二段構え(外)
“反射壁”破られて、完全包囲される。そんななか自分を庇うエミルの姿を見たハルトがトラウマを思い出すが、乗り越える。反撃のチャンス到来
複数の骨折により弱々しく、経っているのが精一杯という様子の狼たちは動かない箇所を引きずるようにして後退していく。
「翔太君、さっきはありがとう。……それとごめん」
「気にしないでください……って言っても無理ですよね。なのでその分お願いします」
「分かった、僕にできる事なら何でも言ってくれ!」
ハルトとしても一言翔太に謝りたかった。何しろ翔太は自分を庇ったせいで負わなくてもいい怪我を負ったのだ。さらに今まで多大な迷惑をかけたことを気にしていた。アリスがそんな翔太の傷口に布を巻き付け、応急処置のようなものを行っている姿を見ればなおさらである。
翔太としてもハルトの変化に内心かなり驚いていた。それほどまでに今のハルトは自信に満ちていた。だから同じ冒険者で頼れる先輩に一言お願いしたのだ。
「……ハルト、私はもう大丈夫ですから、その……」
「えっ? あ……ご、ごめん!」
そんな翔太の言葉に力強く頷くハルトは今一度自分を鼓舞した時、隣から少し小さめの声が聞こえる。ハルトはその聞き慣れた声がした方を見ると、そこには頬を赤らめているエミルがいた。何しろエミルは今までハルトからこんなに強く抱きしめられたことがなかったため、今の状況でどう接していいのか分からなかったのだ。そんなエミルを見てハルトは顔が真っ赤になり、慌てて手を離す。
そんなハルトの姿を見て、翔太たちは見慣れたハルトに戻った感じがして少し和んだ。それと同時に、男が物事に夢中になっていて女の存在を忘れるという光景をどこかで見たことがあるなと翔太はなぜかデジャブを感じていた。それが何か思い出せなかった翔太は何の意味もなくアリスの方を見ると、アリスと目が合った。アリスはすぐにそっぽを向いて目線を逸らしたが、翔太は確かにアリスの顔が真っ赤になっているのを見た。目の前の少女漫画のような出来事を見て顔を紅く染めるアリスを見て、なんやかんやでアリスも女の子だなと思った翔太は優しく微笑んだ。今の翔太たちはここが敵地で、しかも今が正念場であることを完全に忘れていた。
「何をしているお前たち! さっさと片付けろ!」
タオはその場に響くほど声を荒げた。その声には今までで一番強い怒りが分かりやすいほど伝わってくる。
タオにとって自分の考えがここまでうまくいかなかったことは今まで一度もなかった。少し高い壁にぶつかることは多々あったが、それでも以前のタオならそれもまた一興と嬉々として超えるための努力をした。しかし今はただ怒りしか感じていない。楽しみにしていたものがやっと手に入ると思ったのに中々手に入らず、未だに無駄な抵抗を続ける翔太たちと、そんな者たちをすぐに捕まえられない無能な狼たちにひどく腹を立てていたのだ。
タオのそんな声で翔太たちは現実を思い出し、再び武器を構え直す。そして翔太は周囲を見渡し、すっかり冷えた頭で観察する。先ほどならば、狼に囲まれている状況は変わっていないため未だに自分たちが不利だと考えていただろう。しかしよく見ると、ハルトが先ほど撃退した狼たちはゆっくりと後退していたため、見かけだけの包囲となっていた。
傷を負った彼らは戦闘用の強い狼たちである。その時点で相手の戦力は落ちていると判断できる。さらにその狼たちを見ていた警護用の狼たちにも襲いかかってくる気配を感じなかった。しかしそれも無理はない。何せ自分たちより強い者をあっさりと蹴散らす相手を見て何も感じない生き物はいない、ましてや知性があるならなおさらである。
「お前も動くな。次、動いたら当てるから」
突然ハルトが大剣を地面に刺し、空いた片手で懐の短剣を投げつける。投げつけられた短剣は何かをしようと動き出そうとしていたタオの鼻先をかすめ、壁に突き刺さった。タオはそんなハルトを恨めしそうに見つめていた。おそらく狼たちの心情を理解していたタオは眠っているゴーレムたちを起動させようと動こうとしたのだが、ハルトはその動きを見逃さなかった。ハルトも周りがよく見えている証拠である。
