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鬼神剣客伝【改訂版】  作者: 春好 優
第2章隠れ里
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第31話焦りと気遣い

お久しぶりです。すいません毎回おまたせしてしまって。申し訳ないです。

今日はこれを合わせて3話だけ投稿します。お楽しみに

「し、紫苑さん。ちょっと、待ってよ。はぁはぁ、流石に速いよ」


 玉子事件から数日、紫苑はずっと足を速めている。あの日から何かを不安そうにしてあからさまに行動を速くしていた。ルーナに合わせながら歩いていた時よりもずっと速く歩いている。そのため紫苑に必死について行こうとする彼女は既にヘトヘトだ。

 そんなルーナに気づかない紫苑になんとか追いついたルーナは紫苑の腕を掴んだ。


「シオンさん!ちょっと休憩しない?私もうヘトヘトだよ」


「す、すまぬ。気づかなかった」


 ルーナに掴まれてようやく気づいた紫苑は1度止まって申し訳なさそうに謝った。それに疑問を持ったルーナは思わず尋ねた。


「なんで急に急ぎ出したの?もしかしてテレスに何かあったの!?」


 最悪な想像をしてしまったルーナは紫苑に掴みかかる勢いで迫る。


「いや、そういう訳ではないのだが…すまぬ。今は分からぬが不安なのだ」


「……そっか。紫苑さんぐらいに強くても不安になることあるんだね。急ぐのはいいけどそんなに速かったら私置いてかれちゃうよ?」


「そうだな。気をつける」


「うん。お願いします」


 ペコッとルーナは頭を下げる。それに紫苑は力強く頷く。


「休息はまだいるか?」


「ううん。大丈夫だよ!不安な紫苑さんのためにも速く行こうね」


 小馬鹿にしたように笑うルーナにやれやれという感じで紫苑は頷く。

 そして再び足を進めた。そんな中、ルーナに合わせようと彼女の方をしっかりと確認しながら歩いていた。

 そうしているとルーナの歩き方がおかしい事に気づいた。

 昨日までのを考えるとぎこちない。歩きにくそうにしている。足を1歩進める度に痛そうにしている。もしかしたら自分のせいで彼女の足に負担をかけてしまったのではないかと考えた紫苑は問いかけた。


「ルーナよ。そなた足に怪我を?」


「えっ?そ、そんなことないよ」


「なら足を見せてみよ」


「うっそれは…」


「見ぬなら怪我をしておると見るぞ?」


「うー分かったよ。見せるよ」


 観念したようにルーナは近くの大きな木の根に座ると履いている靴と靴下を脱いだ。丸裸のようになった素足は血と皮で汚れていて生々しい。こんなになるほどに彼女に無理をさせていたことに紫苑は再度反省する。


「すまぬ。このような足で歩くのは辛かっただろう?」

 

「そんなことないよ。これぐらいへっちゃらだから。」


 見つかっちゃったよ、と子供がいたずらを見つけられたように笑顔を見せる。辛くないはずなのにそのような様子を見せない。しかしそんな笑顔はどこか貼り付けたようなものですぐに剥がれそうなぺらぺらな紙を顔に貼っているようだった。


「そんなわけなかろう。慣れぬ道をずっと歩いていたのだ。それに俺が無理をさせたのもある。辛かったら辛いと言えば良い。それくらいなんとも思わん。言われない方が心配するからな……軟膏を少し塗っておくぞ」


「う、うん。ありがとうシオンさん」


 紫苑は自身の鬼空之域から薬を取り出すとルーナの足に塗り始めた。ルーナは少しだけ別の方を向いている。何を考えているか分からなかったが少しだけ見える頬は赤かった。

 軟膏のついた手がルーナの足に触れる。


「イッ」


「すまん。少し染みるぞ」


「先に言ってよシオンさん!すっごく沁みたんだからね!」


「す、すまぬ。だが、悪いが我慢してくれ」


「イッ!?くぅー」

 

 怒りながら文句を言うルーナに謝りながらもそのまま塗っていく。優しくは塗っているがやはり沁みてしまうので仕方がないのだがその痛さのせいで喉から声にならない叫びをあげていた。そのせいでルーナは軟膏を塗り終わる頃には息もタヘタヘになっていた。


「よし。これぐらいで良いか。後は余りうごかさぬことだがあ……」


「うぅ。やっと終わったー。これ以上やってたら発狂してたよ!もう!…ん?動かさないならどうするの?」


 怒りながらもしっかりと紫苑の話を聞いていたルーナは疑問を口にする。確かに足を使わないで歩くことはできないのでどうするか分からない。思いつくのは治るまでここに留まると言うことだがそれは再開が遠ざかるということだし、今何かを心配している紫苑にも悪いことだった。


「やっぱりわたしある「ここは俺が背負うか」きます?えっどういうこと?」


「言うた通りだ。ほら乗れ」


 紫苑はルーナの疑問に行動で示した。彼女の前で膝を曲げて背中を見せる。もうこれでどうするかわかるだろう。

 ルーナの目の前には大きな背中がひとつ。これに乗れという意思が背中から感じ取れる。

 少し戸惑いながらもここで休むよりは良いかと考えたルーナは紫苑の肩に手を回す。するとそのまま紫苑は彼女の足に手をかけて持ち上げる。ルーナの体が一瞬ふわっとなるとそのまま大きな背中に体が密着する。

 心臓がドキドキと鼓動するのがルーナの耳に伝わる。それが紫苑に気づかれてないかと不安になりながらもなんてことないように別のことを聞く。


「重くない?」


「重くは無い。後は任せておけ。お主はゆっくりと休んでおれ」


 紫苑の体は動き出す。しかし体が一切揺れることも無くルーナに関してはすごく快適だ。人1人を乗せて走っているのにそれを無いかのように体が一切ぶれることも無く森の複雑な道を進む。草むらも大きな根も柔らかい土でも、それを踏んでもそれがルーナの体に伝わることもない。

 一瞬で変わる景色を不思議に思いながら彼の背中から伝わる熱にウトウトしながらルーナは少しずつ瞼を閉じ始める。


 (そう言えばシオンさん森の中なのに迷わず進めるのはすごいなぁ)


 景色が変わりにくい森の中を迷わず進んでいく紫苑に感心しながらルーナは紫苑の背中を枕にして薄暗い森の中で眠りについた。


 

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