして次の瞬間には、先ほどまで何となくでしか分からかったジューハの憎悪が、それこそ姿形がないものが可視化されたかのように、翔太にははっきりと感じることができた。


 思惑が見事に的中したことで、本来ならば喜びの声を上げる所だが、その敵意(ぞうお)を認識した瞬間、翔太は「狂化」の名にふさわしいほどの殺気を放った。

 その目にはもはや誰かを守りたいという思いは一切感じられず、純粋な敵意と殺意が剥き出しになっており、既に彼の優しい心は消え失せていた。


「うぜぇな……殺すか」


 冷静な声音でそう言うと、翔太は躊躇なく死人たちの森(イエローフォレスト)に入って行った、敵意の元凶であるジューハの息の根を止めるために。


    ◇◆◇


 狂化状態の翔太がイエローフォレストに突入して少し経った頃、森の奥でそんな彼の行動の全てを見ていたジューハは驚愕していた。

 なぜなら、この森の中で翔太が真っ直ぐジューハ(じぶん)のもとへ迷うことなくやって来ているからである。


 そもそも、このイエローフォレストはジューハが長年をかけて回復した頃にかけた魔法の影響で森の中を進む者達の方向感覚が狂っている。その中で問題なくこの森の中を進むことができるのは術者であるジューハとその配下であるスケルトンたちだけである。


 しかし今の翔太にはそれが一切効いていないのだ。


 現に、ジューハは念のために先ほどまでいた位置から場所をさらに森の奥へと移しているのだが、翔太はそんな彼の位置が分かっているかのようにどんどんジューハに迫っていた。


 しかもジューハは何度も森の中で待機しているスケルトンたちに翔太を襲撃させているのだが、翔太はスケルトンたちの不意打ちをものともせず、次々と薙ぎ倒している。

 ジューハはそんな翔太の動きを見て、彼の戦闘力が自分の予想を超えていたことに苛立ちを募らせていた。


 しかしそれ以上に厄介なのが、翔太がある程度のスケルトンを倒すとすぐにまたジューハの後を追いかけていくことである。

 それというのも、翔太がスケルトン一体一体を相手にしてくれれば、その分だけジューハの逃げる時間を稼げるのだが、当の翔太はまるでスケルトンのことなど眼中にないように、スケルトンを全滅させずにジューハだけを追いかけ続けている。

 まるで、ジューハの狙いを看破し、相手の嫌がる部分を的確についているかのように。


 その事実に、ジューハは驚愕していた。

 つい数時間前に見た時は恐怖に支配されていたような表情をしていたはずの翔太が、この短時間でどんな変化があれば、あれほどまでの化け物になれるのか。

 この森を臆せず、且つ着実に自分の元までやってくる翔太の得体の知らなさに、ジューハは十年ぶりに恐怖を覚えていた。


 その時、ジューハの背後にある茂みから何かが飛び出してきた。


「ようやく追いついた……手間をかけさせやがって」


 そこにいたのは、獣のごとく獰猛な殺気を放っている翔太だった。


 その事実に対してジューハは何も言うことができずにいたが、内心では命じたスケルトンたちに「足止めも満足にできないのか」と苛立ちを覚えていた。

 しかしスケルトンたちが翔太を足止めできなかったのも無理はない。


 もちろん、スケルトンと‘狂化’により身体能力が強化された翔太の足では速度に差がありすぎるため、翔太に相手にされず戦闘可能なスケルトンがいたとしても、一度翔太に包囲を抜けられてしまった場合、彼に追い付くことができないというのも理由の一つだが、それ以上の要因がある。


 それは翔太がただ森の中をがむしゃらに走って来たのではなく、途中から木の枝を伝うようにしてジューハを追いかけてきていたからである。

 それにより地面を走っている時よりも視界が開け、茂みによる妨害も少なく、さらには剣と弓しかもっていないスケルトンがそんな彼を攻撃できる手段として弓か剣を投擲することぐらいしかない、つまりスケルトンの妨害をぐっと減らすことができていた。


 その結果、途中から逃げることに必死だったジューハは翔太の動向の確認が不十分になっていたため、両者の間の距離が既に詰まっていることに気が付くのが一瞬遅れ、想定よりも早い遭遇になってしまったのだ。


 そうして、眼前で強烈な殺気を感じ取ってしまったジューハは、身が委縮してしまうような寒気を覚えたのだった。


更新が一か月ぶりになってしまい、本当にすいませんでした。

激しく自己嫌悪中(前回の後書きとか、完全に詐欺じゃん……)。

それと、これまでの話でルビの振り方が間違っていたため、以下のように訂正します。

特質な才能(アビリティ)

狂襲の獣(ビースト)

 自分の間違いでややこしい感じになってしまい、申し訳ありません。

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