第30話紫苑とルーナの2人旅2
お久しぶりです。1ヶ月後とか言いながら2ヶ月も消えてたものでございます。用事は終わったのにだらけてしまってました。すいません。
翌日
紫苑はいつも通りに朝起きると怪我をしたルーナのために薬草を探しに出た。痛み止めや回復が早くなるだろう薬草を。
季節的にはまだ夏だがそれも後半まだ暑い。だがそのおかげで紫苑が起きる時間はまだ明るく薬草も探しやすかった。
(これも師匠に教えてもらったおかげか。当時はよく使ったものだが今はもう要らぬことであるのにな。今になって役立つとは感慨深いものだな)
感傷に浸りながら野宿所まで帰るとそこには驚くべき光景があった。ルーナが普通に動いていたのだ。しかも自分から薪などを集めるために動いていた。
「怪我人が何をしておるのだ?」
心配してそういうとルーナは元気よく返事をした。
「あっおはようシオンさん!どこも痛くないから大丈夫だよ!」
怪我などしていなかった様子のルーナに困惑する。
「いや、そんなはずは…」
どこまで見ても元気な彼女に、骨を折ったものがあそこまで痛がらずにもの良く動けるものかと言葉を止める。
(俺は昨日、おかしなものを入れたか?いや、悪いことでは無いのだが人とはこのようなものであったか?)
絶対に違うという意見が出るだろうが紫苑の感覚は麻痺しているので今困惑しているところである。
昨日の鍋に薬草は入れた。変な味にならないように薬草に気をつけながら。骨折以外には特に怪我はしていなかったので塗り薬は意味が無い。どちらかと言えば自身の回復力に任せるしかないので仕方がない。なので自己治癒力と痛み止めの効果があるものを入れただけなのだがこの通り。ルーナは治っているようだ。痛み止めと言ってもここまでの効果があるわけが無い。とは言ってもいいことであるのに変わりはないのだが。
「まことに治っているのか?」
「うん。治ってるよ。ほらこんな動けるんだよ」
ルーナは体を動かしてアピールする。
「わかったから落ち着け。だが無理はするな」
「はーい」
紫苑は不思議そうにしながらも納得した。悪いことでは無いし、彼の感覚が麻痺していたからである。
本当に奇妙な出来事なのに。ここに誰かがいれば別だったのかもしれないのだが。
それからまた数日、森にも慣れたルーナは前よりもしっかりとした様子で森の中を歩いている。
「なかなか着かないね。シオンさん」
「森は広いからな。仕方あるまい」
口で不満を言いながら楽しそうに鼻歌を奏でている。
数日前はもっと進むスピードは遅かったが、段々と慣れてきたルーナは森の中を普通に歩けるくらいになっていた。そしてまた、弓の腕も上手くなり、1人で狩りをできるほどになっていた。だが、まだそれだけだともいえる。
そんな中進むのはアルゴス大森林。中心に行くほど危険な魔物も多くいるわけで大型の昆虫種の蜘蛛や蟻、他にもワイバーン、巨人種などの魔物が現れる。昆虫種などは低層域に現れるものがほとんどなのだがここにいるのは別格で巨大なものが多くいる。ルーナもクリスに守られていた時にみていたものよりも大きく驚いていたが紫苑が戦う時に弓でアシストしている。
歩いていると広い森を進んでいると、突然紫苑が止まり後ろを歩いていたルーナはそれにぶつかった。
「イタッ。う〜もう紫苑さんいきなり止まら「静かに」?どうしたの?」
文句を言うルーナは紫苑の言葉と様子に今までのことから気を引きしめる。紫苑は刀に手をかけ、ルーナはそっと背中にある弓矢を取り、構える。ここ数日で鍛えられた証拠である。
森の中心で警戒していると近くの草むらから音がしたのでルーナはそこに向けて矢を向ける。草むらの中ではずっとガサゴソなっていて何かがいるのは明確だ。
