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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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閑話 田舎者(凹)

※おことわり

この話はあくまでも都会育ちのキャラ(主人公)の主観に基づくものであり、必ずしも田舎だから悪いというわけではありません。田舎だからこそ良いところもたくさんあります。なので「自分は田舎出身だが?」と気分を害される場合がございますことをご留意いただいたうえで、この話をご覧ください。それと、作者も田舎出身なので許してください。

陣〇斗「慎重すぎんだろ!?」

 突然だが、翔太は都会育ちの人間である。そこまでのめりこんでいる訳ではないが、世間の流行にもそれなりに敏感であり、彼は少なからず都会の世俗に染まっていた。

 だからこそ、彼には言われたくない言葉がある。


    ◇◆◇


 それは翔太が門番にイエローフォレストでスケルトン以外にもレイスを見たと伝えた時のことだった。


「それで幽霊みたいなモンスターが出てきて……」

「……モンスター?」


 翔太が説明していると、門番は不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。


「えっ? あの、レイスっていう……」

「……あぁ! 死霊系魔獣のレイスのことですね」

「あ、はい。……なんだろう、この違和感は?」


 レイスの名前を出したことでようやく納得した門番を見て、翔太はなぜか円滑に進まない会話に違和感を覚えた。

 途中で引っ掛かった部分は「モンスター」と「魔獣」という言葉。翔太にとってはどちらも同じ意味なのだが、なぜか門番には伝わらない。


 この両者のすれ違いはいったい何なのか。その疑問を解決するために、翔太はテイルを呼んでいつもの二人だけのこそこそ話を始めた。


「あの、テイルさんに一つ質問があるのですが……」

「それは魔獣とモンスターの違いについてですか?」

「あぁ、それだよ! なんで門番さんに『モンスター』って言ってもすぐに理解してもらえなかったんだ?」


 察しの良いテイルに、翔太は意を決して尋ねた。

 すると彼女から返ってきた答えは、翔太の前提を覆すものだった。


「それは当然ですよ。……だってこの世界では『魔獣』という呼び方が一般的なのですから」

「……えっ?」

「むしろ『モンスター』と言われてすぐに分かる人はいません」


 翔太は唐突に突きつけられた事実に、まさに空いた口が塞がらなかった。

 彼は「モンスター」という呼び方が当たり前だと思っていたため、それを軽く全否定されたのだから、少しの間放心状態になってしまっても無理はないだろう。


 しかしここで翔太はなぜ自分が「モンスター」という呼び方を当たり前だと思ってしまったのかを思い出した。


「……いやでも、この世界で先に『モンスター』って言ったのはテイルだよな!?」


 そう、あれはまだアリスが仲間になる前の話、重装備の七人組を見た時にテイルは確かに「モンスター」という言葉を口にしていたのだ。

 しかしそんな事実を突きつけられた当の本人に動じた気配はなかった。


「そうでしたっけ? ……でも翔太様には『モンスター』って言った方が分かりやすいかなと思って……」


 翔太に追及されたテイルはいつも通り誤魔化すような口調だったのだが、途端にしおらしくなった。

彼女はその円らな瞳をうるうるとさせ、悪気はなかったと言わんばかりに翔太を見つめる。


 そんな彼女を見ていると、翔太はなぜか自分が悪いことをしているような気分になった。


「……そうか。俺のために……」


 その場の空気に流されて心が揺れ動いていた翔太だったが、ここであることに気づいた。


「……あれ? でもテイルって魔獣に関する説明をあまりしてなくね?」

「あら、バレちゃいました? ……でも翔太様には『モンスター』って言った方がわかりやすいかなと思って……」

「黙らっしゃい!」


 再びうるうるした瞳で翔太を見つめるテイルだったが、彼に二度目は通じなかった。


「ナビゲーターが説明を面倒くさがるな!」

「でも説明するとなると、魔獣の発生条件や生い立ちなど諸々を話さなければいけなくなりますよ?」

「……」


 翔太はテイルの本心を即座に見抜いた。

 しかし彼女の言葉から、如何にも長くなりそうな説明を聞く羽目になりそうだと思った翔太はほんの一瞬だけ苦い顔を見せると、そんな翔太の気持ちを察したのだろう、テイルは悪い笑みを浮かべた。


「話が分かる方は好きですよ」

「……まぁ、確かにいきなり小難しいことを言われても困るしな」

「ふふ、大丈夫ですよ~。後でちゃんと話すつもりでしたから」

「本当かなぁ?」


 一応、話の着地地点を見つけた翔太は未だに不安を抱えながらもそこで話を切り上げた。

 ただ、ここで翔太は新たな問題に気づいた。


「あれ? でも、それなら俺がこの世界の人間じゃないってことに気づかれたんじゃ……」


 翔太が言っているのは、この世界の人にとって聞き慣れない言葉を平然と使う者は明らかにおかしいということである。それが世の中の当たり前だと思い、多用しているならばなおさらである。

 しかし不安がっている翔太に対して、テイルは落ち着いた様子で彼の疑問に答えた。


「それなら大丈夫ですよ」

「……その根拠は?」

「きっと周りの方々は『モンスター』という言葉を、翔太様が住んでいた地域の言葉だと思っているはずですから」

「地域の言葉?」

「つまり、方言または訛りだと思っていることです」


 テイルの尤もな答えに、翔太は素直に納得した。冷静に考えてみれば、誰もこの世界とは違う世界があると言われても、すぐにそれを信じる人はいないだろう。

 それならば片田舎のマニアックな言葉の方がまだ現実味があるというものだ。


 ただここで翔太は気づいてしまった、思わず目を背けたくなるほど恐ろしい事実に。


「はっ! それってつまり、俺は……」

「田舎者と思われていますね、しかもガチ中のガチの」

「はっきり言うなぁー!」

「付け加えるならば、翔太様は周りの方々に常識知らずと認識されていますから、世俗にかなり疎い超田舎者という感じですかね」

「うああァ~!! やめてくれ~!」


 異世界人ということはバレていないという安心感と、全く不本意な誤解を今すぐにでも解きたいのに神に関することは話せないため誤解が解けないというジレンマに、翔太は何もできず現実から逃げるしかなかった。

 しかもテイルの嫌なところ強調してくる言い方は、彼の心に深く刺さった。


 しかしここで翔太はテイル以外、誰も自分のことをそんな風に言ってないことに気づいた。


 現に、翔太が門番とアリスの方を見るが、彼女たちは彼を小馬鹿にしたような目をしていない。むしろ彼女たちは「彼はきっとそういう人なのだろう」と納得している表情をしていた。


 翔太は思わぬところで触れた人の優しさに、思わず涙が出そうになった。


「……すみません。レイスという魔獣に遭遇しました」

「はい、分かりました。報告してくださってありがとうございます」


 テイルとの話を切り上げ、翔太は再び門番に報告をした。

 門番の先ほどと変わらない笑顔に感動したのか、それとも先ほどの現状理解がよほどショックだったのかは分からないが、とにかく翔太は今にも泣きそうな表情をしていた。


「……なんであんたは泣きそうなのよ?」


 翔太の感情が変な方向で暴走しているなか、そんな訳の分からない状態になっている彼を見たアリスはただただ、呆れていたのだった。


今回は閑話なので、前回の小まとめは次回の前書きに書きます。

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