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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第3章 人間の研究者編
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急な休憩(酔)

 翔太はうっすら目を開くと見慣れた青空、無数の雲がゆっくりと流れていた。それを目で追いながら眺めていると、ようやく自分が外で寝ていたことに気づいた。このまま横になっていてもよかったが、翔太はとりあえず周りを見渡そうと起き上がろうとした。したのだが、その時頭がぐらつくような感覚に襲われ、思わずバランスを崩しそうになった。


 それもそのはず、一晩中騒いでいた昨日の宴で翔太は美味しい食べ物と酒によりエネルギーが枯渇していた体を満たしていたのだが、この時酒を初めて飲むということで酒に関して飲む量を自重するつもりだった。


 しかし実際は、酔った村人たちがもっと飲めと酒を勧めてきたり、既にできあがっていたアリスに半ば強引に酒を飲まされたりなど、その場の空気に流されてしまったため結局周りと同様の量を飲んでしまったのだ。そして日が昇る頃には全員仲良く、その場で倒れるように眠っていた。


 左腕をつっかえ棒のように使って上体を支えている翔太がとりあえず昨日の出来事を思い出し状況を理解した時、ふと体重をかけている左腕の方を見るとそこにはすやすやと眠っているアリスの姿があった。


 突然のデジャブみたいな光景に翔太は思わず驚きの声を上げてしまった。大量の酒を飲んだとこまでは覚えているが、どうしたらアリスが隣でぐっすりと眠るという状況になるのか、その流れを一切覚えていない翔太は酒の恐ろしさをその身で痛感した。


 そんな声に反応したのかアリスもゆっくりと目を開けた。そして起き上がろうとするアリスだったが、突然頭を抱えてその場に横になった。


「どうした、大丈夫か!?」

「…頭が痛い、それにすごく気持ち悪い。…こういう時は水と何か酸っぱいものが良いって聞いたことがある…」

「水と酸っぱいもの…分かった、アムリ酒を持ってくればいいんだな!」

「足すな!というかこんな時にボケるな!!」


 自分の荒げた声が頭に響き、頭を抱えるアリスは言うまでもなく二日酔いだった。初めて酒を飲んでかなり興奮していたのもあってかなりのペースで飲んでいたのだ、こうなったとしてもおかしくはない。


「…俺ってもしかして酒が強いタイプの人間だったのか?」


 翔太は自分もアリスと同様にかなりの量の酒を飲んでいたのに、自分にはアリスのような影響があまり出ていないということに驚いていた。翔太がそんな誰に対して言ったのか分からない一言をつぶやいたときアリスの声で目を覚ましたのか、次々と人が起き上がり始めた。


 その中には大きな伸びをして、気持ちよく目覚める人もいれば、アリスのように頭を抱えて苦しそうにしていた人もいた。そこには(酒に対する)強者と弱者がはっきりと分かれていた。


 しかしアリスの身を案じる翔太の足にも昨日から続く筋肉痛がまだ残っていた。慣れない山道を全力疾走したのだから無理はないが、それでも生まれたての小鹿のようになっている足でまともに動くことは難しいだろう。


「二人とも情けないですね~」


 翔太とアリスの状態を見たテイルのその一言に反論できない二人は、その日は静かに過ごすしかなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 アリスを含めた二日酔いで動けない人を家のベッドまで誘導し、寝かしつけた酒に強い人たちは再び村の復興に尽力した。この時翔太も休むべきだと村の人たちに言われたのだが、翔太はそれを断った。


 もちろん村の復興の手伝いをしたとしてもただ邪魔になるのは分かっている。しかし動きにくいからといっても動けないわけではない。ただ時間を浪費するだけならば村の人たちに目的地であるカヌチのことやその他諸々について聞くことにしたのだ。


