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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第4章 死者の導き手編
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作業ゲー(楽)

小瓶の運搬の依頼を受けることにした翔太たちはソールという街へ行くことになった。ただその依頼はカヌチとソールの間にあるイエローフォレストと呼ばれる冒険者に嫌がられている森林を抜けなければいけない。

 手練れの冒険者でも一苦労するイエローフォレストの中で、翔太はあることを口にした。


「それにしても不気味な森だよな……」


 それは翔太が初めてイエローフォレストを見た時に感じたことだった。

 ただし、そう感じたのは大量のスケルトンが蔓延っているからでもなければ、方向感覚を狂わせるという特殊な環境だからでもない。


 それは森にある木々が元々そういう色をした種類のものと言うよりは、まるで何かに養分を奪われたからその色に変化したように見えたからである。

 もちろん、翔太にそう思った根拠はなく、彼自身もどうしてそう思ってしまったのか不思議でいたのだが、ただなんとなくそう感じたのだ。


 翔太がそんな意味合いも含めて言うと、それに対して返ってきた言葉は彼の想像とは異なるものだった。


「気を抜いてんじゃないわよ、翔太! 仮にも戦闘中なんだから……」

「そうですよ! 翔太様は言われたことをすればいいだけだから楽ですが、こっちは結構大変なんですから」

「……ちょっと話しただけで、そこまで言う?」

「緊張感を持てって言ってるのよ」

「……すみませんでした」


 周囲を警戒しているアリスとテイルに叱られた翔太はしょんぼりした様子で、とりあえず謝罪した。

 ただ、未だに元の世界の雰囲気が残っている翔太は周囲を警戒しながら歩くという、常に緊張感が漂う戦闘の空気に慣れることができなかったのだ。早く慣れなければいけないのは彼も重々理解しているが、「分かる」と「できる」は違う。

 だから彼も彼女たちの言い分に納得し、気まずい空気に耐えながら前進した。


 そんな翔太たちは現在、イエローフォレストを二時間ほど進んだ場所にいる。


 当初の予定通り、秋を告げるかのような色合いを見せるイエローフォレストに、日が沈む前に到着することができた翔太たちはその場所の手前で一晩過ごし、次の日の朝にイエローフォレストに入ったのだ。

 イエローフォレストのエンドレス地獄についてギルドの受付嬢から聞いていた翔太は、そうならないためにもイエローフォレストに入る前に自分の能力で何ができるかを必死に考え、シミュレーションをした。

 それほど翔太はイエローフォレストを警戒していた。


 しかし実際に入ってみると、翔太が思ったことは「作業ゲー」の一言だけだった。

 なぜそう思ったのか、その要因はいくつかある。


 まずは、翔太の“反射壁(リフレクション)”である。

 この特質の才能(アビリティ)は任意の場所に薄紫色の壁を出現させるという能力だが、この「任意の場所」というのがあまりにも便利すぎたのだ。


 具体的には、能力者である翔太が見えてさえいれば、そこに“反射壁(リフレクション)”を展開できるということ、つまり遠くにいるスケルトンたちを一方的に攻撃できるということである。

 もちろん、遠くに“反射壁(リフレクション)”を展開させるとその分精密性が落ちてしまうという欠点はあるが、それでも少し大きめに展開すれば問題なくスケルトンたちに当たる。


 中には盾を持っていたため“反射壁(リフレクション)”が直撃しなかったというスケルトンもいたが、そういう時は盾以外、例えば足などを狙って当てれば、衝撃で足の骨を砕くことはできる。

 その後に走って逃げれば、もはやスケルトンに追い付く術はない。

これは先制攻撃を当てたら即離脱するという、まさに翔太の理想的な展開だったのだ。


 次にアリスの防御である。

 言わずもがな、翔太は複数の能力を同時に発動させることができない。

だから翔太が遠距離攻撃を担当するとなると、彼は矢による遠距離攻撃の対応が遅れてしまうのだ。


 しかしここでアリスが煙魔法やナイフを使って飛んできた矢から翔太たちを守っているからこそ、翔太は遠距離攻撃に専念することができたのだ。

 別の状況で例えるのならば、遠距離での撃ち合いにおいて相手側が遠距離系の武器だけに対して、翔太たちはほぼ一撃で相手を倒せる上に盾も持っているといったところだろう。ほとんどワンサイドゲームである。


 そして何よりも大きいのは、テイルの誘導と索敵能力である。

 誘導に関して、テイルは未だに翔太に告げていないことがあるが、それでもちゃんと翔太たちをソールへと導いている。

 一見地味なことだが、彼女のおかげで翔太たちはイエローフォレストの最大の難関をクリアしたのだ。


 また、彼女は風の流れから近づいてくるスケルトンを事前に察知できるため、翔太はスケルトンが攻撃するよりも早く攻撃することができているのだ。

 しかも彼女はスケルトンが多くいる場所を避けて進んでいるため、翔太たちは余計な力を使わずに済んでいる。

 まさに、テイル様々である。


 これら3つの要因により、翔太たちはイエローフォレストを順調に攻略中だったのだ。


 だからこそ、翔太が気を抜いてしまう気持ちも十分理解できる。

 何せ、彼はテイルに言われた場所に能力を発動させるだけしかしていないのだから、それはもはや「作業ゲー」と何ら変わらない。


 そんな翔太の気持ちを察したのか、今度はアリスが口を開いた。


「……それにしても便利な能力よね」

「あれ? 緊張感はどうしたんだよ?」


 アリスの言葉に、翔太は揚げ足を取ったような口調で返事をした。


「まぁ、確かにさっきはあんなこと言ったけど、私たちはテイルの指示待ちだし……」

「そうですよ! 私がどんなに苦労しているか、お二人に分かりますか!?」

「そうだな。ソールに着いて依頼を済ませたら、その街の名物でも食べに行くか」

「やったー!! そうと決まれば早く行きましょう!」

「……単純な奴だな」


 翔太とアリスの会話に入ってきたテイルは、想像以上の労働に不満が爆発しそうになっていた。

 しかし翔太はそんな彼女の扱いが分かっているため、あっさりと彼女を宥めた。アリスもそんな彼らのやり取りを見て一息つけると、再び真剣な表情で周囲の警戒に戻った。


 そんな調子で、翔太たちはイエローフォレストを突き進んでいった。


 しかしこの時の翔太たちは知らなかった、この後にあんな強敵に出会うことを。


今回は短めです。

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