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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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強い想い(憎)

アリスの説得によりメイサは自分が一人ではないこと、仲間の存在を認識し、翔太の策を承諾。メイサ、もとい翔太の扇動によって街の人たちを味方につけ、戦う覚悟を持たせた。それと同時に、メイサは街の人たちの本音を聞いた。それにより、メイサの気持ちが固まる。そして翔太が策を一つ提案。その後、イエローフォレストに潜むジューハに対して、門の外に出た翔太とメイサ。その時、翔太はメイサの肩を抱いて彼女を自分の方に寄せると「メイサは俺の女だ!」と高らかに叫んだ。

「メイサは俺の女だ!」


 翔太の渾身の叫びがその場に響き渡るなか、それを森の奥で聞いていたジューハが最初に抱いた感情は困惑だった。


 それというのも、ジューハはメイサの隣にいる男が、城壁にて十年ぶりにメイサの姿を目にした時に、彼女の視線の先にいた男だったということは覚えていたのだが、ジューハもその相手がまさかメイサの恋人とは思ってもいなかったのだ。


 予想外の出来事にジューハは完全に思考が停止していた。

 しかしその男(翔太)がメイサの肩を抱き寄せている姿を心が認識した瞬間、彼の中で湧き上がって来たのは、混じりっ気のない純粋な負の感情。


 精神体だけの存在となった時から今まで、ジューハはあらゆる苦悩を耐えてきた。

 始めの頃は何も触れず、脆弱な存在のまま、この世界を意味もなく徘徊していた。しかしジューハにとってそれは時間の無駄でしかなく、一刻も早く実験の続きをしたいというのにそれができないというのは一種の拷問のようにも感じていた。

 せいぜい救いといえることは、聖なる加護を得た武器やその系統に属する魔法ではないと攻撃が通らないという精神体(からだ)と、以前と変わらない思考が出来ることぐらいだ。


 しかし今は身体がないことに苦悩しているというのに、物理攻撃が通用しない精神体(このからだ)を便利だと感じるのは、あまりにも皮肉が効きすぎている。

 また、思考ができるということはソールでの実験の結果をいくらでも考えることができることだが、それでもはや答えと言っても良いほどの仮定を考え付いても、それが実証できなければそれは他の仮定と変わりはなく、もどかしい思いが募るばかりである。

 しばらくの間、ジューハはそんな生殺し状態だった。


 そこで、ジューハはこの状況を打開するために肉体の代用になる身体を探し求め、ついにその身体を見つけたのだ。

 幸い、その人骨には精神体、いや魂と呼ぶべきか、とにかく自我を構成していると言って間違いのない、根幹の部分である精神体が入っていないのだ。本来、精神体が入っている器に他の精神体が入っても、元の持ち主のほうがその器との密着が強いため、その身体を奪うことはよほどのことがない限り不可能だろう。

 しかし今は違う。他の精神体が入っていないということは、鍵のかかっていない空き家と同じく、易々と侵入できる。そのため、ジューハはその身体に問題なく入ることができたのだ。


 しかし彼の中で不便で大した魔力も持たない(スケルトンの)身体で行使することがどれだけ苦渋の決断だったか、それこそ他人が理解できるものではないだろう。

 見た目通り、骨だけしかない身体は魔力による補強がなければ満足に動かせず、精神体との時とは違い、冒険者などに見つかりやすいため、実験をすることすらも難しいだろう。

 肩身が狭いと言うと少し違うのだが、とにかく色んな意味で動きづらく、不便な身体だったのだ。


 しかしそれでも彼は求めていた(メイサの)身体を手に入れるためにこの十年間、暗い森の奥でじっと身を潜めながら研究を続けた。

 そしてメイサが逃げられないように(・・・・・・・・・)地道に策も準備し、実行した。


 すべては自らの宿願を果たせるこの日の為に。


 それなのに、あの男はジューハの努力を嘲笑うかのようにメイサを横から掻っ攫い、さらにはジューハの目の前で彼を挑発するかのような行動を取ったのだ。


 そんなこと、許せるわけがなかった。


 その瞬間、ジューハは今まで溜め込んでいたどす黒い感情を全て、メイサの隣にいる翔太へと向けた。それは決して言葉で表したものではないが、それが通った後には森がざわめき、より不気味さを増している。

 それほどまでに、ジューハは強い想いを秘めていたのだ。


 しかしこの時のジューハは気づいていなかった、その感情を引き出させることこそが翔太の作戦だったということに。


    ◇◆◇


 翔太は叫び終えると、作戦とはいえ中々恥ずかしいことを叫んだなと思っていた。

しかしこれが作戦の第一段階であるのと同時に、どうしても必要なことだと翔太は自分で自分にそう言い聞かせていた。


 すると、翔太の予想通り、思わず鳥肌が立つほどの悪寒がした。

 もちろん、翔太は気が分かるような超戦士ではないため通常ならば殺気などというものは分からないはずなのだが、今届いたものはそんな翔太でも分かるほどに粘着質で気味が悪かったため、これがジューハの敵意だということをすぐに理解できた。


 翔太そんな敵意を感じて、血の気が引く感覚を覚えながらも、今もなお隣にいるメイサの指示を出す。


「……っ! メイサさん、奴が策に乗ってきました! 作戦通り、街の方に避難してください!」

「分かりました……ご武運を!」


 翔太の指示を聞いたメイサはそんな彼の手を強く握ると、急いで街の中に戻った。

 そんな彼女の後姿を見ながら、翔太は手に残る温もりを感じていた。


 言葉にすると気持ち悪いもことかもしれないが、翔太だって一般的な男なのだ。美人からそんなことをされて浮かれないはずがない。


 それに、今自分が守るべき者の存在を認識するのとそうでないものには大きな差がある。翔太はそれを今、心で理解したのだ。


 そうして、気合を入れ直した翔太が懐から取り出したのは、‘狂襲の(ビースト)’だった。


投稿が不定期で本当にすみません。次回は二話投稿できるように善処します!(こうやって自分にプレッシャーをかけないと動けない作者で、すみません)

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