 元気なテイルはアリスと共に休むと言って家に戻ったため翔太は一人で話を聞くことになった。早速作業の合間に休憩していた村長たちに話しかけた。


「休憩しているところすみません、少しカヌチについて聞きたいことがあるんですけど…」

「翔太さんはカヌチに行こうとしているのですか?やはり何か武器を作ってもらうために?」

「はい。この村からの道順は大丈夫だと思うですが、カヌチに着いたところでどこに委託すればいいのか分からないので、どこかオススメの鍛冶屋があったら教えてほしいのですが…」

「私たちも何度か訪れた程度なので詳しくは知らないのですが、アルバンという店で働いている鍛冶師は知る人ぞ知る武器を作ることで有名です」


 村長たちは自分たちがカヌチを訪れたときは武器に対する興味や必要性などを感じていなかったためそういった情報が少ない事を申し訳なさそうにしていたが、翔太にとっては店を選ぶ基準となる貴重な情報である。他には何かないのかと話を続ける。


「他に有名なお店はありますか?」

「鍛冶屋と言っても剣専門や防具専門の鍛冶師がいるので、翔太さんの希望の武器によってそこは変わってきます。ちなみに武器は何を?」

「武器はナイフで…出来ればこれを加工してほしいと思っています」


 そこで翔太はミノタウロスの角を村長たちに見せた。ただ単純に口で説明するより見せた方が早いと思ったからだ。しかしそれを見た村長たちは目を輝かせ、それをどうやって手に入れたのか聞いてきた。


 その目には悪意はなく、むしろ憧れに近いものを感じた翔太は嫌な予感がした。というのも手に入れた経緯を再び、翔太たちの英雄譚のように村中に広めようとするのではないかと考えたからだ。


 実際翔太の予想は間違っていなかった。村長たちは翔太の言葉を今か今かと待ち望んでいたため、翔太は偶然手に入れたものだと言って話をはぐらかした。少し残念そうにしている村長たちを横目に翔太は話を続けた。


「え~と…できれば費用は抑えたいので安く済むところはありますか?」

「…武器の材料があるのなら、調達をしなくていい分安くなると思いますよ」

「本当ですか!」

「それにさっき言ったアルバンの鍛冶師は私の知り合いですし、何でしたら紹介文を書きますが?」


 村長のその言葉を聞いた翔太は最初、ただでさえ村の復興で忙しいのに紹介文まで書いてもらうのは流石に申し訳ないと思い、そこまでしてもらわなくても大丈夫だと断ろうとしたが、村長の目を見てそれをやめた。何せ村長の目はさっき話していたものと違い、ここだけは譲らないと言いたげな力強い目をしていたのだ、そんな目をされては断るわけにはいかなかった、もとい断れなかった。


「ではお手数をかけますが、よろしくお願いします」

「そんなにかしこまらないでください、これは私たちができるせめてものお礼ですから」


 村の温かい人情を肌で感じた翔太はそこで話を終え、寝ているアリスの様子を見に家に戻った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 二日酔いの対処で一番簡単なのは水をたくさん飲むことである。そうすることで体内に残っているアルコールの濃度を薄くして、汗や尿から排出させることができる。


 二日酔いでダウンしているアリスは今、昨日休ませてもらっていた部屋の入口側のベッドに横になっていた。水を飲んだことで朝よりは体調は良くなっていたが、腹の中にはまだ酒が残っているように感じる。


 そんなアリスのこの日の不幸は水を大量に飲んだことで生じる生理現象と翔太が見舞いに来たタイミングが同時だったこと。そして翔太がやって来たタイミングで、さっきまで家の中で色々世話をしてくれていた人やさっきまで一緒にいたテイルがいなくなっていたこと。その人が翔太が来たことをアリスに知らせてから部屋を出た時のあの笑顔が恨めしい。


「急にどうしたの、何かあった?」

「いや、俺はアリスの様子を見に来ただけだよ。その様子だと朝よりはましみたいだな」

「…まあね」


 アリスが休んでいた部屋に入った翔太は軽く言葉を交わし、そのままさっき聞いていたカヌチの情報を話しているのだが、アリスはそれに生返事するだけだった。というのもアリスには話を聞く様子がなかったのだ。我慢していてもそれが表面に出てしまい、プルプルと体が震えている。


