ジレンマ(挟)
※今回は二話連続投稿となっております。
南門で壁を登ってくるスケルトンたちの襲撃をぎりぎりで耐える兵士たち。そこに翔太とアリスが到着。その後、メイサが到着。しかしメイサの存在に気づいた途端、スケルトンたちはその動きを止める。その後、如何にも自分が王だと言いたげなスケルトンが登場。そのスケルトンこそ、十年前の事件の首謀者で、精神体だけの存在になったはずのジューハだった。そんな彼はメイサに自分の元に来いという。そして二時間後に答えを聞きに来ると言って大量のスケルトンたちと共にイエローフォレストへ戻っていった。
ジューハの姿が森の奥に消えて少しした頃、兵士たちはようやく正気を取り戻し始め、ひとまず被害状況の確認を行った。
ただその中で、言葉を使うスケルトンに委縮しながらもその話に耳を傾けていた者たちは、メイサに視線を向けていた。
その時、一人の兵士がメイサに話しかける。
「……あなたはあのスケルトンのことを知っているんですか?」
その兵士の声は、顔色が悪くなっているメイサを気遣ったのか、優しい声音だった。しかし彼の言葉には明らかな疑いが含まれていた。
それもそのはず、あのスケルトンの口ぶりとメイサの反応から、あの得体の知れない魔獣と彼女に何らかの関係があることは明白。詳しい事情までは分からないが言葉の捉え方によっては、彼女たちがそれなりに親しい関係のようにも捉えられる。
そんな彼の言葉を聞いたメイサはただ一言、
「……街の皆さんがいるところで話します」
そう言って怪我をしている兵士を一瞥した。
その行動から、質問をした兵士は怪我人の手当てを優先してほしいという彼女の意図を読み取り、ひとまず彼女の言う通りに動いた。
しかしそれでも彼の中でメイサの疑いが晴れることはなく、今もなお警戒しているといった様子。また、周囲にいた者たちも彼と似たような反応を見せていた。
翔太はそんな警戒している視線に晒されているメイサに何か声を掛けようとするが、メイサはその前に一足先に街の方へと戻っていった。
そんな彼女の後ろ姿は哀愁を帯びており、今は一人にしてほしいという気持ちがひしひしと伝わってくる。
翔太たちの中でメイサという女性は、多くの人に慕われており、眩しい笑顔が似合う人だった。しかし今の彼女からはそんな太陽のような輝きは感じられない。
十年という長い年月のなか、メイサは立った一人で街の人たちを守ってきた一方で、それを誰にも言わず、笑顔の裏にずっと隠してきた。
しかし今回の一件はそんな彼女がここまで感情を露にするほどの衝撃だった。
だからこそ誰かが彼女を助けないといけないのに、翔太たちはその手立てを思いつくことができなかったのだ。
翔太たちはそんな自分たちの無力さに歯痒い思いをしていた。
一方、街に戻っている最中のメイサは葛藤していた。それは街の人たちに全てを話すべきか迷っていたからである。
壁の上にいた時は「話す」と言わない限り、話が進まない様子だったためメイサはやむなく兵士の言葉を了承したのだが、全てを話すとなるとジューハが起こした事件のこと、果ては彼らの魂と体が入れ替わっていることも話さなくてはいけなくなる。
そうなってしまうと最悪の場合、街の人たち全員が拒絶反応を起きてしまう。
それだけは絶対に避けなくてはいけない。街の人たちには罪などないのだから、彼らが苦しむ理由などないのだ。
しかしだからといってメイサは街の人たちにこれ以上嘘をつくのは嫌だった。この十年間、親切にしてくれた彼らを騙してきた分際で今更何を言っているのかと思うところもあるが、それでもメイサは彼らを裏切りたくなかったのだ。
だからこそ彼女は、街の人たちを守りたいという気持ちとこれ以上騙したくないという気持ちとのジレンマで苦しんでいた。
そしてそれは、街に戻って来てからも決めることはできなかった。
◇◆◇
被害状況の確認を終えた兵士たちが街に戻ると、メイサは既に広場の中央にいた。その周囲を街の人たちが固めており、兵士たちもその集まりに加わる。
しかしそのタイミングで街の人が尋ねたのは、メイサではなく兵士たちだった。
それもそのはず、街の人たちが聞いたのは声だけだったため先ほどまで何があったのか、何の情報も入ってきていなかったのだ。そんな彼らがかろうじて理解できたのは、その声の内容にメイサの名前があったということだけ。
だからこそ、先ほどまで事態にあたっていた兵士たちに尋ねたのだ。
予想だにしなかった事態に半ば驚いていた兵士たちだったが、彼らはすぐに平静を取り戻し、スケルトンの大群がこの街に侵攻してきた事、その目的がメイサを奪うこと、そしてその主犯だと思われる魔獣とメイサが知り合いの可能性があることを話した。
すると、街の人たちの疑問の矛先がメイサに移り、そこでようやく兵士たちは話を進ませることができると思った。そうしてメイサの方に視線を向けると、彼女は別の女性と何か話をしていた。
兵士たちはその女性の銀髪に軽量装備という姿格好から、街の者ではなく冒険者だということはすぐに理解すると、彼女が最近イエローフォレストを抜けてきたことで有名になっているパーティーの一人だということを思い出した。
兵士たちがそう考えていると、話を終えた銀髪の女性はメイサの隣に移動し、そこで待機していた。
その様子を見ていた兵士たちが、彼女たちが何を話していたのか気になっていたその時、
「え~、皆さん、この声が聞こえていますか?」
メイサのどこか緊張感の抜けた声が広場に響いたのだった。
作者「二話連続で投稿とか言ったけど、二話目の字数少なっ!」(驚)




