実験終了(眠)
翔太たちは無事壁際から脱出。そして翔太が全員にタオを倒す作戦を全員に伝える。
先ほどの不祥事に対して、翔太はまるで何事もなかったかのような真面目な表情で作戦を全員に伝えた。ただ、そこで待ったがかかる。
「さっきみたいなでかい煙幕はあと1回ぐらいが限界ってところよ」
翔太の作戦を聞いた全員が互いに思ったことを話し、内容を再確認している時、アリスが小さく手を挙げて主張したのだ。
アリスの魔石による煙の魔法は本来、ピンポイントで小規模の煙を発生させ、個人もしくは少数に対して使うものである。また、一時的だが煙の形を作り固定できるため、軽いものならば掴むこともできる。
しかしその場全体を覆うような大規模の煙を発生させるにはそれ相応の魔力が必要になる。精密な魔力制御は必要ないが、当然回数にも限界がある。
「ということは作戦は1回きりということですか」
「じゃあ、なおさら成功させなきゃな」
「翔太君は前向きだね」
「いや、こうでも言わないとプレッシャーが……」
「あ……なんかごめんね」
「まったく、さっきもだけどなんか締まらないわね、翔太は」
「さっきのは関係ないだろ! ……多分」
エミルがアリスの言いたいことをまとめると、翔太は力強く答えた。その様子を見たハルトは翔太の心構えに感服したのだが、それがポジティブシンキングという名の痩せ我慢だと知ると、なぜか悪い事をした気分になった。
そんな翔太を見たアリスは先ほどの不祥事(無意識の駄洒落発言)のことを蒸し返す。当然、翔太は即座に否定したが、その口調には少し自信がなかった。
翔太たちがそこまで話した時、タオもゆっくりと起き上がってくる。タオが今まで何を考えていたのか分からないが、それでも翔太たちはゆっくり呼吸を整えると再び力強い目でタオを見つめた。
チャンスは1回しかないという状況で開き直ったわけではないと言うと嘘になる。しかしその1回が翔太たちに今まで以上のプレッシャーだけでなく、それ以上のやる気を与えていた。
タオを倒し、なおかつ全員が無事に生還する――そのために今、全員は覚悟を決めた。
「さて、攻守交替といこうか!」
翔太の宣言と共に、翔太たちは猛然とタオに向かって駆け出した。
◇◆◇
一方その頃、タオは先ほど倒れてから起き上がるまでの間ずっと考え事をしていた。それは翔太たちをどうするかということではなく、今までの一連の動きの再現をしたものである。
今のタオは無防備も同然なのにもかかわらず、その思考だけが先走り、現状を全く気にしていなかったのだ。
しかしそんななかでも鎮静剤がキッチリ仕事をする。無理やり鎮静化されたタオは熱中していたことに水を差されたような気分になり、ひどく気分を害した。しかしあえてそのまま何も考えず、黙っていることにした。冷静になった際に現状を思い出したため、心の中に今なお高ぶっている興奮を抑えることを優先したのだ。
そして少し時間をかけて落ち着いたところで、週初めで仕事に行くのがだるいと感じる社会人のように、少し嫌な気分なままゆっくりと起き上がった。
そこでようやく翔太たちが自分の方へやって来ていることに気づく。
翔太たちの希望を含んだ目と力強い意志を感じる足取りから、タオは翔太たちが何か仕掛けようとしていることにすぐに気づいた。完全に出遅れたタオは一瞬、判断に困ったがすぐに結論を出した。
それが自分らしくないことは重々承知している。しかし今更考えて何ができるのかと考えた時にはもうそれ以外の考えが浮かばなかったのだ。
タオの考えとは、行き当たりばったりで対応することである。考えとは言えない考えだが、あえて自分の土俵から出て行くという、翔太が最も予想できないことだと考えたからだ。
――そんなタオの思惑は吉と出るか、凶と出るか。
◇◆◇
翔太たちはもうすぐタオの所に辿り着くという位置までやって来ている。翔太はタオが牽制のために己の肉体を引き千切り投げつけてくると考えていたが、タオが何もしてこなかったため、少し困惑していた。
しかしタオが真正面から受けて立つというのならば、それはそれで好都合だった。
「じゃあ作戦通りに頼む!」