「おっもい! 何だこれ、全然持ち上がらねえ!」
そんなハルトを頼もしいと思いながら、地面に突き刺さったままの大剣を渡そうと引き抜こうとした翔太だったが全くびくともしなかったため、つい驚きの声を上げた。両手で持ち上げようとしても、少ししか持ち上がらない。あまりの重さに腰が抜けそうになっていた翔太をよそにハルトは片手で簡単に持ち上げた。正確な重さは分からなかったが、50㎏はある大剣を軽々持ち上げるハルトを見た翔太はハルトと初めて出会った時にも思った疑問、ハルトのその細い腕のどこにそんな力があるのか不思議でしょうがなかった。
そんな翔太を見て苦笑いをしているハルトだったが、まるで隙がないためタオも動けずにいた。しかしタオもこのままではまずいことは理解している。だからこそ使いたくはなかった手の内の1つを使わざるを得なかった。
タオは翔太たちから見えないようにしながら片手で隠し持っていた起動装置のスイッチを押した。それは訓練所にいる巨大なゴーレムを起動させるものではない。そもそもあのゴーレムたちは半分以上が抜け殻状態であり、まだ試作機の段階のものであるため実践投入できる代物ではなかった。タオが起動させたのは翔太たちが対峙したことがある、大きさ8mほどのゴーレムである。ここに待機させている成功体の5体全てを起動させたのだ。ただタオとしてもその5体だけで相手をする気は最初からない。
先ほどの戦闘でハルトの力を知ったタオは、翔太たちとハルトを切り離す作戦を考えていた。今までの行動から戦力分析をしてみて、ハルトの攻撃は驚異的だが一撃一撃が大振りになりがちである。だからその一撃を防げる盾役にゴーレム3体とハルトの攻撃の隙をついて攻撃する襲撃役に無傷の戦闘用狼数匹を割り当てる。それに対して、翔太たちは連携をかき乱したところを数で攻めれば押し切れるため、残りのゴーレム2体と狼たちで問題なく対処できると判断した。タオの頭の中には自身の防御のことなんて全くなかった。あるのはただ純粋に完全決着、それだけだった。
タオが起動させたゴーレムたちが壁から次々と出てくる。そして出現したゴーレムたち5体とまだ余力が残っている狼たち総勢20匹ほどがタオの前に集まる。それが今のタオの全戦力である。タオもまさか全戦力を投入しないといけない状況になるとは思っていなかったため、少し不愉快そうな表情をしている。何せ全戦力を使うということは少しの間とはいえ今後の資料集めに使える人材が減るということ。それはタオにとって本当に不本意だったのだ。
それでも悠然と闊歩するゴーレムたちの存在は実際の数以上の戦力を感じさせる。ましてや翔太たちにとっては1体だけでも苦労した相手、その力を知っている分かなりまずい状況だということがよく分かる。
しかしそれは正面から戦った場合の話である。あの翔太がそんなことをするはずがないというのはその場にいた全員が予想していた。そしてもちろん、翔太は初めからタオ1人だけを仕留める気満々である。そのつもりで頭を必死に働かせ作戦を考える。
「左の3体は大剣を持つ少年を、残りはその他の者を狙え!」
雌雄を決する戦闘の開幕は唐突に、タオの怒号にも似た指示が合図となった。その指示を聞いたゴーレムたちは腕を振りながら人間味を感じさせるような走り方で翔太たちの方へ猛然と向かってくる。その走り方にはぎこちなさを感じつつも、かなりの速度である。さらに翔太たちの足場には転びそうになるほどの強い揺れが伝わってくる。それはそのままゴーレムたちの存在を強く感じさせる。
