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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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才能発見(目)

アリスに誠意(謝罪)を見せた翔太。テイルに弄られた翔太とアリス。なんとか、依頼の半分を終了し、その分の報酬をゲット。残りの依頼まで時間があるから、そこで街を散策していると、ある人だかりを見つけた。

 謎の人だかりが出来ていたのは、とある民家の前だった。

 そんな集団が開いたままのドアと一つしかない窓から中を覗き込んでいるのを見れば、誰だって気になるだろう。


 翔太もその例に漏れなかったのだが、彼にはこの他にも気になったことがあった。それは彼らの表情である。

 そもそも、人だかりというのは何かが起こった際にそれを興味本位で見たいと思った第三者たちが集うことで生まれることが多い。

 だから、そういった時の彼らの表情は何があったのかと気になってはいるが所詮は他人事だからと、関心が薄いものになる。


 しかし翔太が見た彼らはそんな表情をしていなかった。中には不安そうにしている人もいたが、大半の人が笑みを浮かべていたのだ。

 しかも彼らの笑みは嘲笑のような冷ややかなものではなく、アイドルのような人気者に向けるような、輝かしいものだった。中には神を拝んでいるかのような者までもいる。


 だからこそ翔太は気になったのだ、街の人たちにこれほどの羨望の眼差しを向けられるほどの人気者とはいったいどんな人なのかと。

 そして、その家では今何が起こっているのかと。


「……何かあったのか?」


 既に心の中で「気になるから見たい」と答えを決めているにもかかわらず、翔太はわざとらしくアリスたちに話題を振った。


「あぁ、あの人だかりの事よね。確かに何か気になるわね」

「えぇ~? それよりお腹がすきました」


 翔太の言葉に同意するアリスに対して、翔太の肩の上で自らの食欲に素直なテイル。


「じゃあ、少し見ていくか」

「えぇ~?」


 意見が分かれる両者に、翔太が与したのはもちろんアリスである。露骨に嫌そうな声を出すテイルだが財布の紐を握っているのが翔太である以上、彼女に別行動をするという選択肢はないため、仕方なく彼の決定に従った。

 そうして、何があるのか確認してみることにした翔太たちは人だかりをかき分けて進み、窓を覗き込んだ。


 すると、きれいに整理整頓された家の中にいたのは一組の男女だけだった。


 一人は、ベッドに横たわる男性。しかし彼は四肢を拘束具で固定されており、顔は蒼白で白目をむいている状態と、健康体とは到底思えない様子だった。


 もう一人は、そんな彼の手を優しく握っている女性。

 修道服に身を包んでいる彼女は艶やかな金髪に、透き通るような碧眼の持ち主で、おっとりしているように見えるため、どこか放っておけないような、男心をくすぐるような美しい女性だった。


「……彼女は何をしてるんだ?」

「おっ? 兄ちゃん、メイサさんのことを知らないってことはこの街の人間じゃねえな?」

「……メイサさん?」


 独り言のように呟いた翔太の言葉に答えたのは、偶然彼の隣にいた男性だった。

 彼の発達した腕の筋肉と足元に置いてある木箱から、彼が運搬関係の仕事をしている人かなと翔太は判断した。

 翔太はそんな彼に「仕事の途中なのにここにいていいのか?」と思うが、当の本人はそのことを気にしている様子はない。むしろなぜか誇らしげにしていた。

 そんな表情をしている男、ガユハは翔太への説明を続けた。


「そうさ! 彼女こそ、この街の女神であるメイサさんだ!」

「……え~と、彼女は神官ってことで良いんですよね?」

「イエス!」


 翔太は数少ない情報から彼女について分析した。ついでに、男性からの情報は全く参考にしていない。


「……それで彼女は今何をしているんですか?」

「何ってそりゃあ、除霊に決まっているだろ?」

「除霊?」


 そんな彼が言うには、数年ほど前からこの街では家の中にいる男のように原因不明の病が起こっているとのこと。

 そして、その病は人を発狂させ、最後にはその人を廃人に変えてしまうという恐ろしいものである。


 この病が始めて発症した時は街の人たちも何が何やらと対処できない状況に混乱していた。しかしそんな時、彼女がその病のことを「霊に憑依されたから」と言い切ったのだ。

 当然、街の人はそんな彼女の言葉をすぐには信じられなかった。何せ、当時の彼らは周辺にレイスが出ることは合っても、街の中にそんなものがいるわけがないと思っていたのだから、彼女の言葉をすぐに受け入れることはできなかったのだ。