「了解! これが最後の特大煙幕よ!」
翔太の合図でアリスはタオの周囲に、タオの胴の半分くらいまで隠れるほどの規模の煙を発生させた。そして翔太たちは迷うことなくその煙の中に突っ込むと、即座に作戦通りに動く。
タオは突然出現した煙に対して今までの翔太たちの動きの中では定石通りの動きだと判断しつつ、いくつか予想をたてた。その中で可能性が高いと考えたのは煙に乗じてハルトが不意打ちを仕掛けるというものである。
この状況でタオが最も嫌なことは、確実に自分にダメージが蓄積していくことである。何しろ、この状況は確実に攻撃を当てられるうえに逃げやすいうえに、仲間のサポートも受けやすいとハルトにとって好条件が揃っている。それに加えてイレギュラーの塊とも言える翔太までいるとなると、タオにとっては悪いこと尽くしである。
そう考えたタオは一刻も早く煙を掻き消そうと腕を振るおうとする。相手に有利なフィールドを先に潰すというのは戦いの常套手段である。
しかし当然それは翔太も予想済みである。
タオが動き出すタイミングを見計らったかのように、翔太とハルトが突然煙から姿を現した。“反射壁”を足場として出しては消してを繰り返し、二人三脚のように息を合わしてタオの方へ駆け寄って来ていたのだ。当然、タオにも動揺が走る。
タオは翔太の狙いが自分たちを囮にすることで煙幕という自分たちの生命線を守ろうとしているということはすぐに察しがついた。しかし問題なのはハルトが一緒にいることである。
翔太だけならば、その意図を読んだうえで「ざまぁみろ!」という意味も込めて、攻撃するよりも先に煙を晴らそうとしただろう。しかし決定打になりうる攻撃力を持っているハルトがいることで、タオもそう簡単に翔太たちのことを無視することができなくなっていたのだ。
しかし翔太たちが姿を現したのは悪い事だけではない。何しろ特に警戒していた2人が同時にやって来たということは、ここで仕留めることができれば目の上のたん瘤もきれいさっぱり消えるということである。
翔太たちの囮というのはタオにとってそれほど魅力的だったのだ。戸惑っていたタオだが、そう考えると癪だと思いつつも翔太たちに狙いを定めることにした。
タオは片腕で胸から顔の部分を覆うように防御しつつ、もう片方の腕で目の前にいる翔太たちを攻撃した。あくまで防御を優先しているため攻撃の姿勢は悪く、上手く力を乗せられないため打撃も手打ちになっている。しかしそれでも翔太たちを吹き飛ばす威力は十分にある。
もちろん、タオにとって吹き飛ばすというのは比喩的表現ではない。たとえハルトに攻撃を防がれたとしても、それはむしろ好都合というものである。それはタオの中で相手に有利なフィールドで戦うということに強い抵抗があったからだ。だからタオは考え直し、翔太たちの相手はするがそれでも煙を晴らすことを優先したのだ。
より大きな不安の芽を先に潰すことにしたタオだが、その作戦は翔太たちがタオの攻撃を正面から受けた時の場合の話である。
タオが攻撃した瞬間、タオの胸の辺りの高さにいる翔太たちの足場になっている“反射壁”が突然消失し、翔太たちは空中に放り出された形になった。タオもなぜこのタイミングでという驚きもあったが、その時点ではもう攻撃を中止することはできず、そのまま真っ直ぐ拳を突き出した。
驚きから立ち直るまで0.5秒もかかっていない。しかしその瞬間、翔太たちはタオも予想していなかった行動を起こしていた。それは“反射壁”が解除される少し前、翔太がその場でジャンプしたことから始まる。
「それじゃあお願いします、ハルトさん!」
「あぁ、任せてくれ!」
翔太はハルトに呼びかけると、ハルトの大剣の腹の部分に着地した。そしてハルトは翔太が着地すると同時にホームランのように盛大に翔太をかっ飛ばしたのだ。猛烈に撃ち出された翔太はあっという間に天井近くまで到達し、タオを見下ろすような位置取りに着いた。
翔太としてはその後にやってきた浮遊感に懐かしさと嫌な思い出が過ぎり、内心複雑な思いを抱いていたが作戦通りだと満足している。
