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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第2章 魅惑の声者編
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アリスのひと時(恥)

 アリスが目を覚ましたのは、翔太が目を覚ます少し前。翔太より早く状況を理解したアリスはひとまず水を一杯飲み、再び床についた。翔太ほど体のだるさを感じてはいなかったが純粋にベッドが心地良かったのだ。アリスは自分の枕ですやすやと眠っているテイルを起こさないようにゆっくりと頭を枕に下ろし仰向けになった。

 そうしてアリスがもうひと眠りしようとしたちょうどその時、隣でごそごそと何かが動く音が聞こえた。翔太が起きたとすぐに察したアリスはここでちょっと驚かしてやろうと、あえて声をかけずに寝たふりをした。高まる気持ちを抑えつつ、翔太が水を飲んで一息入れようとするところを見計らっていざ驚かしてやろうとした時だった。


「テイルもこんな風に黙っていれば可愛いのに…もったいない。…それにしても俺こんな可愛い子たちと自然に話してるんだよな、以前の俺ならありえなかったな。それになんだろうな、この気持ちは?ずっと見ていたいというか見ていてほっとするような…」


「突然何を言い出すんだ、お前は!!」

 と言いそうになった自分を抑えるアリスはそれが顔に出ないように必死で我慢した。そんなアリスに気づかず独り言を言う翔太の声は普段のものより優しく感じた。ただ疲れて声に元気がないだけだが、普段より落ち着きのある声が静かにしている分余計に耳に残り、それで自分の鼓動が早くなっていることに気づいたアリスはますます顔に出そうになり、いよいよ我慢の限界が来そうになった時ドアの開く音が聞こえた。そこでやってきたであろう女の人と翔太が軽い会話を交わした後、翔太は再び眠りに入った。


「…寝た?」


 翔太が寝たのを確認してからゆっくりと起き上がったアリスはすやすやと眠っている翔太の方を見て後悔交じりの溜息一つ。


「驚かそうとして逆に驚かされるなんて……翔太は私のこと可愛いって思ってくれてたんだ…」

「良かったですね!」

「……え!?あの、いつから…」

「アリス様が翔太様を驚かそうと寝たふりをした時からです」

「…最初からじゃない!もう何なのよ、あんたたちは!!」


 翔太の言葉を脳内で再生して赤面しているアリスにテイルからの突然の一言で一瞬固まったアリスは自分もつい言ってしまった恥ずかしい一言を他の人に聞かれたということを理解すると、耳まで真っ赤になり両手で顔を覆い隠した。テイルの無邪気な笑顔が逆に辛いアリスだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 すっかり目が覚めたアリスとテイルは翔太を起こさないように部屋を出ると、村の人たちが丸太を持って行ったり来たりを繰り返す光景が目の前に広がっていた。アリスたちがどういう状況か分からずにただその光景を見ていると、一人の男性がアリスたちに気づくと、瞬く間に村人たちに囲まれた。


「おぉ~村を救ってくれた方々だ!!」

「銀髪のあの子が煙幕を使って盗賊たちから逃げ切ったっていう盗賊さんか!」

「そしてこっちの金髪の子が風を操って盗賊たちを恐怖に陥れたっていう妖精さんか!」

「あの…ちょっとみなさん落ち着いて、寝てる人がいるから別の場所で…」


 目を輝かせてやって来た村人たちにもみくちゃにされかけたアリスはひとまず翔太のことを気遣って、声を小さくして周りに呼びかけた。そこで全員は別の場所に大移動した。

 移動した先は村の中央にある噴水がある場所、そこにはさっき見た丸太がいくつも積まれていた。それに関して質問したい気持ちもあったが、アリスにはそれよりもまず聞きたいことがあった。


「えっと、とりあえずなぜ皆さんは私たちがしたことについてそんな詳しいんですか?」

「それはもちろん私が全てを話したからです!」


 突然聞こえてきたその声がする方向に目を向けるとそこには元気な村娘のリナがいた。アリスが「あれ、この子こんなキャラだった?」という視線を送るが、リナはそんなことは気にしないと言わんばかりに話を続ける。


「私の身に起きたこと、私たちが行ったこと全てを余すことなく村中に伝えました!」

「…あの『伝えました!』っていうには、やけに村の皆さんの目が輝いていて…正直少し怖いんだけど」

「そんなことはありません、これは憧れの目ですよ!何せアリスさんたちはこの村を救ってくれた、言わばこの村の英雄ですよ!」

「いや、だから『ですよ!』じゃなくて…ちなみに村の人たちにはどんな風に伝えたの?」

「え?…どんな風にって言われてもありのまま起こったことを言っただけですよ?例えば『翔太の言う通りだわ。それに盗賊に襲われるって意外と腹が立つわね』とか『私は良いのよ、でもこのままやられっぱなしっていうのもね?』などの言葉で、今一歩踏み出せずにいた私に理由を作って後押ししてくれたこととか…」

「あ~~もう言わなくていい!…忘れてた、この子演技が得意だった…」


 あの時のセリフをドヤ顔で、しかもリナには声質変化(ボイス)があるため再現率が異様に高い。そんなリナを見て恥ずかしくなったアリスはすぐにそれを中止させた。しかしそんなことをしても既に手遅れ、これを含めた全部が村中に知れ渡ったと思うとまさに穴があったら入りたい気分になった。