しかし翔太はタオの言葉を聞き逃さなかった。それはタオがゴーレムたちのことを何体と表現したこと。最初は彼らのことを人だと自分で定義していたのに、今の表現は明らかに人に使うものではない。翔太はタオの本性が垣間見えた気がしたのだ。そして何より先ほどまであれほど気にしていた上っ面を今は気にしていない、つまりタオも感情的になっているということである。それだけでなぜかちょっとだけ優越感を感じた。今度こそ速攻で勝負をつけるために思いついた作戦を全員に伝える。
「じゃあ、作戦通りお願いします!」
「「「了解!」」」
翔太が伝え終わる頃にはゴーレムたちが中間距離ぐらいに到達していた。その時、突然大量の煙が彼らを包み込んだ。しかし足場の揺れの強さは先ほどと全く変わっていない。それは彼らが突然の煙を全く気にも留めていない証拠である。
彼らの身体は鎧のような頑丈さを持ちながら、万が一破壊されてもその箇所はすぐに直すことができる。さらに身体が土で出来ているため毒も効かない。そんな彼らに恐れるものは何もなかった。しかし狼たちは先ほどこの煙を利用した翔太の策にはまったことがあったため、その場で足を止め周囲を警戒している。
そのため5体のゴーレムだけが煙の中から姿を現した。そこで翔太とアリス、エミルの3人の姿を視認したゴーレムたちは翔太たちめがけて加速した。しかしハルトを倒すようにと命令された者たちはハルトがいないことに驚き、その足を止めていた。その瞬間、翔太がゴーレムたちに向かって走り出す。翔太のその行動に流石のゴーレムたちも全員が翔太に注目して警戒したが、それでも問題なしと判断して足を止めることはなかった。
その時、そのまま構わず突き進んでいた先頭にいたゴーレムの出足に突然“反射壁”が展開される。それにつまづいたゴーレムは前方に進む巨大な運動エネルギーに耐えることができず、前につんのめった。しかしそれだけならもう片方の足を前に踏み出して身体を支えれば倒れることはない。当然ゴーレムもそうしようと足を前に出した。しかしその瞬間、その足にも“反射壁”が展開される。それにより重心がかかった片足も払われ、体勢が大きく崩れたため横向きに派手に転んだ。突然そのゴーレムが倒れたことで、隣にいたゴーレムは反応することができず足が胴体に引っ掛かったため、倒れたゴーレムの上に重なるように倒れた。
使い慣れた人間の身体ならば、突然隣の人が転んでも止まったり、避けたりすることもできるだろう。しかしゴーレムの巨大かつ重心が普段と違う身体は、単純な動きでも動くのにそれなりの苦労が必要だろう。それはどんなに優れた反射神経や感覚をもっていても、そんな身体では突然の出来事に対応できないということである。事実、転んだゴーレムたちは起き上がる事でさえ苦労しているようだった。
派手に転ばされたゴーレムたちを見た他のゴーレムが動揺して動けなかった時、一番端にいたゴーレムも横からの強い衝撃に襲われる。その攻撃をしたのはもちろんハルトである。彼らがハルトの存在に気づくことができなかったのは、先に動いた翔太の存在が身を隠していたハルトの存在をさらに隠していたからだ。そして突然の出来事で動揺していた彼らはハルトの存在を完全に忘れていた。
ハルトの一撃で身体がぐらついたゴーレムはうっかり隣のゴーレムによりかかってしまう。しかし隣にいたゴーレムは何とかそれに対応して倒れないようにしっかりと支えた。ただその瞬間、踏ん張っていた足の膝裏が何かに小突かれ体勢を崩してしまう。その何かとはもちろん“反射壁”である。そしてさらに隣にいたゴーレムはドミノ倒しのように倒れてくる2体のゴーレムたちに気づくのが一瞬遅れて回避ができなかったため、1体目と同様に支える形になってしまった。
その状態を見てアリスとエミルも動き出し翔太とハルトに合流すると、ゴーレムたちの隣を通ってタオの方へ進んだ。通り過ぎる際、忘れずに支えているゴーレムが体勢を崩すように“反射壁”を展開しておく。それによりこちらも先ほどの2体と同様に大きな音を立てて転んだ。