 しかし彼女が患者たちを診療すると、途端に彼らは気力を取り戻し、回復していった。

 そうして、誰もが匙を投げた彼らを救った彼女はそれ以降、この街を救う女神となったのだ。

 ちなみに、女神と称えられたことでこの街の人は彼女のことを一時期「メイサ様」と呼んでいたこともあったのだが、それは彼女から猛抗議を受けたため今の「メイサさん」呼びになった。


 誇張しまくっているガユハの説明が終わると、この話を聞いていた周囲の者が彼に激しく同意していた。いつの間にか、そこには謎の一体感が生まれていたのだ。

 そんな周囲の反応をよそに翔太がメイサの方を見てみると、気のせいか彼女の頬が紅く染まっているように見えた。


 翔太がそんな彼女の気持ちを察して「ご愁傷様」と同情した時、家の中にいた男の様子が急変した。

 彼は何の前触れもなく呻き声をあげ、拘束具を外す勢いで手足をばたつかせ、藻掻き苦しみ始めた。その姿は彼の説明通り、霊に憑かれているかのように見える。


「……始まるぞ」


 先ほどまで嬉しそうに語っていた男が真剣な表情で告げた。

 あんなに盛り上がっていた周りの人たちもいつの間にか静まり返っている。


 そんな重苦しい空気の中、苦しんでいた男も気が楽になったかのように静かになった。

 しかし、それこそが本当の始まりの合図である。


「うぁああああ!! 違う! 僕は、僕は……!」


 男は再び奇声を上げると、今度は先ほどとは比べ物にならないほど暴れ出した。

 まるで身を引き裂かれたような苦しみ方をしている男に、翔太は驚いた。人が苦しむ様を初めて見た彼にとっては、まさに衝撃的な光景である。


 ただ、その時彼には少し気になったことがあった。それは、苦しんでいる男が今も言い続けている言葉である。

 彼は何に対して「違う」と言っているのか。

 彼はいったい何を否定しているのか。


「……何が『違う』んだ?」

「この病にかかった奴はあんな風に支離滅裂なことを言いながら苦しむんだ。人によっては赤ん坊みたいに泣く奴もいるし、使い慣れない言葉を言い続ける奴もいる。

「使い慣れない言葉?」

「そうだ。……今で言えば、確かあいつの一人称は『俺』だったはずだが、今は『僕』になっているとかな。とにかく、そうやって訳も分からずに苦しんで、最後には疲れ果てたかのように死んじまうっていう恐ろしい病なんだよ」


 翔太の素朴な疑問に、またしてもガユハが小さな声で答えた。


 誰もが気味悪がっているなか、今も激しく身体を動かしている男の手を握り続けている者がいた。

 それこそ街の救世主たるメイサである。


 彼女は今も必死に彼の手を離さないように強く握っている。その姿は彼の無事を神に願っているようにも見える。


 するとその時、そんな彼女を拒絶するかのように、苦しんでいる男が彼女の手を振り払った。手足を拘束されているにもかかわらず、すごい力で暴れる彼に、彼女も再び手を握ろうとするが彼は強い拒否を示した。