集中しているルーナの視界の端から何かが飛びかかって来た。急いで体をそちらに向けようとしても遅かった。既に目の前にそれは来ていた。だがそれと同時にルーナの後ろから風を切る音が聞こえた。
「油断大敵だ。気をつけろ」
気づけば紫苑が刀を抜き、切り払った後だった。見れば血を流し、既に事切れた黒い狼がいた。おそらく魔狼と言われる種類の魔物だろう。その鋭い牙と爪を見てもしもの事を考えればゾッとするだろう。
ルーナは少しどもりながらも礼を言う。
「う、うん。ありがとうシオンさん」
そのままルーナは心臓をバクバクさせながらまた弓を構える。
気づけば周りには魔狼の群れがいた。既に気づかれてるのを理解してか出てきたみたいだ。
仲間が殺されたと言うのに怖気付く気配すらなく逆に血の気が多い状態だ。ヨダレを垂らし既に2人を獲物として捉えている。
そんな相手にルーナが弓を射る。魔力が込められたそれは普通に弦を引いた時よりも強く飛び、風を裂いて突き抜けていく。たが、それを狼達は飛び退いて避けてしまった。
「あ、あれぇ?」
「避けられたか」
「魔力で強化してたのに…やっぱり奥に行くほど私って役に立たなくなってきてないかな?」
「仕方あるまい。そなた「」が武器を持ってひと月も経っておらぬ。まだ先は長い」
「でも練習したのに…」
自嘲気味にルーナは口を動かした。
「実力も経験も不足しておる。今はまだ勝てぬ敵がいても良い。そのためにも俺が居るのだからな。」
「うん。そうだね。これからもっともっと強くなって紫苑さんを超えるよ!」
「その意気だ。こやつらは俺がやる。そなたは木の上に登っておけ」
「はーい」
先程の一瞬の暗さもなくなり元気よく返事をすると紫苑が手伝うことも無くルーナはすぐに木の上に登った。まるで野生児のようだ。貴族の娘と聞いても誰も信じないだろう姿だ。
木の上でこちらを見ているのを確認して紫苑は刀を構える。
魔狼達はそのままスピードを活かして紫苑を囲って襲いかかる。その動きも見事なことで普通の人なら何処から来るか分からないくらいに動きが機敏だ。
突然、魔狼達がいっせいに紫苑に襲いかかった。紫苑の体をそれぞれ狙って対処されても確実にダメージを追うように狙ってきている。
それを紫苑は刀を構えて一気に横に切り裂いた。
「鬼樹流・鬼斬一閃」
瞬間、魔狼達が飛んだ方向と逆の方向に向かって宙を舞いながら血飛沫を上げて地面に落ちた。
それを見て他の魔狼達は警戒して動きを止める。
「どうした?もう終わりか?」
そう言葉もわかるはずもない魔狼に投げかけた。
それに反応したのか怒りを顕にするように魔狼達は唸り声を出す。けれどもその唸り声と睨みつける視線は威勢だけのようで一向に警戒して飛び出してくる様子もなかった。
紫苑も鬼では無い。(心がと言う意味で)襲って来れば応戦はするがわざわざ生きるために必死なものたちが逃げたところで追撃なんてしない。それが極悪な意思があって快楽のためだけに殺しをするものには容赦はしないが。そのため今手も出してこない魔狼達をわざわざ殺そうなどとは思わなかった。
もう終わりかと紫苑が思っていると中から1匹大きめの魔狼が出てきた。それは目のところに傷を負っていてまるで歴戦の戦士のような風貌だった。おそらく彼がボスなのだろう。雌雄は不明だがおそらく彼だ。
その魔狼は1度吠えると紫苑の方を見た。まるで決闘を申し込むように。
決闘を申し込まれた。そう感じた紫苑は1度夜叉を鞘に収めて礼をした。
刀をまた抜刀して構えをとる。ボスの方もこちらを見て姿勢を低くして構えをとっている。
少しの時間もなく先に魔狼の方が動いた。ものすごい速さで動きながらジャンプして首を狙いに来た。迷わず動く姿は勝道を辿っていたのかもしれない。だが紫苑がそれを許す訳もなくその道を切り裂いた。