彼らが本物のゴーレムだったならば仲間に何かが起こっても足を止めず、命令に忠実に従って翔太たちを攻撃していただろう。しかし彼らは人間であり、人間と同じ行動を取る。皮肉にも人間だったからこそ隙ができてしまったのだ。
しかしいくら彼らに隙があったとしても、それを突くことができなければ意味はない。やはりエミルの遠方からのピンポイント発動、ハルトの剛撃、そしてアリスの支援が無ければこの作戦は成功しなかっただろう。その点を踏まえて翔太は本当に今更だが、信頼している仲間と戦う強さと頼もしさを知った。
「エミルさんとアリスはさっき言った通り、ここで狼たちの相手をお願いします!」
「「了解!」」
「じゃあ行きますよ、ハルトさん!」
「うん!」
作戦の最終確認をした翔太はそんな彼女たちを信じてハルトと共に煙の中を突き進んだ。しかし突き進むといっても、実際は翔太の“反射壁”を足場として使い、ある程度進んだらジャンプする。その間にいったん“反射壁”を解除して、再び着地先に展開して先に進むということを繰り返すことで地面に降り立たないようにしながら先を進んでいる。少しでも力を温存するためである。
この作戦は翔太とハルトが全力で狼たちとの戦闘を避けて、2人がかりでタオを倒すというもの。エミルとアリスは2人がタオに集中できるように狼たちを引き付けておく役目である。しかしエミルとアリスだけでは全ての狼たちの相手をするのは難しい。必然、翔太たちは速攻で決着を付けなければいけなくなる。
「タオ、決着をつけるぞ!」
「やはり君が来たか、翔太君! しかし君1人だけでは勝てないことはさっき証明したと思うのだが?」
煙の中から飛び出してきた翔太は片手にナイフと棒手裏剣を構えている。そんな翔太を見たタオは余裕の笑みを浮かべ、否定できない事実を指摘した。両者はそれを理解したうえで真正面に対峙している。
「うぉおおおお!」
翔太は全力で叫びながらタオに向かって走っていく。そんな翔太を見て、タオは腕をそれぞれゴーレムのものと狼の鋭い爪に変換させると、盾を持つように構えた。タオとしては翔太の突撃、もしくは飛び道具を弾きつつ少しずつ削っていき、翔太を制圧しようと考えている。正面からの殴り合いなら盾がある分、自分の方が有利という判断だった。
しかしその瞬間、翔太は全力で伏せた。その姿は人間より四足歩行で移動する動物に近い。予想以上の肩透かしを食らったタオは一瞬思考が抜け落ちた。タオは翔太が正面からこないことは予想していた、しかしそれは翔太が何かをしてくるという前提の話である。今の体勢の翔太にできる事といえば、龍のように口から何かを放出するぐらいしか思いつかない。
それでもあの翔太が自分の出鼻をくじくためだけの行動を取るはずがないと考えたタオは警戒レベルをさらに引き上げ、翔太の一挙手一投足を見逃さないために注視する。しかし次の瞬間、タオが視界の端に捉えたのは飛来してくるハルトの大剣だった。
翔太は煙から出る前にハルトにある頼み事をしていた。当初は2人がかりで戦う算段だったが、それをハルトは煙の中に待機に変更していた。そして翔太はタオの真正面に立ち、自分が叫んだら、ハルトの大剣をタオに投げつける作戦に切り替えたのだ。ハルトは翔太の案に最初は反論したが、最後は翔太の作戦を行っても修正ができる事を知ったため、その案を了承した。
タオはその瞬間、翔太が伏せた理由を理解した。叫び声をあげたのもハルトに合図すると共に飛来する大剣の風切り音を隠すためだということに気づいたのだ。音を隠すにはそれ以上の大きさの音を出すのが一番手っ取り早い。しかし今はそんな分析をしている場合ではない。あの大剣をまともに受けるのは得策ではない。仮にあの大剣を受け止めれば、その重量と速度により威力が増しているためゴーレムの腕でも防げない可能性がある。
