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第1話 【降臨】白の特攻服は、聖女の輝き!?

それは今から二十五年前、瀬戸内の荒波が育んだ一人の少女が、歴史の表舞台――ではなく、異世界のド真ん中に殴り込みをかけた瞬間の記録である。

広島の街で鳴らす子悪党も泣く子も黙るレディース『烈風華れっふうか』の二代目総長・カオル。彼女の人生は、敵対チームとの抗争へ向かう途中、原チャリごと土手から垂直落下したことで一変した。


「……あァ? どこや、ここは。地面が妙にぬるぬるしとるじゃん」

気づけばカオルは、淡く発光する神聖な泉のド真ん中に立っていた。

周囲を見渡せば、きらびやかな法衣を纏った老人たちが、床に額をこすりつけて涙を流している。


「おお……ついに、ついに我が国の危機に、伝説の『白き神衣』を纏った聖女様が降臨された……!」

神官たちが崇めるその『白き神衣』とは、背中に金糸で【 全国制覇 】【 咲かせてみせます愛の華 】と極太の刺繍が施された、カオル愛用の特攻服(ロング仕様)のことに他ならなかった。


「聖女ぉ? 誰が聖女やねん。てかお前ら、ウチの地元より治安悪そうな格好しとるのう。ここがどこだか知らんが、ウチを落とした土手の奴ら、どこにおるんや。焼き入れてやるけえ、ツラ貸せや」

凄まじい眼光でメンチを切るカオル。その圧倒的な覇気に、神官たちは「これぞ悪を排する聖女の神威……!」とさらに激しく咽び泣いた。


そこへ、騒ぎを聞きつけた王宮の近衛兵たちが、一人の青年を先頭に割って入ってきた。

鎧の隙間からでもわかるパツパツの筋肉、そして冷徹なまでに整った顔立ち。彼こそが、名門伯爵家の嫡男であり、若くして実力でその座を掴み取った近衛騎士団長――のちのナオミの父親である。


「静粛に! 異界の門が開いたと聞いて駆けつければ……おい、そこの不審な衣服の女。何者だ。速やかに身元を明かせ」

青年騎士団長は、腰の聖剣に手をかけ、カオルを鋭く睨みつける。


だが、レディースの総長が、男の視線ごときに怯むわけがなかった。カオルはふっと鼻で笑うと、特攻服のポケットに手を突っ込み、青年の一歩手前までズカズカと歩み寄った。


「あァ? 奇遇じゃね、ウチもいま、お前と同じこと思っとったわ。そのパツパツの鎧、ウチの地元のゾクの特攻服より窮屈そうじゃん。名門だか何だか知らんが、ウチに指図するんなら、それなりの『気合』見せてからにしんさいや、お兄さん」


「なっ……言葉遣いを慎め! 私は王命を帯びた騎士団長だぞ!」


「知るかや。ウチの世界じゃな、声のデカい奴が一番偉いんじゃ!」

異世界ファンタジーの常識が、広島のヤンキー精神によって木っ端微塵に砕かれた瞬間だった。


これが、のちに国を揺るがす「最強の伯爵夫妻」の、最悪で最高な出会いであった。

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