一方、タオはあまりの出来事に開いた口が塞がらないという状態だった。その証拠に少しの間、ただ黙って翔太の方に視線を向けることしかできなかったのだ。ハルトとしてはそんな隙だらけのタオに追撃したい気持ちもあったが、それは作戦にはないことであるうえにタオに向かって跳躍するための足場もない。
ハルトがそのまま静かに煙の中に落ちていくのを視界の端で捉えたタオはそこでようやく気を取り戻すと、歯痒い思いをしながらも苦し紛れに蹴りを放つ。規格外の動きを見せる翔太の姿を捉えつつ、煙で姿を見失ったハルトを攻撃するにはこれぐらいしか手が思いつかなかったのだ。
しかしその時、煙の中で声が聞こえてくる。
「正面! 右足での蹴りが来るわ!」
「……くそ!」
聞こえてきた声はアリスのものである。今回の作戦でのアリスの役割は2つ、1つは煙幕を張ること、もう1つは翔太たちが見えなくなっている部分、つまりタオの下半身の動きを翔太たちに知らせることである。アリスはタオには見えにくい位置でその動きを観察している。
その警告とエミルのサポートにより、ハルトはタオの攻撃を難なく躱し、無事着地することができた。タオには何かが足に当たった感覚も、蹴り上げた方向に何かが吹き飛んだ様子も感じ取れなかったため、攻撃が当たらなかったということを察し、またしても歯痒い思いをすることになった。
これによりタオは見える脅威と見えない恐怖に挟まれたことになる。何をしてくるか予想できない翔太に頭上という死角を取られ、たった一撃で逆転できる可能性を秘めているハルトが姿を隠し、近くに潜んでいるという状況はタオにとってまさに最悪の状況といえるだろう。
そんな状況でタオが狙いを定めたのは、落下しながら近づいてくる翔太だった。タオがハルトの一撃を警戒しているのは事実である。しかしそれはタオの本体がいる黒い球状部分に当たった場合の話である。たとえこの攻撃で下半身に隙ができ、その結果足の一本が切り飛ばされたとしても、今のタオにはさほど被害はない。
正面から戦えば、タオにとってハルトも大きな問題ではない。それを問題としなければいけない状況にしている元凶とも言える存在が翔太である。タオはハルトと翔太、どちらに隙を見せた方が厄介なのか、何をすれば相手により大きなダメージを与えられるかを考えた時、翔太を先に潰したほうが良いという結論に達したのだ。
タオは顔面部分の防御を崩さないまま、伸ばした腕を戻さずに虫を払うように翔太を叩き落とそうとした。ただ、そんなタオの行動も予想済みと言わんばかりに翔太も動き出す。
「“物体引力”!」
その時、翔太の声と同時に、黒い部分の中にいるタオにも異常が発生した。正確にはタオの衣服が突然何かに吸い込まれるみたいに引っ張られ始めたのだ。今のタオは腕が内部とくっついているためその服を脱ぐことがないため、そのうちビリビリと服が破けそうな音が聞こえてくる。
その時、服にかかる全体の力が翔太のものを超えた。
その瞬間、翔太の身体はタオの方へと引き寄せられる。翔太が再び空中で物理を無視するような動きを見せたため、タオの攻撃は目算がずれたように虚しく空を切った。
翔太が能力の対象にしたのはもちろんタオの服である。翔太も空覚えだったが、タオの身体に異変が起こる直前、確かに翔太はタオの胸倉を掴んでいた。翔太もタオの「衣服の乱れを直せない」という発言が無ければ、こんな事は思いつかなかっただろう。
しかし翔太が突飛なことをするのを理解していたタオに動じた様子はなく、むしろ翔太から近づいてきたことに内心笑みを浮かべていた。
今のタオは先ほどまでとは違い、攻撃よりも防御を優先している。もしもの時のために残していた腕が功を奏し、タオは大きく掌を開いて門を閉じるように真正面から向かってくる翔太を受け止めようとした。そして遅れながらも攻撃に使用していた腕も自分に引き戻すことで、翔太を挟み撃ちにした。
しかしその時、タオにさっきとは異なる異変が起こる。それはタオの防御していた方の手が翔太を迎え撃つ前にその動きを止めたのだ。もちろん、このタイミングでタオの身体が不調になったというわけではない。その答えはタオの親指部分にあった。