しかしそんなことさえ考える時間もない。タオは体勢を崩しながらも間一髪、大剣を躱した。すれ違いざまの轟音が冷や汗が出るような恐怖を駆り立てる。翔太はその瞬間、タオが安堵した瞬間を逃さなかった。翔太はすぐさま立ち上がると、全力で走り出し手に持っていたナイフでタオの頸動脈を狙って切り付けた。翔太のなかでも既に覚悟は決まっていた。だからその時は躊躇することなく動けたのだ。しかしその刃がタオに触れることはなかった。
「何!?」
「君ならこうすると思ったよ」
タオは土壇場で翔太の作戦を看破し、翔太の攻撃をゴーレムの腕で防いでいた。そして翔太が動揺している隙に爪で翔太を刺そうとする。かなりぎりぎりだったが、間一髪“反射壁”が間に合い、翔太はタオの攻撃をなんとか凌いだ。そして“反射壁”によって止められたタオの腕を掴む。幸い、翔太とタオの筋力にあまり差がなかったため、両者は均衡状態となった。
「今のは完全に決まったと思ったんだがな」
「いや、正直なところ私もぎりぎりだったよ。さっきの大剣を躱した時、この安堵が私の油断となり、この油断が君の狙いではないかと思って念のため前方に盾を向けたら、案の定君がいたってわけだ。さっきのはかなり危なかったが、これで奇襲は失敗したわけだ。ここからの作戦はあるかな、それともこの近距離で私と殴り合うかい?」
翔太とタオは互いに仕掛けないまま、ゆっくりと立ち上がり体勢を整えた。タオとしてもこれが翔太を捕らえる最後のチャンスだと考えていた。しかしそう考えた時、翔太の背後にいたハルトが煙の中から飛び出し、翔太の方へ向かって来ているのが見えた。このまま合流されるのはまずいと考えたタオは翔太の攻撃を強引にはねのけると、即座にゴーレムの腕から狼の腕に切り替えた。その腕ならば最短距離を最速で突くことができる、それで自分の勝ちだと確信していた。
しかしその直後、背後から鈍い衝突音と骨が砕ける嫌な音がした。その衝撃により狙いがずれたタオの攻撃は翔太の頬をかすめていき、タオはその勢いで翔太にぶつかり、そのまま倒れた。何が起こったのか分からなかったタオはわずかに残る力を振り絞って振り返ると、腰のあたりに先ほど躱したハルトの大剣が深々とめり込んでいた。運が良いといって良いのか、タオに当たっていた箇所は大剣の持ち手の部分だったため身体は貫かれてはいなかったが、それでも骨折は免れないだろう。しかしなぜ躱したはずの大剣が誰もいないはずの背後からまた飛んできたのかタオにはそれがどうしてもわからなかった。
「な…んで?」
「今のは……俺の特質な才能だ」
翔太はタオと会話したとき既にハルトの大剣を対象にして自分に引き寄せる“物体引力”を発動させていた。その条件は既にハルトに大剣を渡そうと持ち上げた時に満たしている。わざわざ翔太がタオの真正面に立ったのは返ってくる大剣の軌道にタオを入れるためだった。
翔太は自分の行動の全てを警戒している相手にどうやって攻撃を当てるか頭を悩ませていた。そんな時思いついたのが、あえて初撃を躱させて意識の外から攻撃するという二段構えの攻撃だった。
今回の作戦で言えば、仮にその攻撃も避けられてもハルトに武器を返すだけなので最初の目論見通り、1対2で戦う流れを作ることができる。ハルトとしても最初は自分の主力武器を投げつけるということに納得できなかったが、翔太の能力で返ってくるということを聞いたため作戦を了承してくれたのだ。
タオは何とかして狼たちを呼び戻そうとしたが、翔太は“声質変化”でそれを妨害する。防御もしくは援護役を残しておかなかったことを後悔しつつ、苦虫を噛み潰したような顔で翔太を睨みつけるタオだが、手足の先まで痺れているような感覚があるため体が動かず立ち上がる事さえできなかった。ハルトの大剣が直撃したのは腰の辺り、間違いなく腰骨は折れているうえに身体の基盤となっている背骨にも何らかのダメージがあるだろう。
翔太は動きたくとも動けないタオの様子を見て勝利を確信するが、タオはそんな身体を必死に動かし、最悪手段を取ろうと懐に手を伸ばした。
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