表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/39

30、今思えば、空を制す

「それで?。私に個人的に話が有るって どういう事。8人目の奥さんにしたいなら諦めてね」


レンジはミアーシャの様子がおかしいことに気づいていた。冷徹な彼女だが何処か焦っているような感じを受ける。マーマレーナ王女に対する処置にしても 何時もの彼女なら事を荒立てずに終わらせていただろう。



「ミアーシャさんの相談相手に成れればいいなと思ってね。今の貴方は俺の嫁さんに成った領主のククルチアと似ているんだ。心配を抱え込んで辛そうに見える」


ミアーシャは呆気にとられた。自分ですらハッキリとは認識していなかった心境を言い当てられたからだ。



「孫以上に年下のはずなのに、容赦の無い判定だわ。そういう所はシア様に良く似ているわね」


「実を言うと、サトミが恐がっててね。一番に気が付いたのはたぶん あの子だよ」


「なるほど、益々欲しい人材だわ。そうね・・こんな事 相談できるなんて転生者の君くらいね。

薄々気が付いてるとは思うけど、シア様が抜けた事で 塔と この街の存在意義が軽くなっているのよ」


元々、学術都市シンビジウムは 賢者ローレシアを各国が取り合いに成ったとき、妥協点として中立地帯に不干渉の幽閉場所として作られたのが始まりだ。


多種多様な意味で各国にとって有益であるため、お互いに牽制し合って 治外法権のような場所となり 文化も栄えてきた。


その主である彼女が亡くなった為に 今までのバランスが危うくなっているらしい。



「今回の魔族の侵略は始まりにすぎないわ。塔は秘密の山、即ち 宝の山と同じ。国々が欲しがれば また争奪戦になってしまう。人間同士で争うほど人口が居るわけじゃないのに・・戦争になったら戦える戦力が激減するわ。魔物に対抗すら出来なくなるでしょうね」


「塔の子達が強くても 相手が軍隊じゃあな・・多勢に無勢ってわけか」


「貴方達が魔物の大群をド派手に吹き飛ばしてくれたおかげで 少しだけ時間的なゆとりが出来て助かっているのよ。あれの報告を聞いた後で すぐに攻めよう とか考えるバカは居ないでしょう」


「少しだけ、なのか?。来るたびに吹き飛ばせば良いと思うけど」


「私が相手の立場なら 沢山の飛獣で空を制圧するわね。地上であの魔法を使えば自分も死ぬし、移動が地上なら反対側から攻めても効果的よね」


「なるほど、制空権か・・ん、空?」




************




「えっ、空飛ぶ方法。私が飛んでいたのはオリジナルの魔法だよ。いいでしょ」


「凄いわね・・さすが魔族の姫様だわ」


「俺は魔法に詳しく無いんだけど・・凄いのか」


「にぃちゃん・・魔法で飛べなかったから飛獣に乗るんだよ」


魔物も空が飛べるのは基本的に羽根が有る種で、使われる魔法も補助的な魔法しか存在していなかった。羽根も無しに人が空を飛ぶ事を空想する事すら無い。その点はフィクションという名のシミュレーションが存在しない世界の盲点とも言える。

科学の世界もそうだが、魔法の世界も人の思いや夢、空想という不確かな欲望が先にたって初めて発展するものなのだ。



「姫さん凄いな。ツツルフル並みに貴重な存在なんだな」


「えと、私のことはレナとでも呼んでください。褒められるのは嬉しいですけど、私は魔力が豊富なのに大きな魔法が一切使えない魔族の落ちこぼれなんで、何か 複雑です」


「生き物を殺す為の派手な魔法なんて使えなくても良いじゃんか。俺なんて全く魔法が使えないから羨ましくてしょうがないぜ」


「それって、私のお父様みたい。お父様も魔力の量だけは魔族以上なのに 魔法は使えなかったわ」


マーマレーナはふいに寂しそうな表情になる。彼女の寿命は魔族程ではないが人よりは遥かに長い。人であった父親が天寿を全うして亡くなったとしても、彼女からすれば 早くに死に別れてしまったような感覚で寂しく思っていた。本人も気が付いていないが、彼女は少しファザコンなのだった。



「レンジは貴方の父親と同じ種族の人間なのよ。そういう意味では姫様以上に珍しい存在ね」


「そうなの?」


「そうらしいな」


何気に珍獣と言われているようで認めたくないレンジである。




「私のお父様の事 何で知ってるの?」


「そりゃあ、私もあの人の奥さんだったんですもの」


「!」


「あー・・そうなると、私とぉレナさんは遠い親戚になるんですねぇ。よろしくですぅ」


ファニルが親戚の名乗りを上げると レナはかなり驚いていた。実は 塔の中にもレナの父親の血を受け継いでいる子が沢山居て 調べると恐ろしい事になりそうなのだ。



「話を戻すけど、その空を飛ぶ魔法を教えて欲しい。頼めるか?」


「どうやって教えれば良いのか分からないけど・・」


「教えて下さるのなら、塔の秘密の魔法をレナさんに教えます。その魔法が有れば簡単に伝えられますよ」


「あのね・・レンジさんが命令してくだされば、いくらでもOKだよ。奴隷になったし・・それにぃ、奥さんだしぃ」キャッ♡


マーマレーナが危ない発言をするたびに 塔の中でレンジに集まる視線が熱を帯びてくる。鈍い彼でも流石に身の危険を感じていた。


知識をコピーする為の魔法がマーマレーナに伝えられ、彼女から飛行の魔法が塔の魔法使いや、戦士で魔力が多い子に伝えられた。明日から少しずつ飛行訓練が開始されるだろう。その様子は諜報によって各国々に伝えられ、抑止力の一つとなる。