 彼の強い拒絶にメイサは諦めてしまったのか、彼女は彼から少し距離を取った。


「……来るぞ」


 すると、誰が言ったのかは分からないが確かに誰かがそう呟いた。

 その瞬間、翔太たち以外の全員が神を見るかのように目を輝かせ、湧き上がる興奮を抑えるのに必死になっていた。

 そんな彼らの様子から、何かが始まるのを察した翔太たちは何が起きるのかドキドキしながらメイサを見ていた。


 そしてついに、彼らの待ちに待った瞬間が訪れる。


 メイサはその場に正座をするように腰を下ろすと、指を畳みながらそっと手を合わせた。

 これこそが彼らが見たかった、通称「女神の祈り」である。


 街の人たちが謎の盛り上がりを見せるなか、何も知らない翔太たちからすれば、正直に言うと彼女がここにきて神頼みしているようにしか見えなかった。

 しかし街の人たちの反応から察するに、彼らはこの姿に絶大な信頼を置いているのがよく分かる。原因不明の病に諦めず立ち向かう姿に、民衆は心を掴まれたのだろう。

 さらには、可愛い女の子がまるで愛する者のために祈っているかのような健気な姿から、彼らが彼女のことを尊いと思っている理由が分かった。


 ただ、翔太としては治療が始まってから一言も言わないメイサに、彼女は何をしているのかという疑問のほうが気になっていた。

 それでも、もはやアイドルのライブのように盛り上がっている彼らに今聞いたところで、満足するような答えが得られるかは微妙なところだろう。


 それに、翔太としても熱狂的なファンである彼らの盛り上がりに水を差すような真似はしたくないと思っていた、というよりは今は触れない方が身のためだと考えていた。


 翔太がそんなことを考えていると、少しずつだが男の呻き声が止み始めていた。

 そしてそれから少しすると、ついに男は暴れるのをやめて、安心したかのような表情をしながら眠りについた。


「よく頑張りましたね」


 最後に人を安心させるかのような優しい声で告げた彼女は、眠っている男の手をもう一度握りしめながら、もう片方の手で彼の頭を優しく撫でた。


 そこで再び、家の外にいた人たちは大盛り上がりを見せた。その理由は翔太も分かったが気がした。


「「「うぉおおおお!!」」」

「流石はメイサさんね!」

「あ~、尊い……」


 それぞれが思い思いの言葉を告げると、次第に周囲の人も「今回も良かったな~」と各々で感想を言いながらその場を離れ出した。

 ここで翔太は先ほどの疑問を思い出し、またあの親切な人に尋ねた。


「あっ、すみません! メイサさんはどうやってあそこにいる彼を助けたんですか?」

「ん? あぁ、確か彼女は独自の魔法をかけているらしい」

「らしい? 彼女がそう言ったんですか?」

「そうだ。……でもメイサさんもこの話題にはあまり触れられたくないのか、あまり話そうとしないんだ」

「そうですか。すいません、何から何まで教えて下さって……本当にありがとうございました」

「あぁ。メイサさんの凄さを知りたくなったら、俺のところに来な。朝まで語りつくしてやるぞ?」


 朝まで生討論は勘弁したいと思っている翔太は苦笑いを浮かべながら感謝を伝えると、ガユハは誇らしげな顔をしながらどこかに去っていった。


 彼からいくつかの情報を得た翔太だが、その答えに納得はしているわけではなかった。

 彼が引っ掛かっていたのは、「メイサが魔法を使っている」という点である。


 それというのも、除霊が始まってから終わりまで見ていたにもかかわらず、彼女に魔法を使った素振りが無かったからである。

 魔法を使ったのならばどこかに魔法陣が現れるはず、もしくはアリスのように魔石を使っていたのならばそれを使用した際に発光があるはずなのだが、彼女にそれらしい反応はなかった。


 もちろん、翔太の持つ知識が魔法の全てではないため、絶対に彼女は魔法を使っていないと断言はできないが、それでも翔太はどこか違和感を覚えていた。

 そして彼はその疑問を解消する答えを既に知っている。


 それこそ彼女が特質な才能(アビリティ)を持つ、いわゆる能力者という可能性である。

 しかし仮に彼女が能力者だったとしても、ギルドにそう伝えていないことを考慮すると、彼女がそれを秘密にしている可能性が高い。また、そうなると街の人が彼女の秘密を知っている可能性も低いだろう。


 つまり、翔太はまたしても聞き込みという危ない橋を渡らなくてはいけない状況である。

 聞き込みは情報取集において基本的な行動の一つだが、翔太にとっては相手の発言の内容によっては無慈悲な雷が落ちてくるという、まさに地雷原を歩くような地獄の作業なのだ。


