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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第3章 人間の研究者編
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急な救戦(壁)

 フギリ大森林のとある場所、木漏れ日が差し込むことで緑という単色が様々な色を見せている場所を駆け抜ける二人分の足音と、時折森林の静寂に似合わないような轟音が聞こえてくる。


「このまま進むと街道に出ちゃうよ、エミル!」

「そんなこと分かってます!しかし私とハルトの二人だけで『あれ』を相手にするのは流石に厳しいです!」


 走りながらそんな会話をする二人が言う「あれ」とは、逃げる二人を追いかけ、拳を振り下ろす巨大な人型の岩石体。その拳を受けた大地には爆撃を受けたかのような破壊の痕しか残っていなかった。


 そんな攻撃を避けつつ走る二人の先にはハルトの予想通り、多くの人が行き来しているフォーガ街道が見えている。


「全員ここから離れて!」


 今現在、街道に人が少ない事を願っていたエミル街道に出ると同時に全力で叫んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 時は女の子の叫びが街道に響き渡る少し前に遡る。


 十分休憩を取った翔太たちは村人たち全員に見送られ、以前村長から聞いた道からフギリ大森林へと向かった。その中を若干迷いつつも小一時間歩いたところでフォーガ街道に出た。


 フォーガ街道、エンジュマウンテンを超えた先にあるフギリ大森林を開拓して作られた、主にカヌチへの物資の輸送などに利用されている道である。そのため歩いている人より馬車の方が多く見られる。


 翔太たちは変わり映えのしない景色を見ながらそんな街道を歩いていた。するととある馬車の荷台から女性が顔だけ覗かせるように出して翔太たちに声を掛けた。


「そこのお二人さん、良かったら一緒にどう?」


 その言葉に少し迷った翔太たちだったが、翔太的には馬車というものに乗ったことがなかったため乗ってみたいという欲求に駆られてしまい乗ることにした。


 しかし翔太たちは、いや翔太はその馬車にどんな人が乗っているのか知るべきだった。


「……あんた、これが見たかったから乗ったわけじゃないわよね?」

「いや顔しか見えなかったんだから分かるわけないだろ!」


 馬車の荷台に乗ろうとした瞬間、アリスの冷ややかな視線が翔太に向けられた。そんな二人が見たのは上に羽織ものを掛けているが、上半身はシンプルカラーのビキニで下半身は短いパンツを身につけている女性、しかも複数人。


 乗せてもらった馬車の荷台は8人乗り、その中にほぼ半裸の女性が6人。


「私たちはカヌチで行われる祭りの踊り子として雇われたのよ」

「なるほど、そうなんですか~!」

「君たちはカヌチには何のために?」

「良い素材が手に入ったのでカヌチで武器を作ってもらおうと思いまして…」


 ひとまず荷台の中の席に座った翔太は女性たちと会話をし始めた。そこで女性たちがサンバのような衣装を着ている理由が分かったのだが、アリスの視線は以前変わっていない。それに気づいている翔太も表面上、笑顔を浮かべている。


 こういった会話で重要なのは如何に感情を表に出さないかということである。ここで分かりやすいくらいに動揺したり、逆に胸などをチラ見して顔を赤らめ黙るなどという動きを見せれば即座にヤられる。だからこそ「こういうの全然大丈夫ですよ」という表情で対応し平静を装うのがベストであると翔太は思っている。


 アリスの方にも何人かが詰め寄り、そのうちの一人がアリスの耳元で何かを囁いた。それに反応してかアリスの顔も赤くなっているのだが、その内容が分からない翔太は心の中でドヤ顔をしながらそのまま会話を続けた。


 そんな調子で20分ぐらい経過したところで突然遠くから何かが爆発したような音が聞こえ、振動が荷台にも伝わってくる。そして次第に音が大きく、振動が強くなっていく。


「全員ここから離れて!」


 謎の不安が募っていた翔太たちの所に突然鬼気迫る女の子の声が聞こえてくる。それとほぼ同時に翔太たちがいた場所から少し前方で街道の脇にある森林から謎の動く巨大物体が飛び出してきた。


 突然の出来事でパニックを起こす人々の悲鳴が聞こえてきた翔太は状況を確認するため荷台からすぐに降りると、翔太は押し寄せてくる人たちとは逆方向に駆け出した。それを見たアリスも翔太の後に続く。テイルはいつの間にか姿を消している。


 そこで翔太たちが見たものはミノタウロスより一回り大きく、人の形をした大岩が力任せに暴れまわる姿だった。


「……ゴーレム?」

「あれが何か知っているの!?」


 翔太の思わず出てしまった言葉に反応したアリスはそのまま翔太に質問するが、翔太も何の確信もない発言だったため断言できずにいた。


 そんななか聞こえてきたのは破壊音ではない音、いや泣き声と言った方が良いだろう。翔太たちがその声がした方向に目を向けるとそこには小さな女の子がいた。それを見た翔太は迷う素振りも見せずにその女の子の方へ走り出した。


