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帝都神獣守護録~花嫁と血筋の鎖  作者: 秋乃ねこ


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19/20

EP19

 人ではない相手に紗月は何も言えず、場の空気がぎこちなく感じて身の置き場に困る。


「ああ、ごめんね。この池には来たことはある?」

「え? あ、いえ。でも清原の屋敷にも池はありましたが」

「玄武殿がいるからね。知ってる? 朱雀の鳳家には森林があって、白虎の剣持家には岩場があるんだ」

「そうなんですね」


 清原家もこの九条家の屋敷は広大だ。きっとあと二つの屋敷も似たようなものなのは、容易に想像できる。


「やはり神獣様を従える四家は凄いです」

「知ってる? 実は神獣は俺たちだけじゃないって」

「青龍様たちにご兄弟がいるんですか?」


 さわさわ風が吹き、池の水が小さなさざ波を起こす。そして風が止まると「あはははははっ!」と青龍が盛大に笑い始めた。

 何か、おかしなことでも言ったかな。背中を小刻みに何度も跳ねさせながら、しばらく青龍は笑い続けていた。


「あーごめん。突拍子もないことを紗月ちゃんが言うから」

「突拍子もない、こと?」

「俺たちに兄弟がいる……ふふふ……兄弟はいないからね」

「はあ」


 何となく兄弟がいそうな気がしたけど、そうじゃないんだ。でもそれはどうやら人の感覚であるらしい。


「聞いたことはないかい? 麒麟殿の話しを」


 そう言えば昔、母からそんな言葉を聞いたような覚えがある。でもどんな内容だったかまでは、はっきりと覚えていない。紗月の様子を感じたのか、青龍は続けた。


「麒麟殿が現れる時、時の帝は賢帝の証であり、世の中の穢れを全て浄化し安定した時代になると、言われているんだ。まあ、現帝では絶対に現れないね」


 そうだ。母も同じようなことを言っていた。その時紗月はふと不思議に思い「浄化は、玄武の清原でもできますよね?」と、当時と同じ言葉を青龍に投げかけた。


「確かにそうだね。浄化や治癒は玄武殿、清原でもできる。でも麒麟殿はこの世の安定、浄化で、規模が違うと言えばいいのかなあ」


 青龍もどう説明していいのか迷っている。紗月は少し考えてから「根本的、ということでしょうか?」と聞いてみた。


「うん! そうだね。そういう事だ。清原は応急処置専門とすれば、麒麟殿は根源から正常に変えてしまう。玄武殿が聞いたら、落ち込んでしまうかな」


 ふふふ、持っていた扇子で口元を隠しながら笑っている。


「麒麟様は今、どこにいらっしゃるのですか?」

「さあね。麒麟殿は我々四神獣よりも上のお方。おまけに気難しいんだよね。だから滅多に姿を現さない。というよりも、麒麟殿のお眼鏡に叶う人間が出てこない限り、姿を現さないだろうね」

「麒麟様は前に姿を現したのは、いつなんでしょうか?」


 青龍は指を下りながら「うーん、二〇〇年? 三〇〇年くらい前だったかなあ」

 そんな前に現れてから一度も姿を現していないのであれば、人の記憶からも薄れてしまうのは当たり前かもしれない。


「麒麟様のお眼鏡に叶う方って、どんな方なんでしょうか?」


 青龍は眉間に皺を寄せ、視線は宙をさ迷っていた。そして「あの方の趣味?」と首を傾げながら返ってきた答えに「そう、ですか」としか紗月は返せずにいた。


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