 ほんの一瞬だけ、メイサに直接聞いてみることも考えたのだが、そもそも街の人にも秘密にしていることを、会って間もない人に言うわけがないだろう。

 どうなっても嫌なことにしかならない状況を想像すると、彼はあからさまに嫌そうな表情を見せた。それでも、少しでも生きる術を増やしたい翔太は調べるしかないのだ。


「……聞き込みに行くか」

「翔太様……ちょっといいですか?」


 覚悟を決めたのか諦めたのかは定かではないが、翔太は無慈悲な命令で死を覚悟した二等兵のような表情をしながら、人だかりを抜けようとした。

 するとその時、突然テイルが彼の手を引っ張り、彼を人通りのない場所に誘導した。


「急にどうしたんだよ、テイル?」

「翔太様……今あなたは特質な才能(アビリティ)の名前だけでいいから、知りたいと考えていますね」

「な、なぜそれを!?」


 物陰に入ると、テイルはドヤ顔で翔太の心中を見抜いた。翔太がそれに驚いていると、彼女はどこからかあるものを取り出した。

 翔太としては、彼女が今どこからそれを取り出したのか気になるのだが、今は合えて無視することにした。


「才能発見薬~!」

「……何それ?」


 テイルがド〇えもんの道具を出すときの声を真似しながら見せたのは、掌に収まるぐらいの小さな容器に入った謎の液体だった。


「これを翔太様の目にさすことで……なんと! 翔太様は新たな特質な才能(アビリティ)を獲得することができるんです。その特質な才能(アビリティ)とは……」

「ちょっと待て!」


 珍しくテイルが丁寧に説明している時、翔太突然それを止めた。テイルが不思議そうな表情で翔太を見つめると、彼は緊張した雰囲気で口を開いた。


「……念のために聞いておくけど、俺がその説明で能力を知った場合、罰を受けることになる?」


 翔太が言っているのはもちろん「他者から特質の才能(アビリティ)の能力などを聞いた、もしくは能力を正しく理解しなかった場合、雷が落ちてくる」という意味不明なルールのことである。

 翔太はこの「他者」という部分にテイルが該当するのかを尋ねたのだ。


 すると、その言葉で両者の間に沈黙が生まれた。そうして少しの間沈黙が続くと、テイルが先に口を開いた。


「……では、この目薬を差してください」

「おい!」


 先ほどまで事細かに説明していたテイルが、翔太に指摘によりいつもの調子に戻ったということは、そういうことなのだろう。

 翔太は見事に彼女の狙いを看破したのである。


「危なっ! 珍しくいろいろ教えてくれるかと思いきや、そういう魂胆かよ!」

「ちぇっ……またあれが見られると思ったのに……」

「おい、何残念がってるんだよ?」

「神様もきっと待ち望んでいるんですよ、翔太様が間違えるのを」

「そんなこと知るか! お前に分かるか、驚きと痛みが同時に来る辛さが!?」

「はぁ……分かりましたから、早く差してください」


 翔太はあからさまに残念がるテイルから薬を受け取った。

その容器はどうもガラスではなく、プラスチックに近い素材で出来ているようだった。そう思ったのは、明らかに触れた時の感触が翔太のいた世界のものと酷似していたからである。


 翔太はその事に多少驚きはしたものの、今はとりあえず置いておくことにした。

 しかし翔太が渡された容器を見てみると、彼はあることに気づいた。


「……なぁ、テイルさんよぉ」

「何ですか?」

「この薬は何でこんな禍々しい色をしているんだ?」


 翔太が気になったのは渡された薬の色が墨汁のような黒色だったからである。翔太も受け取った時は「容器の色なのかな?」と思っていたが、容器を振ってみると中のものもそれに合わせて揺れ動いている。

