31、今思えば、千客万来
コーン☆コーン☆
「ん?誰か来たかな。見てくるね」
ミケルティアの街に戻り 数日はのんびり出来た。
皆の部屋を決めたり 色々そろえたり、女性陣は忙しく動いていたが楽しそうなので大丈夫だろう。
落ち着いてきたころ 家に来客があった。
「「「「「失礼致します。レンジ様♡」」」」」
「あれっ、ひょっとして塔の子かな?」
「「「「「はい」」」」」
そこには5人の少女がカバンを手に凄い笑顔で立っていた。何故か全員お揃いのメイド服である。
「ミアーシャ様から手紙を預かってまいりました」
「・・何だろ?」
レンジは手紙を読んで固まった。
{拝啓 先日は塔の為に配慮していただき感謝する。あずかった男は見た目が良く、命令されているので少女達に対して態度も良い。それに 体力も有るらしく毎晩 塔の子達と仲良くしている。
そちらに送った少女達は 君に気が有る子達だ。家の管理を任せる人材が欲しいと言っていたので 優秀なスタッフを送る。是非 この子達にも女性の幸せを与えてあげてくれたまえ。通例にしたがって2ヶ月ほどで他の子と交代するので それまでには宜しくたのむ。レンジ君が塔に来るのも大歓迎だ。また、皆で遊びに来たまえ。 ミアーシャ}
(ミアーシャさん・・集団通い妻システムでも作ったのか?。だいたい 通例ってなんだよ)
「あの・・レンジ様」
「あ、あぁ。少し驚いただけだ。遠いところ 大変だったな。とり合えず入って休んでくれ。皆に紹介してから これからの細かい事を決めよう」
「「「「「はい、失礼致します」」」」」
嫁達と顔を合わせ 直ぐに仲良くなった彼女たちは、早くも家事をこなしている。気のせいか・・女性たちは数が増えるほど和気藹々と仲良くなっている気がする。地球の大奥みたいにドロドロとした怨憎劇にならなくて助かるが、嫉妬で殺しあうドラマなどを見ていた地球人としては不思議な光景でもある。
コーン☆コーン☆ コーン☆コーン☆
「マーマレーナ様にお客様です」
「私に?誰かな・・」
彼女が玄関に向かうと 程なく騒がしく言い争うような声が聞こえる。
カチャッ☆
「失礼する」
「お兄様、お待ちください」
「お兄様?」
(マーマレーナの兄って事は、この男 魔族の王子?)
いきなり部屋に入って来た男は 身長2メートル以上は有る均整の取れた姿をしている。顔も西洋的なハンサムで、ザ・王子 という見た目だ。
「私はマーマレーナの兄でレンリストという。学術都市に留学しているはずのマーマレーナが何故このような街に居るのだ?。
念のために確認しておくが・・妹が貴様の奴隷に成っているとの情報がある。俺としては諜報員の誤認であると思いたいのだが・・どうなのだ」
どうなのだ、と聞いてはいるが、既に全身から魔力と殺気があふれ出ている。コソコソと小細工をすれば逆鱗に触れるのは明らかだろう。
「そうだ。レナは今 俺の奴隷という立場だ」
「お兄様!」
「「!」」
レナとファニルそして、サトミという 我が家の魔法少女たちが何やら慌てている。どうした?
「我が妹を、王族の姫を奴隷にするなど 正気か?。俺の魔力の波動を受けても平気なのは褒めてやる。面白い 外へ出ろ、貴様に決闘を申し込む」
「まて、そっちこそ正気か。こんな街中で決闘なんてしたら、お前の魔法で町が更地になっちまうだろが」
「そんな楽に死ねるような魔法など使うわけ無いだろ。心配するな、最悪でも命だけは無事だ」
レンリストは優秀な諜報、要するにスパイを各国に多く配している。王族で情報の重要性を一番重く考えているあたりは この世界で一番であろう。
その部下から聞き捨てなら無い情報が入って来た。一番心配で可愛がっていた妹のマーマレーナが人族に拘束され、奴隷に落ちている可能性が高い、というものだ。これには 流石の彼も冷静さを失い、レンジの家に押しかけてきたのだった。
「我が父上の鍛えし剣で 貴様の手足を切り落としてくれる。ついでに男も止めさせてやる。宦官になって人族の短い一生を終わることだ」
「さすが王子だな。俺が今まで聞いた中で一番恐ろしいセリフだぜ」
「ふっ、自分の罪を思い知るがいい」
「だか、断る」
「!」
キィィン☆ キシャーッンン☆ カキッ☆
レンジは惜しむ事無く ローレシアから受け継いだ最高と言われる剣 開放の楔 で切りつける。受ける王子の剣も同じ作者の名剣である。お互い譲らず、ほぼ互角と言って良い剣戟がなされていた。
レベルが上がったレンジの力とスピードなら 大抵の相手は一撃で勝負が付くまでになっている。
しかし、相手は幼少の頃より父親の竜退治の話に憧れ、研鑽を続けてきた剣の達人だ。お互いに何合か打ち合って、それぞれに驚いている。
「お兄様と剣で打ち合えるなんて、レンジさん すごい」
「そんな事言われても、つっ、嬉しくないな。とっくに剣を叩き折っている予定だったのに・・」
「それは こちらのセリフだ。この剣とまともに打ち合える剣など初めて見たぞ」
ふいに王子が左手を伸ばして手のひらを広げた。
「?。何してんだ。降参か?」
「ぬっ・・なぜ、なぜ魔法が利かない?」
「あぁ、そういう事か。変なポーズ決めてるから、可愛そうな人かと思ったぜ、っと。勝負ありだ」
驚愕で一瞬 思考が飛んだ隙に 飛び込んだレンジの剣が王子の首に突きつけられる。
「魔法使いは魔法を使った後、少しの隙が出来る。普通は仲間がカバーしてくれるけど、1人で剣と魔法を使うつもりなら気を付けた方がいいぜ」
「そうだな・・・、だが 次は負けんぞ」
同じことを父親にも言われた記憶がある。
普段ならそんなミスはしないレンリストだが、魔法が通用しない人間が父親以外にも居た事に驚いたのだ。
彼は妹がこの男に引き付けられる理由が分かったような気がした。そして、剣を交えた事でレンジの人となりを感じ取って安心もしていた。
「良い勝負でありました。強くなりましたなレンジ殿」
「えっ?」
振り向くと 見覚えの有るゴツイ男が拍手をしながらこちらを見ていた。モルテーナ帝国騎士団長のコルトスである。隣には領主のククルチアがいる。
「コルトスさん、お久しぶりです」
「レンリストお兄さまは私の部屋にいらしてくださいね。詳しい事をお話いたします」
「・・ああ。そうだな。そうさせてもらおう」
まだ この世界の知人は少ないはずなのに、変な日だな・・。
どうやら 運命はレンジに怠惰な生活をさせてはくれないようだ。




