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19、今思えば、知られざる妹

あっちは転生した。今の名前はミケランティア。


しかも、女子としては最強な美貌を持つというエルフ族よ。

これで人生勝ち組決定と赤ん坊の時は喜んだものでした。


しかし、


この世界の男達が女性に殆ど欲望を持たないと知った時は、

そのアドバンテージが 何の意味も無いと知りました。

何て残酷な現実でしょう。



前世では頑張って生きていたのに 核戦争が起こって、

選択の余地など無く死んでしまった。


生まれ変わりを管理するという偉そうな人に聞かれた。



「何か望みは有るか。少しくらいなら叶えよう」


いきなり死んで要望を問われても何も思いつきません。

唯一生きているときに心残りだった事があったので、


「おにいちゃんに もう一度会いたい」


と答えていました。


前世の私には年の離れた兄がいました。

思春期の高校生らしく 少しグレていたようですが

小学生だった私にはとっても優しい兄でした。


ある日の朝、いつものように学校にいったまま 行方不明となった兄。何の手がかりも無く、家出だろうと思われていました。


異世界に生まれたと知った時は、

(兄さんもこの世界に生まれたんだろうな)

と単純に結論を出し 納得していたものです。



**********




奴隷の子供を買ってしまった。

金貨6枚と言えば、慎ましく暮らす人が半年は生きられる金額らしい。だが、俺はこちらの世界の金銭感覚もろくに知らないうちに大金を手にしていたので 実感が全く無い。


子供はミケランティアという少し偉そうな名前だ。

彼女は転生者という前世の記憶が残された人らしい。

この辺もラノベで良くある事なので理解は早いし、

何よりローレシアさんで慣れていたので問題は無い。



「あっちは前世で 今川 さとみ という名前だったの」


自分の事を私ではなく、あっち と呼ぶ変わった喋り方をする子だ。

何か期待していた様だったが、俺には以前の記憶が殆ど無い事を話すとショックを受けていた。


今はツツルフルと一緒に 身の回りの物を買いに出かけている。

ツツルフルは親が言っていたように大変に賢い。

俺より早く この街での生き方を学んでいるようだ。


買い物にも慣れていて、留守番していた時に色々と見て回ったらしく 挨拶を交わす馴染みの店まであった。2人で並んで買い物をし、あれこれと話をすると彼女が出来た事を実感出来て嬉しい。2人ですると何でも楽しい、これが新婚生活というものか。


むむっ、考えたら まだ新婚生活も碌にしていないのに、子供が一緒に生活するって 早すぎる気がしてきた。





「はい、これ食べて」


「あ、ども・・」


「あんな所に居たから お腹すいたでしょう。遠慮しないで」


(この人・・すごく綺麗でかわいい。エルフだけじゃない、この世界は美人率高すぎる。ツツルフルさんって・・お兄ちゃんの恋人なのかな?)


公園のベンチで2人並んで屋台の食べ物を食べている。衝撃の出会いから少しして 私も少しだけ冷静になれた気がする。


行方不明のお兄ちゃんが 実は異世界に飛ばされていた! ・・・・、見つからないはずだよ。

自分の記憶が殆ど無かったなんて、ものすごく残念だけど、とりあえず出会えたから幸せだ。


今は主人と奴隷の関係なのか・・複雑な気分。

あれっ、でも、私の事を妹と思って無いし、奴隷だし、立場を使って襲われたらどうしよう。

でも、でも、恋人のツツルフルさんが居るから大丈夫、大丈夫・・なんだけど、少し寂しいのは何故?。



「ツツルフルさんはレンジに・・さんの恋人なの?」


「こいびと・・が何か分からないけど、私とレンジは つがいに成った。既に私にとってレンジは大切なオスで伴侶。子供が出来たら嬉しく思う」


「えっ、え、つがいって・・2人は既にそこまで行ってたの?」


「驚く事ではない。子を成す相手を見つけるのは難しい事。私は見つける事が出来た。だからそれを望む。ミケランティアとて、レンジを好きなら求愛してみるといい。彼は沢山の女子を幸せにする器量が有るから」


