最終決戦兵器を探して
最終決戦兵器を探して
司令部を出る時、モジャは一台の軍用車を与えられた。
ガソリンは満タン。ついに本土で行われる最終決戦に備え、各地の武器庫をまわるための足だった。
モジャはその軍用車に乗って、渡された書類上の武器庫をめぐる任務を即時に開始した。
モジャは最初に、書類上で一番でかい武器庫に目をつけた。
そこには唸るほどの武器が格納されているに違いない。モジャはそう思ったのかもしれない。
または、距離的にもっとも近かっただけかもしれない。
あるいは、なにかその土地に思うところがあったのかもしれない。
選択の理由は明確にわからないが、モジャは書類上で一番でかい武器庫に目をつけた。
そして、モジャは軍用車を走らせ、一番でかい武器庫に向かって司令部を出発したのだった。
司令部の鎮座する町を出て、モジャは軍用車を走らせる。
すぐに町は背後に過ぎ去り、あたり一面の畑が現れる。
そこでは、残された女子供老人が、ひたすら農作業に従事していた。
この時代、食料は貴重品で、芋の葉まで食べる状況になっていた。
おがくずをまんじゅうに混ぜる。そんな実験までされていた。
本土防衛の任務につくモジャもまた、満足に食事をとれていなかった。
満足にとれないのは食事だけではない。
海水を輸血の代用に使用できないか? という研究までもが真剣に行われていた。
人の命を誘導装置に使い、敵軍へ突っ込む人間誘導爆弾は遠の昔に実用化されていた。
現人神が暮らす首都では、高度に文明化された飛行物体を落とすために、空中体当たりが実行されていた。
木製ボートの艇首部に爆弾を搭載し、敵艦へ突入する構想もあった。
絶望。
その一言がモジャの脳裏をぐるぐるまわる。
だが、その絶望を吹き飛ばす爆弾が、銃が、砲が、撃ち尽くすことのできないほどの弾薬が、ぎっちり詰め込まれた武器庫がこの国にはまだたくさんある。
モジャが手にした一覧表には、それらが数字となって確かに存在しているのだ。
モジャはそのことを思い、軍用車を走らせた。
やがて畑も過ぎ、モジャは緑あふれるこの国の美しい大地を走る。
そこには緑があるだけで文明がない。だから、武器も作らない。だから、敵も爆弾を落とさない。だから、この国の自然の光景は、美しいままだった。
それはなんだかとても皮肉めいていたけれど、モジャにはきっとその皮肉がわからなかったんじゃないかと私は思う。
モジャの頭にあったのは、任務と武器とやってくる本土決戦のことだけだった。私はそう思う。
森を抜け、峠を走り、山を越え、また森を走り、いくつもの村と畑を過ぎて、モジャは海辺の寒村にたどり着いたという。
その寒村に、一番でかい武器庫はあると記されていた。
カモメが舞い、魚の臓物が放つ匂いと潮風が混ざる村。それが、モジャがたどり着いた場所だった。
モジャは村人をひとりつかまえ、書類に記された武器庫の所在地を尋ねることにした。
村人は怪訝な顔をしてこう言ったという。
「ついに兵隊さんまで、魚を取りにきたのかい?」
その答えに、モジャはこの本土決戦の近いさなかに、こいつは何をまぬけなことを言っているんだと思ったという。
「詳細は言えないが、重要な任務でこの場所を探しているのだ」
モジャはそう言った。
「重要な任務ねえ…」
村人はまたも怪訝な顔をする。
その後もいくつか言葉を交わしたが、何がなんだか互いに話が噛み合わない。
「とにかく、この場所はどこにある?」
半ば頭に血が昇り語気強く問うと、相手は怪訝な顔のまま、指を海のある方向に向けた。
「兵隊さん。海までいって、浜辺を南に歩いてください」