 そして容器は無色透明であるため、容器の色のせいで中の液体が黒く見えるということはない。


「それは極めて特殊な薬ですから、そういう色になったんです」

「……なるほど。じゃあこれはなんだ?」


 翔太の質問に淡々と答えるテイルに、翔太はあるものを見せた。

 それは人の頭部の骨が描かれたもの、いわゆる髑髏マークである。


 翔太が最初にこれの存在に気が付かなかったのは、ひとえにテイルが翔太にはこのマークが見えないように持って、そのまま彼に渡したからである。

 なんと狡猾に仕組まれた罠か。


「おい! これ絶対に毒だろ!?」

「違いますよ。これは誰かが間違えて飲まないようにするために貼ったものです。人体に害はありません」

「だったら、もう少しましな目印はなかったのかよ?」

「別に何でもいいじゃないですか。それにこの骸骨さんだって『私に意味はありません。先入観に囚われないで!』って言ってますよ?」

「いや、もう骸骨って言っちゃってるし! こんな平然と人に毒勧める奴初めて見たわ!」

「もう~、面倒くさい人ですね。大丈夫ですから、早くしてください!」

「他人事だと思って……」


 もはや逆ギレしているテイルに、翔太は諦めてこの悪意の塊みたいな薬を使うことにした。


    ◇◆◇


 さて、少し話は変わるが、目薬を差すときに誰でもなったことがある問題がある。

 それは目薬を差すときにどうしても手がブレてしまい、上手く目に入れることができないことである。


 あるテレビ番組では、目薬を差すときに「あ~」と言いながら差すと上手くできると言っていたが、翔太はそれを知らない。


 だから翔太はあの謎の震えに翻弄され、相当苦戦していた。彼も諦めずに何度も何度もトライしているのだが、どうしても上手く目に入れることができなかった。

 テイルはそんな彼を待っていたのだが、そのもどかしい姿に内心ではかなりイライラしていた。


 今もまだ親指と人差し指で容器から液体を数滴だけ押し出すだけという行為に時間をかけている翔太に、我慢の限界を迎えた彼女はついに動き出した。


「もう、さっきから何をしているんですか?」

「いや、上手く入れられなくて……」

「はぁ、じれったいですね!」


 苛立ちを見せるテイルに、申し訳なさそうに言いながらトライしている翔太。

 しかし彼女はそんな彼に興味を示さず、薬を持っている手の方へ飛んでいった。


 すると彼女は今も目薬を差そうとしている翔太の親指と人差し指を、その小さな両手で挟むように思い切り叩いた。

 その瞬間、勢いよく出てきた大量の薬が完全に油断していた翔太の目に入り込んだ。


「ぐわぁあああ!!」

「まずは一つ……」


 突然の出来事に、翔太は驚きの声を上げた。何が悲しくて、得体のしれない液体を目一杯浴びなければいけないのか。

 先ほどのテイルの押し出しで既に容器に入っている分が残り半分、つまり先ほど半分近くが翔太の目に注入されたのだから、目が沁みると言っても不思議ではない。


 しかし彼は沁みるを通り越して、悶絶していた。

 なぜなら大量に入り込んだ薬が翔太の目を改変させていたからである。その結果、その変化が熱となって彼の目を激しく刺激していたのだ。


「さて、次で最後ですね……」


 テイルは蚊を潰すようなモーションでなぜか素振りをしながら、そう呟いた。

 しかし翔太としては、もうあんな目に遭いたくないわけで、「自分でやらなければ」と覚悟も決まっていた。

 だからせめて自分のタイミングでトライさせてほしいと願っていた。


「じゃあ、いきますよ~」

「鬼畜か! 待って、薬の過剰投与は身体に悪いよ!?」

「大丈夫DEATHよ、この薬にそんな問題はありませんから。あと一回だけDEATHので頑張りましょう!」

「節々に死の文字を入れるな!」


 テイルの言葉が信用できない翔太は彼女の先ほどの行動を警戒しながら、再び目薬にトライした。


「……いいか、ぜっっったいに叩くなよ!? 絶対だぞ!? 絶対だからな!」

「それはフリですか?」

「違うから!」


 翔太の必死の訴えに、笑顔で返すテイル。

 そしてお約束通り、翔太は再び悶絶することになった。


 そんな目に熱湯をぶっかけられたかのような思いをしたが、そのおかげで新たな特質な才能(アビリティ)である、“才能発見(スポット)”の文字がカードに刻まれたのだった。


遅くなりました。今回はいつもより長めです。(というよりは、いつもこれくらい書ければいいんですが、作者の文章力にも限界が……)

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