塔と一蓮托生となった彼女には 他にも転移の魔法が伝えられていた。

ちゃっかり ファニルとサトミも教えてもらっていた。


俺の魔力を利用してファニルが魔法を使い、ミケルティアの街まで転移のゲートを開く。ファニル達も家の事は知らないので、一度 皆で家に帰る事にしたのだ。場所が分かれば、今度からはレナが豊富な魔力で幾らでもゲートを開いてくれるだろう。





「おかえりなさい。あなた」


「ただいま。ククル」


「ふふっ、少し離れていただけなのに沢山増えていますね」


ファニル達はククルチアよりも早くからの知り合いなので、レンジ的にはマーマレーナが増えただけなのだが、彼女を入れて全部で7人。悪いことをしている訳では無くてもバツの悪いレンジである。

そんな男をよそに、女性陣は早くも意気投合して楽しく話をしていた。



「ククル、飛獣のドブを使いたいけど大丈夫かな?」


「長い間ありがとう。助かったわ。今は用事が有ると隣の国から飛んで来てくれるから大丈夫だと思うわ」


「そうか、良かった」


オリジナル飛獣のドブロクロに、許可しないうちは人間の姿に成るな、と命令していたので正体はバレていないようだ。




次の日。



「あの命令は奴隷虐待だぞ。来る日も、来る日も飛獣用の不味い食事ばかり。言葉を話す事もできずに飛んでばかり。おおっ、何と嘆かわしい」


「うっせー。見苦しいから早く服を着ろ。これからは人の姿でいられるぞ」


「ほほー、それは僥倖。当然の権利ですな」


「ふっ、言ってろ。 レナすまないけど、俺とこいつを塔まで転移で運んで欲しい。それが終われば少しは落ち着けると思う」


「う、うん。じゃあ手をつないでね。そっちの人?は先にゲートを潜ってね」




####ポアァァァァァンンン#####





「ふむっ、ここは何処かね」


「男?」


「「「「「「!」」」」」」


ズザザッ。



最初は驚いた塔の少女達だが 直ぐに戦闘態勢をとっている。



「悪いが、ミアーシャさんを呼んでくれるか」


「レンジ様!。はい。少々お待ちください」


昨日、レンジが帰った為、沈んでいた少女たちは戦闘態勢から一転して笑顔に変わっていた。




「その必要は無いわよ。おかえりなさい。・・レンジ君、許可無く部外者を塔に入れないで欲しいわね」


「そう 威圧しないでくれ。こいつは俺の奴隷なんだ」


「奴隷?男の?。あなた・・・そっちの趣味も有るの」



キャアーーーーッきたわー♡



今までで一番の大騒ぎとなった・・なんだかなー。



「ドブ。先に命令しておく。塔の少女達に対して失礼なセリフや態度をするな。余計な事を言わず彼女達に優しくしろ。そして・・彼女達が望むことに全力で応えろ。そのさい、思いやりを忘れるな。守らなかったらお前を虫に食わせる」


「なっ、何と・・。それは、つまり・・」


「まぁ、高度で難しい課題だが優秀な種族のお前なら可能だろう。期待している」


「そ、それは確かに某なら可能かと思うが・・」


「これは至上命令だ。健闘を祈る。とり合えず そこに座って待っててくれ」  ぷっ


レンジは呆気に取られているミアーシャと隣の部屋に移動した。



「どういう事かな。あれは何だ?」


「落ち着いてくれ。理由を話す」


ミアーシャは男の正体を聞くと 程なくレンジの計画を理解した。ドブは飛獣のオリジナル固体だがツツルフルの母親ほど質が高くない。その為、彼と人間の女性との間に子供が生まれれば 高い確率でツツルフルのような人型の種族で生まれる。同じように羽根を持ったり、飛獣に変化する子供も生まれるだろう。



「女の子の中で拘らずに子供だけ欲しい人に奴を使ってもらいたい。ツツルも同じタイプの人間が多ければ気が楽になると思う」


「なるほど・・獣人の子供を作るのも それほど違いは無いし、気にしない者も多いだろう。もしも、飛獣で生まれても塔で大切に育てるし問題は無い」


これが地球なら人権問題で大変なのだが、この世界では逆に拘れば人種差別と成りかねないのだ。生まれた子供にケモミミが付いていても 其のままで受け入れるのが相手を尊重している事になる。



いずれはツツルフルが自由に羽根を出して空を飛んでも 不思議に思われない状況を作りたかったのである。



自分の負担を減らしたいのも少しはある・・・






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