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最終決戦兵器ギョグー  作者: 悪魔の海賊出版


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勇猛果敢兵士モジャ

勇猛果敢兵士(ゆうもうかかんへいし)モジャ




 今現在から過去へと追いやられ、どんどんその輪郭(りんかく)をぼやかして幻のようになっていき、そのくせ架空の世界ではより鮮明(せんめい)に力強く色づき、ついには不死身の怪物として今現在に復活し、現実の世界にその毒牙(どくが)を再びかけようとさえしつつある、あの悲惨(ひさん)な戦争。

 この話は、あの悲惨な戦争の末期に存在した、恐怖の最終決戦兵器ギョグーについての物語だ。

 もじゃもじゃ頭の先生から、口伝によって私に伝えられた物語を、いま私は初めて文字にしている。

 もじゃもじゃ頭の先生もまた、口伝によってこの物語を伝えられたという。ただしこの私と違って、実際にあの戦争に軍人として参戦し、最終決戦兵器ギョグーにその手で触れた男から、先生はこの物語を伝えられた。

 長いので、もじゃもじゃ頭の先生は、これからは「モジャ先」とだけ記述(きじゅつ)することにする。

 モジャ先は言う。

「最終決戦兵器ギョグーについての公的資料は、今現在どこにも残存(ざんぞん)していない。だが、あの男が語ったことは絶対に真実であると、この私は確信する」

 あの悲惨な戦争がむかえた最後の夏。モジャ先の父は公的に「鬼畜ども」と呼ばれた敵軍の襲来(しゅうらい)に備え、本土防衛(ほんどぼうえい)の任務についていたという。

 モジャ先の父、いわばグレート・モジャ先。では長いので、以後は敬意(けいい)を込めつつも、元祖モジャ先、略して「モジャ」と呼ばせていただくことにする。

 モジャはあの悲惨な戦争がむかえた最後の夏、本土防衛の任務につきながら、空腹を抱え、その空腹の中をカラカラと音をたてるように、心をあちらこちらに揺れ動かしていたという。

 ラジオは、新聞は、勝った勝ったとはやしたて、またもイノベーションな方向転換(ほうこうてんかん)だと方針(ほうしん)を転進することを華(はな)やかに公式見解(こうしきけんかい)として発表する。1億総活躍(おくそうかつやく)し全員参加で過労死の末、鬼畜どもを撃滅(げきめつ)するのだと意気揚々。なのに、本土の上空には高度に文明化された者が飛ばす要塞のような物体が飛び、モジャとその大切な家族を間違いなく殺せる爆弾を腹いっぱいに抱えて、頭上に襲来(しゅうらい)するようになっていた。

 毎夜のように鳴り響く空襲警報(くうしゅうけいほう)。その警報のたびに、裏山に掘った自身の墓穴(はかあな)のような壕(ごう)に家族を逃げ込ませる日々。

 襲来がない時には座布団(ざぶとん)にもなる、この国が自画自賛(じがじさん)で世界に誇る多機能頭部保護装置を被(かぶ)り、真っ暗な壕の中で骨身からガタガタと震える母親の姿。その間に、高度に文明化された空飛ぶ要塞が、その腹からバラ撒く爆弾によってモジャの住む世界はどんどんどんどん焼き払らわれていく。

 憎い、憎い、憎い、憎い!

 愛する者を殺し、我が故郷を灰燼(かいじん)にかえるために飛来(ひらい)する、高度に文明化された空飛ぶ物体が!

 鬼め、鬼め、鬼め、鬼め!

 奴らは公的に「鬼畜」と呼ばれるにふさわしい!

 迫りくる高度に文明化された要塞のような飛行物体に、本土防衛の任につく者として敢然(かんぜん)とモジャは戦いを挑んだ。

 偉大なるビッグ・ブラザーから賜(たまわ)った「高角砲」をもって、迫りくる高度に文明化された要塞のような飛来物体を撃滅(げきめつ)するのだと、モジャは拳を固めて歯ぎしりし、その胸に戦意をたぎらせ、上空に向かって死を撒き散らす砲弾を打ち上げて、死の舞台へと誘う歓迎の弾幕をくれてやると息巻(いきま)いた。

 だが、その心意気(こころいき)と反して、高角砲はたいした戦果をあげられなかった。

 撃てども撃てども、落とせない。それでもあきらめず、撃てども撃てどもだ。

 憎しみを込め、愛する者を守るのだと、歯を食いしばり高角砲を撃ち続けるモジャ。

 それでも、モジャが守るはずの世界は日に日に焼き払われ、守るべき命は失われていった。もちろん、モジャが共に戦う仲間達の命もだ。

 転がる死体、焼け野原になっていく守るべき故郷、撃てども撃てどもただの一機も落とせぬ高角砲。なのに空襲警報の翌日には、ラジオは、新聞は、勝った勝ったとはやしたて、またもイノベーションな方向転換だと方針を転進することを華やかに公式見解として発表する。1億総活躍し全員参加で過労死の末、鬼畜どもを撃滅するのだと意気揚々と伝えるのだ。

 モジャは、もうおかしくなってきていた。

 悲惨な現実、転がる死体。膨れることのない腹、ガリガリになりつつある身体。まぎれもない死の恐怖に怯(おび)える愛する者の姿。

 それに反して意気揚々、朗々と語るラジオと新聞。もう何がどうなっているのかわからない。ただできるのは、偉大なるビッグ・ブラザーから賜った高角砲を空に向かって撃つことだけだ。頭上に爆弾が落ちてくることについて考えることさえ、もうやめていた。

 いっそ爆弾がこの頭上に降ってくればいい。そうすれば、この意味不明で不可解(ふかかい)を通り越し、ただの地獄でしかない現実をサッと消し去ってくれるから。

 だから、モジャはいかなる空襲にもただ一片の恐怖すら抱くことなく立ち向かった。もう死んでもかまわない。いや、むしろ爆弾で殺してくれ。だから、恐れるものなどもうなにもなかったのだ。

 降り注ぐ爆弾の中で、怒りを怒声にしてぶちまけ、空に迎撃の弾を撃つその姿は、勇敢極(ゆうかんきわ)まりない英雄と讃(たた)えられた。

 そんな英雄と呼ばれたモジャに、あの最後の夏、出頭命令がくだされた。

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