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回帰した悪役令嬢と出番ゼロの転生魔王 ~二人揃えば原作改変なんて余裕です~  作者: シャロ


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悪役令嬢と魔王➁

冷たい静寂が広間を包む中、彼女の怨念に満ちた告白は続いた。

「そこから先は悲惨でした。私が男爵令嬢をいじめた、嫉妬でおかしくなったという根も葉もない噂が流れました。男爵令嬢の教科書や靴が隠された事件も、すべて私のせいにされた。私はやっていないと訴えても、皇太子殿下は男爵令嬢の言葉だけを信じ、学園全体で私を悪者に仕立て上げたのです。そして舞踏会での婚約破棄……さらには身に覚えのない人身売買や、皇帝陛下暗殺の罪まで着せられ、私は牢屋にぶち込まれました」

「固いパンと濁った水しか与えられない冷たい牢獄に、何日も閉じ込められました。そこへ……あの男爵令嬢がやってきたのです。私を見下ろし、嘲笑いながら言いました。『惨めね。でもね、全部私が仕組んだことなの。真実を知ったところで誰もあなたを助けないわ。いくら叫んでも誰も信じない』と」

エレノアの目から、血の滲むような涙がこぼれ落ちる。

「あいつはさらに笑いながら言ったのです……『そうそう、皇帝陛下を殺したのも私よ』と。私は激怒し、牢屋の隙間から手を伸ばしてあいつの首を掴もうとしました。『貴様! 何をしたか分かっているのか!』と叫ぶ私に、あいつは鼻で笑いながら『あなたにはもう何も残っていないのよ。ほら、土下座したら牢屋から出してあげようかしら?』と言い放ちました。私は『お前に頭を下げて生き延びるくらいなら、死んだ方がマシだ!』と拒絶しました」

(おいおい、皇帝陛下暗殺の犯人が男爵令嬢本人だったのかよ!? 原作では持病だったはず。原作のヒロイン、清純派どころかタダの殺人鬼でサイコパスじゃねえか……! 妹もさすがにそこまでのネタバレは知らなかったはずだぞ)

息を呑む側近たちを余所に、彼女はさらに言葉を重ねた。

「その後……今度は皇太子殿下と男爵令嬢の二人が牢屋にやってきました。皇太子殿下は偉そうに『少しは頭が冷えたか? 心から謝罪するなら牢から釈放してやる』と言い、男爵令嬢は彼に抱きついて『さすが未来の皇帝陛下、器が大きいですね』とおもねっていました」

エレノアは狂ったように、くくっと低く笑った。

「許す? 誰が誰を? 未来の皇帝陛下?……バカもここまでくれば笑い草ですわ。皇太子殿下が困惑したように『エレノア?』と私の名を呼ぶ中で、私は抑えきれずに叫びました。『何も疑わず、そこの男爵令嬢の言葉だけを信じて私を牢屋に入れた挙げ句、上から目線で許すだと? ふざけるのも大概にしろ! 全部こいつの自作自演だということにすら気づかないのか! お前の頭はお花畑か! 何が次期皇帝だ、お前には皇帝ではなく道化師がお似合いだ! そもそも、私が好きで貴様と婚約したとでも思っていたのか!? こんな身勝手でバカで間抜けな男のどこに惚れるんだ! 皇帝陛下にお願いされたから我慢していただけだ! そして……お前の隣にいるその女こそが、皇帝陛下を殺した犯人だ!』と」

大広間に彼女の叫びが響き渡る。前世の最期に放った、魂の怒りそのものがそこにあった。

(すげえ……圧巻の啖呵だな。バカ皇太子も叩きのめされて呆然としただろうな。)

「私は二人に向かって言い放ちました。『殺してやる。お前たち全員、絶対に殺してやる。死よりも恐ろしく、生まれてきたことを後悔させてやる』……そう叫び、私は奴らの前で、自ら舌を噛み切って死んだのです」

全てを語り終えたエレノアは、荒い息をつきながら真っ直ぐに俺を見つめた。

(自ら舌を噛み切って死ぬって……どれだけの激痛と憎悪だったか。そこまでの地獄を味わってもなお、折れずに復讐を誓うこの女……本物だ)

「ですが気がつくと、私はあの凄惨な舞踏会会場……まさにあの男爵令嬢の言い分を鵜呑みにした皇太子殿下から、婚約破棄を突きつけられているその瞬間に時間を巻き戻して戻っていました。二度目の今回は、あいつらの茶番劇を黙って最後まで聞くつもりなど毛頭ありませんでした。言いたい放題に言い放っている真っ最中に、私はそのまま会場のベランダへ駆け出し、迷わず飛び下りたのです。そして必死で追手を振り切り、死に物狂いでここまで辿り着きました。神がくれたこの二度目の人生……私はあの二人を絶対に許さない。魔王陛下、どうか私に……あの者たちへ相応しい地獄を与える力を下され!」

凄絶な過去を聞き終えた俺は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。

漆黒の外套をなびかせ、魔王城の天井を揺るがすほどの笑い声を響かせる。

(婚約破棄の最中にベランダからダイブ!? 行動力が突き抜けすぎてて最高だわ! 妹よ、お前の推しは想像以上の逸材だったぞ。隠居生活なんて知るか、この激アツな原作改変シナリオ、乗らない手はない!)

「ハッハッハッハ! 素晴らしい! 最高だエレノア! 己の舌を噛み切ってまで執念を燃やすか! 良いぞ、その怒り、その憎悪……我が全て買い取ってやろう!」

俺は彼女の前まで歩み寄り、その前に手を差し伸べた。

(よし、完璧な魔王ムーブが決まった。設定資料の賑やかしでしかなかった出番ゼロの魔王だけど、今日から俺がこの物語の主人公だ。あのバカ皇太子とサイコパス男爵令嬢に、妹の代わりに叩き潰してやる!)

「お前の知る『未来』と、奴らへの尽きぬ憎悪を我に捧げよ。俺が……いや、魔王の全力を以て、そのバカ皇太子とクズビッチに、死すら生ぬるい最高の絶望を届けてやると約束しよう!」



見てくれてありがとうね♧

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