小学生で事故に見せかけた殺人未遂
私の脳裏に刻まれたI藤J子の一番最初の記憶。それは子供の頃に殺されかけた記憶だ。当時私はまだ幼稚園に入学する前だった。J子は小学生だった。親に言われ、2人でお使いに出た。親は2人で手を繋いで行くように言われたので、私はJ子の手を握って近所の商店に出向いた。店に着くとJ子は私の手を振り払い、道路の真ん中で待つようにだけ言うと、さっさと一人で店に入っていった。私は子供だったこともあり、言われたとおりに道路の真ん中で待っていた。
「早く出てこないかな。」
そう思いながら道路の真ん中で立っていると、激しい衝撃に吹っ飛ばされた。走ってきたバイクに撥ねられたのである。次に覚えている記憶はバイクに乗っていたライダーに抱きかかえられ、私はぎゃんぎゃん泣きわめいている記憶。その私をJ子は店から出てきてアイスを食べながら無表情で見ていた。それから大騒動になり救急車が呼ばれ、その音を聞きつけた父と母が、もしやと思って駆けつけて来たのを覚えている。J子は両親が駆けつけて来たのを見ると、アイスを投げ捨てて、「雄二、雄二。」と泣き喚きはじめた。私は子供心に「嘘泣きだ。この女は自分の事を殺そうとしたんだ。」と漠然と思った。次に覚えている記憶。意識を取り戻した時に、真っ暗な中に小さなランプが付いた病室で意識を取り戻した事。母がリンゴジュースを飲ませてくれた事である。幸いな事に脳波の検査などを受けたが、どこにも異常は見られなかった。目が覚めた時に病室にはJ子は居なかった。両親がJ子が自責の念を抱くのを避けるために家に待機させていたのやも知れない。私は子供心にJ子が自分を故意に殺そうと思った事には気付いていたが、親には言えなかった。何故かは分からない。言わない方が良いと漠然と思ったからだ。今、考えればこれは大きな間違いで、ちゃんと話せば親はJ子の生れながらの悪の本性に気付き、実の母親の元に預けたのではないかと思っている。そう、J子は父の前妻の娘なのである。私の母親とは赤の他人である。私の子供ながらの善意で腐った悪党を一族から追放する機会を逸してしまった事には後悔しかない。だが私はその時まだ、幼稚園就学前。自らの考えを論理立てて親に話すことは無理だっただろう。こうして悪魔の娘、J子はその後も、平然として私と生活を共にする事になる。小学生で事故に見せかけた殺人を計画する犯罪者と。