「どうしたんだ、そんなに震えて…寒いのか?」

「触らないで!!」


 翔太はアリスの様子がおかしいと思い気遣って肩に掛物を掛けようとしたのだが、しかしいつになく強い否定を受けた翔太はたじろぎながら小さな声で謝った。見知っている相手とはいえ、親しき中にも礼儀ありという言葉があるとおり、悪意がないとはいえいきなり女性に触れようとしたのだから強い拒否反応を見せても不思議はない、そう考えたのだ。


 一方、今のアリスは少しの刺激もNGな状態、だから精神的にも余裕が無くなっていたため、つい反射的に大きな声で否定してしまったのだが、翔太には完全に勘違いさせてしまったため、アリスも謝罪する。


 互いに謝罪の言葉を交わすという気まずい空気になってしまい、かつ話すこともなくなってしまったため、その焦りと謎の緊張により一層尿意を感じてしまうアリスはついに限界を迎える。


「あの…お花を摘みに行きたいから外に出て…」


 突然もじもじしながら翔太に告げるアリスの恥ずかしそうにしている姿が全てを語っていた。「もしかしてさっきから我慢してた?」とそんなデリカシーに欠けることを、顔が赤くなっている人に聞くわけにもいかなかった翔太は静かにその部屋から出て行こうとした。


 翔太の様子を見て安心すると共に、一秒でも早く行きたいと思ったアリスはベッドから降りた。しかしさっきからベッドに横になっていたため身体の反応が鈍くなっていたため、バランスを崩し前に倒れそうになる。


 それに気づいた翔太は右腕でアリスの肩を抱く形でアリスが倒れるのを防いだ。


「おいおい…本当に大丈夫か?」

「…肩貸して、そのまま連れていって…」


 さっきより明らかに近い距離で翔太の言葉が耳に届いたアリスはすぐに離れようとしたのだが今はそれすらできないほどの状態だったため、これは緊急事態だから仕方がないと必死に自分に言い聞かせていたアリスはずっと下を向いている。


 翔太もそんなアリスを見て、少し驚いた表情を見せたがそれ以上は何も言わず無言で頷いた。何も言わない、聞かないことが紳士の対応だと悟っていた。


 そんなこんなでアリスは不祥事を起こさずに済んだわけだが、その間にアリスの体調を心配した翔太がアリスの用が終わるまで待ってると言い出したり、音を聞かれたくなかったアリスが翔太に大声で歌を歌ってほしいと頼んだりと一悶着あったが、それはアリスにとって大きな出来事ではなかった。


 自分のことを心配してくれる人が耳元で自分を気遣う言葉を掛けてくれたこと以上に胸が熱くなる出来事はなかった。


 翔太の肩を借りながらアリスは無言で部屋に戻り、再びベッドに横になった。しかし部屋に戻った後、自分たちが今までの行為を振り返ってしまい羞恥に悶えそうになった二人は互いにそれを相手に悟られないように少し話をした後、翔太は部屋を後にした。


 部屋を出て少しの所で翔太は腰を起こし、赤くなった顔を少しでも早く元に戻すために両手でパタパタと仰いだ。その時どこからかひらひらと飛んできたテイルにさっきのことでさんざんイジられたため、翔太は気力の回復に時間がかかった。


 一方アリスは羞恥と喜悦で赤くなった顔を両手で覆い隠していた。しかし何気なく窓を見た時、そこには翔太が来る前まで世話をしてくれていた人が盛大な笑みを浮かべていた。一部始終を見ていたのだろう、「若いっていいわね」と言わんばかりの目をしていた。アリスは無言で窓を閉め、カーテンを閉じるとすぐにベッドにダイブし、枕に顔を埋めて身悶えした。


 その日の夜は少し気まずい空気だったが、翔太たちはその人の家で食事をとり、静かに床に就いた。


読んでいただきありがとうございます。

今回は翔太たちの目的を再確認する回です。作者自身も若干、目的地の名前を忘れかけるという事態になっていたため書きました(笑)。

これからもよろしくお願いします。

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