「きゅ、きゅ、求愛・・そんな・・」


真っ赤になって俯くミケランティアを優しく見つめるツツルフル。

自然な流れで言った彼女の言葉は、ミケランティアが 考えまいとしていた現実を意識させるのには充分な破壊力を持っていた。今は兄妹では無いのだと。



*********




「残念ながら、今は紹介できる空き家はございません。隣に新しい国が見つかった事で 仕事で移住される方が多く成った為、足りない状況となっております。申し訳ございません」


商業ギルドに来て家を探したが無かった。見つけた国が原因だなんて、自分で自分の首を絞めた形だ。

まだ留守番でローレシア邸に居られるから良いけど、あそこを引き上げるなら別の街に行って見つけるのも有りだな。



「おや、これはレンジ様。このような場所におられるとは以外でした」


「レヨーゼフさんこそ、領主様の側を離れるなんて珍しいですね」


この地の領主ククルチアの執事をしているレヨーゼフさん。領主を文字通り支えている出来る男の代表だ。ゆえに無駄な事では動かないので 今は相応の用事が有る事となる。



「レンジ様から委託されました商品を流通させているところです。あれだけの量と成りますので一度で売れる量も考えませんと値崩れしてしまいます。日々価格も変わるため頻繁に打ち合わせしなくてはならないのです」


「あー、何か面倒事を押し付けた形になりましたね、申し訳ない。今の話を聞いて、自分で売らないで正解だと思い知りましたよ」


「確かに大変ではありますが、この事で 商人達の動向も見ることが出来ますので、願っても無い事なのです」


そう言えば、商人達の扱いで頭を悩ませていたんだっけ。多少なりとも それを手助け出来たなら物資を渡した意味が有った訳か。



「して、レンジ様はどのような用件でこの場に居られるのですかな?」


「大した理由ではありませんよ。仲間も増えたのでそろそろ落ち着きたくて、家でも手に入れようとしたのです」


「ほほう。仲間が増えたのですか。女性の方ですかな?」


執事さんの目がキランと光った気がした。何か思うところでも有るのだろうか?。



「そちらの騎士団長がらみで奴隷を購入してしまいまして。相手は子供なので取りあえず落ち着こうと考えただけなんですよ」


「なるほど、なるほど。それは良い事です」


「でも街が賑やかになって空き家が無くなったそうです。ですから他の方向で考えて見ますよ」


「なっ、それはいけませんぞ!」


うおっ、びっくりした。この人が慌てた声を出すなんて 意表を衝かれてしまった。何故にそんな事で慌てるのか。この人の考える事は謎だ。



「これは、私としたことが失礼を致しました。それでしたら良い妙案がございます」


「ひょっとして空き家があるの?」


「はい。領主が家督を子供に渡して隠居した後に移り住む別邸がございます。そのため大きさも手ごろで居心地も中々宜しいようです。ご存知のように領主様は若く、その建物を利用するのは何時になるか分かりません。それならばいっその事 レンジ様にお譲りして領地発展の資金に回されたほうが得策かと存じます」


「別邸って・・何か凄そうな建物だけど、領地を発展させるほど高いなら俺が払うのは無理だと思うよ」


「いえいえ、今回売り出した物資の利益だけでおつりが来ますよ。レンジ様がもたらした物はそれほどの規模なのです」


どうやら気まぐれで買い物をしたことで家が手に入るかもしれない。日本では考えられない幸運だ。まだ誰も持ち込んでいない品々なので高めに取引がされているらしい。なので こんな美味しい事はそんなに長くは続かない。



「そういう事ですので、早速 領主様とお会いいただいて許可をいただきましょう」


「えっと、そう言えば、売ってくれるのが当然みたいに成っているけど、大丈夫なのか?」


「それはもう、ククルチア様は友人であるレンジ様には この地に暮らして欲しいと願っておりますゆえ」


「そういう事なら試しに会って見るかな。仲介役よろしく頼むよ」


「かしこまりました」


言葉は丁寧で、間違いなく盛り立ててくれる執事さんなのだが、何となく この人の手の上で踊らされている気がする。実は恐ろしい人なのかも知れない。






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