魔狼がその牙を紫苑に届かせようとした時ついに動き出す。
牙が当たる寸前に少しのずらしだけで牙を避けるとそのまま宙を行く魔狼の下に入りカウンターを決める。
「鬼樹流・鬼瓦」
夜叉は切り上げられて魔狼の腹をきりそして次に袈裟斬りを実行する。この2回の動作が終わるまで一瞬だった。2回目の動作が終わるまで一切血が出ることは無かく袈裟斬りが終わって血飛沫を上げだ。それぐらいの速さのため魔狼は何も気づくことなくそのまま後ろの木に突っ込んだ。
バキバキバギィー
そんな破壊音が後ろで鳴り響いた。流石に何事かと後ろを見ていると樹齢何百年としていそうなぐらい太い樹が半分以上の太さをなくしていた。どうやら紫苑を噛損なったボスは彼の後ろにあった木に噛み付いたようだ。それにしても木を噛切るその顎の力と口以上の大きさに噛みちぎる破壊力は凄まじかった。
木の奥では口に気を含んだまま魔狼が絶命していた。それに紫苑は頭を下げた。
そんな中で半分以上の中心を無くした樹の運命は決まっていて斧で切られたあとのようにミシミシとなって傾き始めた。しかもその木には
「きゃー紫苑さん助けてー!」
ルーナが乗っていた。しかも枝がある場所が高いのでまあまあな高さだ。今のルーナでは確実に怪我をする高さだ。
「まずい!ルーナ飛べ、受け止める!」
倒れる木の中にいるルーナに紫苑は叫んだ。
その声が届いたのかルーナは思いっきり飛んだ。紫苑目掛けて。
そのまま落ちてくるルーナを受け止めた。
「怪我はないか?」
紫苑は腕の中にいるルーナに問いかけた。
「ッ!だ、大丈夫!ありがとう詩音さん!」
そう言いながら紫苑の胸を押して慌ててルーナは離れた。
「それなら良いが」
紫苑は安心したようにホッとする。しかし感情の表現が小さい顔では少しだけの変化だ。
そんな中ボスも倒され逃げたであろう魔狼達の方を見ればまだ残っていた。まだ戦う気があるのかと思っていると突然魔狼達が道を開け始めた。
何事かと思い奥を見ればそこには魔狼達とは違う白い毛並みを持つ狼がいた。何処か神聖で何処か近寄り難い雰囲気を持っている。
そんな白狼は魔狼達が開けた道を通って紫苑達に近づいてくる。
何かあるのかと警戒するが敵意が全くなく襲う素振りもなく堂々と近寄ってきた。
そのまま白狼は紫苑を人目だけ見るとルーナの方を向いた。
「えっ?私なの?紫苑さんじゃなくて?」
いきなりのことでルーナは慌て始めるがそんなとこも気にせず白狼はルーナをジッと見ると頭を差し出した。
「えっと、触ればいいの?」
訳が分からず紫苑に質問をするルーナだが紫苑も分からず首を傾げる。
「ううっ。えーと…失礼するよ?」
そっとルーナは白狼の頭に触れた。手はその豊満な毛並みに飲み込まれた。最初は険しかったルーナの顔もしだいに柔らかくなり崩れていった。
「詩音さん!すごくふわすわしてる!」
触る手を1つ増やしながらルーナは嬉しそうに紫苑に報告した。
「そうか。」
平然と答える紫苑だが内心困惑している。
ルーナがもふもふ気分を味わっていると白狼はふと頭をあげると魔狼達の方を向いた。
「あっ」
「ワオーン!」
白狼は空に向かって空気が揺れるほどの遠吠えを出した。
それを聞いた魔狼達は急にそそくさと逃げ出した。それを見送るとこちらを1目だけ見て去っていった。
その間にもルーナは名残惜しそうにまだ手を動かしている。
「私のもふもふ行かないで!」
「違うぞ」
「うぅ。もっと味わいたかったなぁー」
「いつまでも出来ん」
「もう!ドライだなぁ。詩音さんは!」
「いつもだ」
緊張が外れたルーナは色々と話し出した。元々の活発で明るい性格は健在で我慢することや落ち込むことはあれど消えることは一切ない。質問にも答えたりする紫苑だが反応は結構薄かったりする。余り表に出ないタイプではある。出る時は出るが。