 しかしその姿を見られたのか、岩型モンスターの目らしき部分が女の子の方に向かって動いた。翔太の行動を見越していたように魔法で煙幕を張ろうとしたアリスだったが、それで間に合うはずがなく巨大な岩石の塊が女の子に向かって放たれる。


 その時、その岩石以外に女の子に向かう人影が二つあった。一つは走ってきた勢いを利用して女の子に飛びつき、そのまま自らの身体を回転させることでその一撃を間一髪で躱した翔太のものだった。


 しかしさっきの一撃が躱されたことで岩型モンスターからさっきのものより速い二撃目が放たれ、翔太が躱しきれないと女の子を庇った時だった。翔太たちと岩型モンスターの間に現れたのは翔太と同い年くらいで,白を基調とした革の鎧を身につけている淡い桃色のセミロングヘアーの女性。


「“反射壁(リフレクション)”!」


 次の瞬間翔太が見たのは、その声と同時に両手を前に突き出した女性が岩型モンスターの重撃を受け止めていた姿だった。信じられない光景に驚いていたがよく見ると、その女性と岩型モンスターの拳との間に薄紫色の壁みたいなものがあった。いったいこれは何なのかと考えていた翔太に呼びかける声が一つ。


「ちょっと、そこの人!今のうちにその子を連れて逃げてください!」

「あ…はい!」


 翔太が女の子を連れてそこから離れると、女性も力を解除してその場を離れた。岩型モンスターはさっきまで力が拮抗していたのに急に抵抗が無くなったためバランスを崩しそうになったがなんとか踏みとどまり、再び攻撃をしようとその剛腕を振りかぶった時――


「はぁああ!」


 その雄叫びと共に現れたのは自身の身の丈と変わらないほどの大剣を振りかざす青年、その一撃が岩型モンスターの巨体を押し戻した。


「大丈夫か、エミル!?」

「ハルト!大丈夫、この人のおかげであの子は無事よ」


 エミルと呼ばれた女性はやって来た青年にサムズアップを見せた。青年が「そっちじゃない」と訴えるが、翔太の存在に気づくとすぐにエミルの後ろに隠れた。


 岩型モンスターを押し戻した時とはまるで別人のような反応を見せる青年に戸惑う翔太だったが、遅れて翔太たちのもとに走ってきたアリスを含め、集まった4人の目的は一致していた。


「ひとまず二人はあれが何か知っているのか?」

「いえ、私たちも突然襲われてここまで来ました。今更ですが巻き込んでしまって申し訳ありません」

「いやどっちみちこんなやつがいるなら誰かがどうにかしないと…ってあんまり相談している時間はないみたいだな」


 会話を切り出した翔太に返答と謝罪をするエミルだったが、岩型モンスターがゆっくりと近づいていたことに気づいた翔太が会話を中断させた。全員が身構えると同時に翔太はこれから自分がすることを簡潔に伝える。


「エミルさん…だったよな、今から俺があいつに触るから援護してくれ」

「……えっ?」

「来るぞ!」


 翔太の発言に戸惑うエミルは翔太の真意を聞こうとしたが、それより早く岩型モンスターが地響きを起こしながら走るようにやってきたため戦闘が再開された。


 翔太は真正面からではなく旋回しつつ側面から予告通り岩型モンスターに向かっていった。それを目で追うような動きを見せるモンスターの周りをアリスの煙が包み込む。翔太が動くと同時に援護をするアリスの動きを見たエミルたちは翔太の発言に疑問を持っていたが、翔太がふざけ半分に言ったわけではなく何か策があると判断したことで、全員の行動にある程度の一貫性が生まれた。


 旋回したことで岩型モンスターの全体を確認できた翔太は意を決して前に出る。それと同時に煙を片手で吹き飛ばし、近づいてくる対象に標準を合わせた岩型モンスターがその一撃を加えようと右腕を振りかぶった時、上体が少しそれるこのタイミングで岩型モンスターの顔面辺りをエミルの“反射壁(リフレクション)”がヒットした。


 突然の衝撃で一歩後ずさりをすると、そこに追撃を加えようとハルトが大剣を振りかざすが今度は左腕で防御した。空中にとどまって身動きが取れなくなっているハルトを薙ぎ払うかのような裏拳を放つが、今度はエミルの“反射壁(リフレクション)”がハルトを守った。


 上に気を取られているこのチャンスを逃す手立てはないと言うように全力で突き進む翔太を目の端でとらえた岩型モンスターは半歩下がり右足での蹴りを放った。轟音を上げながら向かってくるその蹴りに対して翔太が取った行動は真横に避けることではなかった。


