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20、今思えば、SSランク

領主の館に行くと何やら賑やかな様子だ。

玄関にたどり着くまでの広い場所には沢山の獣車が停車していた。



「レンジ様、申し訳有りません。少しばかりお待たせするかも知れません」


「何かの行事をしているみたいだね」


応接室に通されて執事に謝罪された。

様子を見る限り 狙ってこんな時に招いた訳では無いようだ。彼ほどの人が忘れていたらしい。ポーカーフェイスが崩れて困惑しているのを初めて見た。



「今日は街の有力者を招いてのパーティが開かれております。これからの事を発表し皆に協力を呼びかける意味がございます」


「執事さんは同席しなくて大丈夫なのか?」


「はい。当家には他にも優秀な者は居りますゆえ」


この人並みに優秀な人材がそんなに居るとは思えないが、パーティの運行くらいなら任せられるという事なのだろう。




バターン☆☆☆


「「なぁ!」」


いきなり部屋に飛び込んで来たのは領主のククルチアだ。


しかし、その姿はドレスが引き裂かれボロボロになり、顔は涙で濡れている。まるで暴漢から逃げてきたような姿で、とても領主の邸宅で見られるものではない。

俺も執事も驚いて口を開けてしまった。



「レヨーゼフ、帰ってたのね、良かった・・。れ、レンジ!何故ここに居るのです」


「お嬢様、いかがなされたのです。その姿は」


執事を見て安心したのか、彼女はその場でヘナヘナと座り込んでしまった。


カチャッ☆



「あ、執事長。お戻りでしたか。良かった」


「何事なのです?フローリア」


おおっ。メイドさんだ。この屋敷にはメイドさんが居たのか。何時も執事が対応していたから爺さんしか居ないのかと思ってた。

頭の飾りは無いけど地球のメイド服に似たデザインの衣装だ。年齢は30歳くらいで優秀なOLの雰囲気を持っている。




「会場にバルタン様が出席されてまして、挨拶が終わると いきなり領主様に抱きつき 俺がお前と結婚してやる。俺が領主に成ってやるから有りがたく思え。 と宣言され、領主様と揉み合いに成りなりまして。今は騎士団長が抑えて居りますが長くは持たないでしょう」


「不味い事になりましたな。この時期にそのような噂を立てられては皆が浮き足立ちます」


「それより、えっとフローリアさん?これを彼女に着せてあげてくれ。目のやり場に困る」


「あっ、かしこまりました。ありがとうございます」


アイテム袋からツツルフルの衣装を取り出す。肌をさらしている女性をのぞき見ているようで落ち着かない。



「レンジは紳士なのですね。それに・・私の裸を意識してくださるのですね」ぽっ


「当たり前だろ。俺だって若い男だ、もう少し注意しろよ」


「私を女性として意識してくださって、紳士として助けてくださるのですね。やはり私の伴侶は貴方になって欲しいですわ。あんな乱暴な獣はいやです」


ククルチアはそう言って号泣しだした。



「領主にこんな事するなんて、そのバルタンて何?。宇宙人なのか?」


「うちゅうじん?が何処の種族か存じませんが、バルタン殿は冒険者貢献度が300を越えます」


「冒険者?こんな事したら死罪になりそうだけど」


「冒険者も功績が300を越えますと色々な意味で一目置かれます。功績が100を超えますと評価される活躍も難度の高い依頼に限られますので300越えですと英雄扱いとなり貴族といえども手が出せなくなります」