そこにあったのは正方形に近い形をした薄紫色の物体。タオは一瞬、それが何か分からなかったがすぐに理解した。
「“反射壁”か!?」
それはエミルが発動させた“反射壁”だった。ただしそれは掌の前ではなく、親指に引っ掛かるように展開されていた。
“反射壁”は展開された直後は前方に押し出すような動きをするが、その後はその場に固定される。翔太はその特性に注目したのだ。
タオの掌に引っ掛けて発動させるには、“反射壁”では面積的にも耐久度的にも不可能である。しかし指ならば話は別である。たとえ相手との力の差が圧倒的だったとしても、指ではその力を十分に発揮できない。指は人体には重要なものであるが、弱い部分でもある。
現に力で勝っていたタオだが、エミルの“反射壁”をすぐに壊すことができなかった。そのためタオは門を閉じ切ることができず、翔太は無事そこを素通りすることができた。エミルはそのまま“反射壁”を全力で維持するために力を注いだ、自分の役割を果たすために。
「くそ! またやられた……」
翔太に出し抜かれたと思ったタオは苦虫を潰したような表情で向かってくる翔太を睨みつけた。
一方、翔太は作戦が順調に進んでいるため、まもなくタオの本体がいるところに到着するという距離までやって来ていた。その直前で翔太は“物体引力”を解除し、残った運動エネルギーだけで前に進んでいく。
「ふ~……“反射壁”!」
今度はタオにぶつからないようにするため、翔太はできる限り柔らかい“反射壁”
を出そうと一度呼吸を整え、精一杯イメージして発動させた。しかしそれでも若干硬いものが発現する。
「ぐっ! けどこれで……」
翔太は斜めに展開した“反射壁”にぶつかった衝撃で思わず苦痛の声を漏らすが、それでも歯を食いしばり痛みに耐えると、落ちないように全力で“反射壁”を駆け上がった。
その時、翔太は無意識のうちに笑みを浮かべていた。作戦が上手くいったことへの気持ちがつい表面に出たのだ。当然、翔太の行動を目の前で見ていたタオにもその笑みが目に入る。翔太に挑発する気は全くなかったが、その笑みがタオをさらに焚きつけた。
「頭の上に!?」
「よし……登頂成功!」
そして翔太はついにタオの頭のてっぺんに辿り着き、振り落とされないようにタオにしがみついた。その際、タオの仮初の身体からは微弱だが体温と鼓動のような脈拍を感じた。気味が悪いと感じた翔太は早めに作戦を次の段階に移行させる。
「今だ!」
翔太は大声で合図すると、タオの頭上から身を乗り出した。それに対して、翔太が頭上という死角にいるためその動向が分からないタオはその合図に過敏に反応した。“反射壁”に捕らえられていない方の腕で翔太を叩き落とそうとしていたタオだが、それを中止して周りを警戒する。
この状況でまず最初に思いつくのは翔太を囮役にして死角もしくは多方面からの攻撃である。そう考えたタオはすぐに本体である黒い球状部分を庇うように防御態勢を取った。両腕を交差させ、背中を少し丸めたタオは正面や左右からの攻撃に備える。
しかし想定していた攻撃は全く来ない。それどころか腕の隙間から見える範囲にある煙の動きが乱れる様子もない。
「……何も起きない?」
想定していた衝撃が来ないことに疑問を持ったタオは一瞬、防御を解こうとした。しかし翔太があえていったん間を外してから仕掛けることも十分ありえる。それでもこれがフェイントの可能性があると考えるが、未知と不安による恐怖からタオはどうしても防御を解くことができなかった。
しかしタオはこの困惑している時間が致命的なミスになっていることにまだ気づいていなかった。
さらに警戒を強めようと思ったタオだったが、突然タオの目の前の景色が大きく変わる。今までは黒い部分の内部はモニターの画面のようになっており、そこから外の景色を窺っていた。しかし突然その黒い部分がひび割れ、外からの光がタオに差し込んだ。その光に目が眩むと、そこから何者かが内部に侵入する。
「何だ!? 何が起こった!?」
「ようやくご対面だな……ってか思ってたよりすごいことになってるな」
「翔太君か!? いったいどうやって……」