「ところで!その噴水の近くで山積みになっているあの丸太は何なの?」

「え…あぁ、あれは今晩行われる宴の篝火で使うものですよ」

「宴があるんですか!!」

「は…はい、そうです」


 これ以上恥ずかしい思いをしたくないと思ったアリスは違う話題に変えようと気になっていたことについてリナに聞いたのに対し、リナは盛り上がっていた話に水を差されたみたいな表情を見せながらもそれに答えた。しかしさっきまで話に入ろうとしなかったのに予想以上の食いつきを見せるテイルの見幕でリナは思わずたじろいでしまった。


 そんなことは気にしないと言わんばかりに宴について詳しく聞こうと詰め寄るテイルに周りの注目が集まった時、アリスは誰かに手を引かれて人だかりから抜け出した。


 アリスは誰が自分をあの公開処刑台から救ってくれたのか、人混みを抜けた後その手の先を見てみるとそこにいたのは一人の女性。見覚えがあるその姿だったが、いまいち思い出せなかった。


「…あなたは?」

「紹介が遅れました。私はカナ、リナの母親です」


 どうしても思い出せなかったアリスはその言葉で思い出した、村に到着してからの数少ない思い出の一つ、感動的な親子の再会でリナを強く抱きしめていた人だったことを。


「改めてあの子を、リナを助けていただいてありがとうございました。あの子があんなに楽しそうに話をしているのを見たのは本当に久しぶりでした」

「でしょうね…なんだか演説みたいに話しているリナさんの姿が目に浮かびます…」

「ふふっ、確かにリナの話し方はとても情熱的で、聞く人皆がそれに引き付けられていましたよ」


 カナの言葉で項垂れるアリスだったが、この時最初に聞いたカナの話し方と声の既聴感の原因に気づいた。それは初めてリナと出会った時、リナがヨルムと名乗っていた時の人物と同じ印象だったのだ。アムリの実を食べたときに見せたリナのように、不思議な親しみやすさを感じさせる声。


「…どうかしましたか?」

「あ…いえ、それよりもこちらこそ色々と世話になったみたいで、ありがとうございました」

「いえいえ、アリスさんたちは私たちの命の恩人ですから気にしないでください」

「でも翔太もすやすやと気持ちよさそうに眠っていましたから…」

「お二人は本当に仲がよろしいのですね」

「はい!?」

「一緒の部屋で寝たのですから、今更そんな恥ずかしがることはないと思いますが…」

「変な言い方しないでください!!」

「でもお二人の関係は友情や愛情に似たものでしょう?彼の名を口にしたあなたはどこか嬉しそうでしたよ?」


 アリスはカナの突然の言葉に返す言葉もなく、ただ頬を紅く染めていた。アリスのその表情を見てカナも優しく笑みを浮かべた。


「彼もあなたと似た気持ちを抱いているかもしれませんよ」

「…それってどういう意味ですか?」

「言葉のとおりですよ。リナからあなたたちの話を聞いたとき、リナも翔太さんがアリスさんと話すときその表情や声色が少し変わっていたと言っていました」

「…それだけじゃ翔太の気持ちは分かりませんよ」

「確かにその通りです。だからこれからも彼の傍にいてください、彼にとって最も親しい女性になれるように」


 アリスは少し恥ずかしそうにしながら無言で頷いた。それを見てカナは最後に一言。


「私はお二人がお似合いのカップルに見えましたよ」

「…そろそろ翔太が起きるかもしれないので私はここで!」


 アリスはそう言い残してその場を後にした。これ以上あの場にいたら変な気持ちになりそうだったからだ。それでもアリスはカナの最後の言葉が頭から離れなかった。


「傍から見たら似合いのカップルか、恥ずかしいけど少し嬉しかった…かな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翔太の元へ戻る途中、宴で大量の食べ物が用意されると聞いてテンションがハイになっているテイルと合流したアリスは部屋のドアを静かに開けた。そこにいたのは既に目覚めて窓から夕陽を見つめていた翔太の姿。

 アリスは今の自分の気持ちが本人に気づかれないように気を付けながら、今はまだこの関係のままでと自分に言い聞かせる。

 そして普段と同じように接した。


「あ!やっと起きたわね、お寝坊さん」

「起きたのなら早く行きましょうよ、翔太様!」


 気持ちは隠せても気分の高揚までは隠せなかったアリスと食欲に駆り立てられたテイルは起きたばっかで状況を理解しきれていない翔太を連れ出し、宴に参加した。


 この時のアリスはまだ知らなかった、少し先の未来でちょっとした地獄を見る羽目になることを。


読んでいただきありがとうございます。それと投稿がすごく遅れてしまい本当にすいませんでした。次回の投稿も遅れるかもしれません、許してください。

今回の物語は前の話(完敗に乾杯)の時、翔太が寝ていた間に起こったことを書いてみました。完全な思いつきなので、前の話に[翔太サイド]とか入れられないので、タイトルは違いますが時系列はほぼ一緒です。

それではこれからもよろしくお願いします。

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