そして障害が無くなった2人はまた歩き出した。
「そう言えば中心部の樹は鉄のような硬さだと聞いたことがあるが…」
「うそだぁー!そんの髪切れるわけ…ないよね?」
2人は今日も森を進む。
テレス達がエルフの里に着いた頃。
今日も2人は森の恵みを受けながら進んでいた。今日は特に何事も起こる事はなく終わった。
そして日が暮れ始めると野営場所を探しだした。今回は運がよく。テレスたちが使ったであろ居場所を発見して、そこを使うことにした。
暗闇の中で木々にわざわざ隠された場所なので火は使えない。狭いし危ないからだ。それに奥に行くにつれて夜に火を使うことはなくなった。休んでいる時に襲われては意味が無い。なので保存食や木の実などを使って食べるようにしていた。
そして時間も分からず暗い中で紫苑は刀を片手で抱きながら木にもたれかかる。いつものことならここで暇を持て余したルーナが話しかけてくるのだがその様子もない。ちらりと見ると何故か暗い中でそわそわしている。どうやら落ち着かないみたいだった。
そんなルーナを不審に思って紫苑は話しかける。
「どうかしたか、ルーナ?」
「えっ?ううん。な、なんでもないよ!」
いきなりのことだったからか話しかけられたルーナは思いっきり挙動不審に手を使って言い訳をする。月の光が微かに射す中で見る彼女は慌てたように目を不器用にキョロキョロ動かしている顔は何処か間抜けな表情で嘘をつくのが下手なのか正直に答えてしまっている。
しかしそのことに反して月に照らされた彼女の銀髪は幻想的に見えるので不思議なものだ。
そんなことも気にせず紫苑は彼女の言葉を切り裂いた。
「そうは見えぬが?」
「えっとそのぉー」
あからさまな様子に少しだけ呆れながら聞く紫苑。それに何か言い訳しようとしたのか口を開こうとするも何も飛び出すことも無く観念したようで固まっていた肩の力を抜いた、
その後彼女は旅の中で汚れたズボンに着いているポケットに手を入れた。そこから何を出すのかと紫苑が口を出さずに見守っているとそこから火の色に輝く物体が出てきた。
それは卵。紫苑の記憶でも見たことがないのでなんの卵であるかは謎だ。
大きさはそこまで大きくなく普通の卵の大きさだ。しかしそこから出る力は大きく感じる。どうしてここまで気づかなかったのかが気になるぐらいには。
「それは一体…?」
「今日の朝に起きたらポケットに入ってたんだ。どうしたらいいか分からなかったから黙ってたの。ごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げるルーナ。しかし紫苑は全く何も怒る訳もなかった。
「謝る必要はない。怒っておるわけではないからな。ただ心配はするからな。何かあっら言うてくれ」
「うん。これからはそうするね。…ところでなんだけど紫苑さんこれが何かわかる?」
悪い空気もなくなったため、火の色の卵を紫苑に差し出し質問をする。大体のことは紫苑に聞けば答えてくれからだ。しかし今回は紫苑も全然分からずにいた。火の色の卵、そんなもの人生で見たこともない。分かるとすれば普通ではない生き物では無いものが殻を割って出てくるということぐらい。しかしそんなことルーナもわかっている。それに魔物と言うには神聖さが感じられるものだった。
とりあえず差し出されたので受け取って観察をする。特に色が変わっている以外は鶏の卵と同じような感じだった。
「禍々しさない。どちらかと言えば神聖なものがある。とすればこれは…むっ!これは!?」
観察していると突然紫苑の手の中にある卵が禍々しく燃え始め腕を包み込んだ。
「えっ!嘘なにこれ!」
突然のことで驚き、慌てるルーナは咄嗟に水魔法を放った。けれどもその水は炎を消すことなく水を一瞬で蒸発させる。その間にも水に触れた炎は一切衰えることは無かった。