 いったん止まるという行動は翔太の頭の中にはなかった。みんなが作ってくれたこのチャンスを無駄にしてしまうかもしれないと考えていたのだ。だからこそ翔太は加速し、蹴りが当たらないように願いながら頭を低くしつつ斜め方向に全力で飛んだ。


 その蹴りによって大地は削り取られ、近くにあるものはその風圧で吹き飛ばされるようになる。しかしその蹴りによる戦果は無かった。


 翔太は閉じていた目をうっすらと開けるとまず感じたのは土のにおい、次に自分の名を呼ぶアリスの声。頭を上げ振り返るとそこにはついさっきまで自分がいた場所の形が変わっていたことが分かった。それと同時に自分があの蹴りをぎりぎり躱せたことに気づいた翔太は何も言わず再び前進した。


 仮に岩型モンスターが下段への回し蹴りを放っていたら止まって後退したとしても、もしくは斜めに飛んで避けようとしても躱すことができず、跡形もなく吹き飛ばされていただろう。しかし実際に放たれたのは直線的な動きである前蹴りだった。それにより攻撃範囲がかなり狭まっていたのだ。


 またこれは岩型モンスターの体が崩れていたからこその結果、援護してくれたアリスたちに感謝しながら翔太は岩型モンスターの軸足になっている左足へ向かって走った。


 そんな翔太を煩わしいと言わんばかりに攻撃しようと右腕を振りかぶる岩型モンスターだったが、エミルの“反射壁(リフレクション)”を足場にしたハルトの一撃が岩型モンスターより先に入ったため大きくバランスを崩しながら倒れた。


 盛大に舞い上がった土埃で視界が悪くなるなか、翔太はなんとか左足の元へ辿り着き、ついに触れることができた。しかし衝撃的なものを見たのはその後、それは翔太は一息つくことなく急いでその場を後にしようとした時――


「……嘘だろ、こんなところにあるなんて」


 あまりの驚きで半ば呆然としていた翔太は思ったことをそのまま口に出していた。すると岩型モンスターが何の苦も無く立ち上がってきた。それにより左足の裏は見えなくなったため翔太も自分が見たものをみんなに伝えようと戻ろうとした時、岩型モンスターが翔太の気配に気づき、その場で我儘を言う子供のように足をばたつかせた。


 翔太は命がけで避けるが攻撃範囲が足元に集中しているため、このまま避け続けることが不可能なのは火を見るよりも明らかだった。翔太が死を予感したときその一撃を“反射壁(リフレクション)”が受け止めていた。しかし岩型モンスターの攻撃は止むことなく、かつ“反射壁(リフレクション)”を避けるように周囲を踏みつけることで翔太が逃げられないようにしていた。再び舞い上がる大量の砂埃が翔太の姿を覆い隠したため、アリスたちも援護がしにくくなっていた。


 エミルは自分の“反射壁(リフレクション)”が翔太の命綱だと理解していたため力を籠めるが拡散しているとはいえ何発か攻撃を受けているため、あと何発耐えられるか、時間の問題だった。


 そんなときハルトが岩型モンスターの片足が上がるタイミングでその足を切り飛ばした。翔太から見れば突然岩型モンスターの片足が吹っ飛び、少し距離が離れたところで重い物が地面に落下する音がしたという状況だったが、すぐに誰かがやってくれたことだと考え、疑うことなく走り出した。


 しかし岩型モンスターはすぐに上体を起こし、逃げる翔太を捕まえようと手を伸ばした、今度は避けられないように横から薙ぎ払う形で。


 誰もが捕まると思ったとき、当の翔太は諦めていなかった。正直に言うと翔太も半分は諦めていたが、それでも辺りを見渡してどうするか考えていた。そしてあるものを見つけ一か八かで“物体引力(フックショット)”を発動させた。


 翔太が見つけたのは岩型モンスターの切り落とされた片足だったのだが、この時翔太が考えたのはこの足が自分が触れた左足なのかどうかだった。これがもし右足だったらと考える余裕もない翔太は後ろを振り返りつつ発動させたのだ。


 この時の翔太は運が良かったというべきだろうか、翔太の身体は思惑通り遠くに落ちていた足の方へ引き寄せられていた。岩型モンスターには顔がないため分からなかったが、もし顔があったら悔し顔を見せているだろう。


 呆然としている岩型モンスターの隙をつきハルトも後退し、アリスたちも翔太の無事を確認しようと急いで駆け寄ったのだが、当の翔太といえば…


「ひねくれてる!あれ作ったやつ絶対ひねくれてる!!」

「…どこかで頭を打ったの?」


 翔太の心配をするエミルの傍らで「こいつはまたか…」と言いたげな目で翔太を見つめるアリスだった。


読んでいただきありがとうございます。

いつもながら投稿が遅れてすみません。次回は8月23日に投稿する予定です。

これからもよろしくお願いします。

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