ひび割れた部分から侵入してきた翔太はタオに向かって思ったことを素直に言った。何しろ今のタオは両手両足がその空間内から伸びている触手のようなものとつながり、ほとんど同化していたのだ。一瞬、本当にタオが人間をやめたと勘違いした翔太は内心、かなり驚いていた。
それに対して、タオは翔太のそんな軽口に反応する余裕はなかった。黒い部分は身体の表皮と比べれば頑丈ではないが、翔太の力では突破できないのは既に確認済みである。しかしタイミングを見計らって侵入してきたことを考えると、翔太たちの仕業なのは明白だろう。
だからこそ謎だった。ここを破れる可能性があるハルトは最初以降、姿を見せていないのにどうしてなのか、それともハルト以外にもここを破れるほどの力を持っている者がいるのか。疑問に疑問を重ね続けていたタオには軽いゲシュタルト崩壊が起こっていた。
その答えを知る翔太は「してやったり」と言わんばかりの表情をしている。もちろん、黒い部分を壊したのは翔太ではない。翔太が行ったのは攻撃の誘導である。
翔太が合図した時、真っ先に動いたのはハルトである。ハルトはその瞬間、翔太とタオからは見えない煙の中で翔太の指示通りに地面と平行になるようにタオに向かって大剣を全力で投げつけた。そして身を乗り出した翔太は合図を出してから“物体引力”を発動させたのだ。
ここで翔太が合図と同時に発動させなかったのは、ハルトが投げたタイミングと同時に起こしては平行に投げた意味がないからである。
ハルトが投げた大剣は当然“物体引力”により翔太の方に引き寄せられる。ただ、その発動させたタイミング、正確にはそのタイムラグによって結果は大きく異なってくる。
ハルトの大剣がタオの足に当たる瞬間、能力により大剣は大きく向きを変える。そして移動方向が変わった大剣はタオの身体を這うように真下からその姿を現した。仮に投げるのと同時に発動させていた場合、大剣はタオの正面に飛び出してしまう可能性があり、そうなれば間違いなく弾かれていただろう。死角から死角へと移動し、飛び出してきた大剣はタオの防御をすり抜け、黒い部分に向かって飛んで行ったのだ。
翔太の工夫はもう1つある。それこそが翔太が身を乗り出した理由である。
たとえ翔太がその場から動かなくとも、大剣は確かに黒い部分に刺さっていただろう。しかしそれだけではタオにはダメージはなく、大剣もそのまま刺さったままになるためハルトも武器を失うことになる。
翔太が狙っていたのは黒い球状部分のさらに最も突出している部分である。そこを貫通する軌道に乗せるために翔太は身を乗り出して角度を付けたのだ。そう言った意味では黒い球状部分を破壊すると言うより、その一部を削ると言った方が正しいだろう。
それにより大剣は突出している部分を見事に貫通し、穴を作った。もちろん翔太は大剣が当たる直前に能力を解除しているため、大剣は破壊した部分と共に落ちていき、翔太に刺さることはなかった。
そして翔太は“反射壁”で足場を作るとその穴へ飛び込み、今に至るというわけである。
「いったいどうやって……」
「悪いが、説明する気はないぜ」
「何だそれは? やめ……」
「これで実験終了だ……静かに眠ってろ」
タオの言葉を遮った翔太はそのままアリスから手渡された薬を抵抗できないタオに吹き付けた。効果は覿面のようでタオはすぐに意識を闇に落とした。
「これで俺たちの勝ちだな。それにしてもおっかねえな、これ。……当分は粗相をしないように気を付けよう」
翔太は薬の効果に感心する反面、内心ではこれを所持しているアリスに当分は失礼のないように行動しようと固く誓った。
しかしこの時の翔太は気づいていなかった、タオの想定以上の力と破壊により地下施設が悲鳴を上げていたことに。
読んでいただきありがとうございます。
まだ書き方に慣れていなくて、手探りしながら書いているって感じです。なのでまた書き方が少し変わっていますが、慣れていないんだな~と温かい目で見ていてください。
後、前回の時に章管理しました。なんか名前負けしているのもありますが、そこは気にしないでください
こんな自分ですが、これからもよろしくお願いします。