「嘘っ!何この炎消えない!紫苑さんとりあえず手を話して!」
「手が動かん!」
苦しそうに苦渋の表情を浮かべていながら一切呻き声を出していなかった。そのためルーナは紫苑が余裕なんだと感じていたがそれは間違いだと知る。
(すごく痛そう。一体どうしたら…そうだ私が持っていた時は何も無かったから私が持てば)
ゴクリとルーナの喉がなる。危険かも知らない。でもやらなければならない。ルーナは一か八かで卵に手を伸ばす。もしものために手を伸ばす速度は早く。炎の中に手を入れる時痛みを想像して目をつぶる。不思議と痛みも熱さもなく暖かかった。ルーナは紫苑から卵を取り上げると一瞬にして炎は収まった。
「はぁはぁ。良かった〜何とかなったよ〜」
「すまぬ。ルーナよ。腕は大丈夫か?」
「危なかったのは紫苑さんの方だよ?自分の心配してよ!もう」
「ああ、そうだな」
紫苑の腕は痛々しかった。身につけている着物も溶けていて腕は言うまでもなく爛れている。見ているだけで他人の心も痛くなるぐらいには酷い怪我だ。
「はっ早く冷やさないと紫苑さん腕を出して。水なら私が出せるから!」
急かしてくるルーナは気づいていなかったが紫苑は自身の腕を見ていた。腕に触れている木が火傷をしていることに。既に消えた炎がそこにあるみたいだった。
(獄炎ですら焼けぬ俺の肌を焼くとは。しかもこれは呪いの類い。先程の神聖さとは正反対だな)
使い物にならないものになった腕をルーナが魔法を詠唱して冷やしてくれている中で紫苑は冷静だった。ズキリと火傷跡がしても先程とは違い顔色を帰ることもない。感情がないのかと思うほどだ。
「なっなんで!」
「どうかしたか?」
「腕が全然冷えない!ずっと蒸発しちゃってるんだ!もう炎がないのに」
腕を見れば先程の炎が存在していた時と同じことが起きている。まるで腕に見えない炎が絡みついたように。
「仕方あるまい」
「仕方なく無いよ。私のせいで。あんなもの早く捨ててたら……」
「そなたのせいでは無い。俺が警戒せずに触れたのが悪い。それにあれは捨てずに持っておけ。あれはそなたを親と見ておるようだしな」
「親?」
「そうだ。俺が触れて殺しに来てそなたが持てば何も無い。卵の頃から既に自我があるようだな。だからお主を傷つけないのであろう。」
「でもあれは紫苑さんを傷つけたんだよ?」
困惑したように声を震わせる。紫苑の説明を聞いても迷うルーナは正しい。あんなもの持っていたらテレス達も同じことになるかもしれないのだから。
「そなたを親としておるのだ。捨てるのも酷であろう?」
「……紫苑さんがそこまで言うなら…持っておくよ。でも腕はどうするの?」
「どうしたものか…ん?」
使い物にならない腕を持って戦うのはやりにくい。そう考えてこれからの事を思案しようとすると先程まで痛んでいた腕から突然その感覚が消えてしまう。不思議に思い見てみれば火傷が段々と消えていっていた。
「紫苑さん腕か治ってるよ!」
先に口に出して言ったルーナは嬉しそうに言う。しかし紫苑は逆のことを考えていた。
(一体どういうことだ?ありえぬ。あれが生まれるまでは治らんと思っておったのだが。自然に治るほどあの呪いの焔は優しくはなかった。あるとすれば傷の肩代わりか…だがあれは主である俺が許可しなくては出来ぬはず)
何か嫌な不安を紫苑は抱きながらも色々と大変だったためにルーナを先に寝かした。ルーナも渋々ながらそれを受け入れた。
(八重香よ。お主何かしたのではあるまいな?………無事でいてくれ)
違う可能性がある中でほとんど断定に近いものを紫苑は感じていた。
そんな嫌な予感を抱きながら紫苑は木々の隙間から月を眺めた。
話もだらけてしまったなこりゃ