なるほど、ラノベで言うならSSランクみたいなものか。あれ、俺も300超えてるしSSランク扱いなのか?実力が素人なのに・・。



「ふむ。恐れ入りますがレンジ様。お嬢様を部屋まで運んでいただけませんでしょうか?。最近は腰が危なくて力仕事が出来ないものでして。ご案内もうしあげます」


「あっ、いいぜ。ククルチアは軽そうだし」


「もぅ・・。でも、申し訳ありませんわ。客人に運ばせるなんて」


彼女はまだ腰が抜けてて 立てないようなので、お姫様ダッコで運ぶことになる。嬉しそうに首に抱きつかれるとドキドキしてしまうのは許して欲しい。





執事に案内されて廊下を歩き、少し大きめのドアの前に来た。ここがククルチアの部屋なのだろうか?。

後ろでメイドのフローリアさんが息を呑んでいた気がする。



執事のレヨーゼフがドアを開けると 一気にざわめきが聞こえてきた。これは・・パーティ会場?。

執事は俺を見て何やら重く頷いている。



「ハハハ。戻ってきたか。俺との結婚を認める気に成ったようだな」


そこには30歳くらいのたくましい ブ男がいた。

近くには騎士団長が驚愕の顔でこちらを見ている。

この執事、やはり油断ならない。この短い時間に企んで俺を巻き込みやがった。 


しかし、まぁいい。

ククルチアを降ろしてメイドさんに預ける。


理屈ではない、偉そうにしているバカにムカツクだけだ。

ククルチアが大泣きしたのも分かる気がする。




「ククルチアは俺のものだ」


前に出て、奴を睨みつけて言い放つ。既に周りは静まり返っていた。



「あぁ?。ハッ。小僧、俺が誰か知らんらしいな」


「知るか」


言うなり、一瞬で奴の前に行き、驚く男の顔を下からアッパーカットで打ち抜く。


やはり、この世界の対人戦でボクシングは有効なようだ。動きが見えていない。


見事に決まったパンチでアゴの骨が変な音を出している。バル○ン星人の食生活は今後辛いものになるだろう。

もう少し力をセーブしないと不味いかもしれない。


この男が300超えの実力者というのは絶対イカサマだ。

ギルドマスターみたいな実力者の迫力が全く無い。




「ハーッハハハ。俺が手を出すまでも無かったな」


そこにはヤッちゃんもどきの強面をしたギルドマスターが大笑いをしていた。・・・いたのかよ。



「すごい。300超えのベテランが一瞬で倒されたぞ」


「あの者は誰だ。あれほどの実力者だ」


「ステキです。女性を守って戦うなんて。何てうらやましい」


あちこちからザワザワとささやきが聞こえてくる。

マズかった。また執事の手の上で踊ってしまった。



「ウラグス殿。あの少年をご存知なのですか。何者なのです」


ギルマスのオッサンはウラグスという名前だったのか。新発見だ。



「知るも何も、この男こそ 隣の国を発見し この街を発展に導いた冒険者だぞ。それに、レンジは此度の働きで貢献が300を超えた実力者だ。こんなエセ実力者など一瞬でぶちのめすのは当たり前なのだよ」


「「「「「「おおおおーっ」」」」」」


うあっ、このオッサン、せっかく秘密にしていたのにバラしやがった。そして、バルタンは やはりインチキ実力者だったようだ。


レンジは短期間のうちにギルドマスターも認めるほどの実力が付いていた事を実感していない。勿論、色々な知識や技術など 学ぶものはまだまだ多いのだが、命がけで大物の魔物を倒した事でハンパではないほど能力を引き上げていた。



「何を呆けておる。お前は領主を自分のものだと宣言したのだぞ。お前の実力を示さんと彼女の立場が無くなるだろう。領主は彼女のほうが向いているだろうが、パートナーとして堂々と矢面に立て」


「レンジ様、領主様を守っていただき ありがとうございます。貴方様をたばかった事、我が命を持って償わせていただきます」


「よせ・・」


「そうです。死んではなりません。償いは私の全てを捧げて行いますわ」


「「「「おおーーっ」」」」


俺の周りがグダグダになってきた・・。

この世界の結婚感がいまだに理解できない。



街の有力者が集まっていた会場でゴタゴタしたが、結果的に領主は人心を掌握することに成功し、彼女を中心に運営が進められていくことになった。


変な話だが、俺が後ろ盾に成った事で厚みが増した体勢に、安心して将来の希望を託せるという事らしい。


良くも悪くも、今回の騒動で俺とククルチアは 街をあげての公認カップルに成ってしまった。








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