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第22話 遅れてきた王様、驚愕する

「――ナオミッ! 今助けに行くぞ、無事でいてくれ……ッ!!」


轟音と共に、廃倉庫の分厚い壁が外側から爆散した。

土煙の中から現れたのは、フル装備の王宮騎士団を率いたレオン様。その手には聖剣が握られ、銀狼の魔力が猛々しく渦巻いている。


……そう。私がさっき「大人しく待ってなさい」と言い残して、匍匐前進で消えたあの場所から、彼は必死に壁をぶち抜いて追いかけてきたのだ。


だが、レオン様が目にしたのは――。


「……あ、陛下。遅かったわね。もう終わったわよ」


そこには、もはや人影一つない。

あるのは、粉砕された檻と、散らばった高級フルーツの皮、そして私がへし折った鉄パイプの残骸だけ。

モヒカン山賊たちは、私の「ケツバット宣告」に腰を抜かし、文字通り脱兎のごとく国境へと逃げ去った後だった。


「……ナオミ。貴様、一人で奴らを追い払ったのか?」


「ええ。事務職の『棚卸し(物理)』で、不良在庫を一掃しといたわ。……あ、でも気をつけて。あいつら、ただの変態だから」


レオン様は、もぬけの殻となった倉庫と、ナオミの拳一つで解決された「世紀末の惨劇」を交互に見比べ、戦慄の後に……深い、深いため息をついた。


「……やはり、俺のつがいは最高だ。この武勇、この冷徹さ……。……惚れ直したぞ、ナオミッ!!」


「ちょっ、今私汗かいてるから抱きつかないで! 張っ倒すわよ!!」



翌日。王宮の執務室。

事件の事後処理を終えた私は、レオン様に事の顛末を報告していた。

あの山賊たちが「モフモフへの愛」ゆえに暴走し、リーダーが月光鳥にケツを叩かれて悦んでいた、あのある意味地獄絵図のような真実を。


「……というわけで、あまりに不潔だったから、最後は鉄パイプでケツバットしてシマから追い出したわ。二度と来ないでしょうね」


私が報告を終えると、レオン様が椅子から立ち上がり、ゆっくりと私に近づいてきた。

その目は、いつになく真剣で、どこか獲物を狙う獣のような鋭さがある。


「……ほう。ケツバットか。……ナオミ。昨夜、貴様は俺を置いて一人で行ったな? その『お仕置き』が必要だと思わないか?」


(え……。まさか、レオン様。私にケツバットするつもり……!?)


私は一瞬、身を硬くした。

いくらなんでも、没落令嬢(現・受付嬢)の私が、王様にケツを叩かれるなんて……。


だが、次の瞬間。レオン様は私の前でくるりと背を向け、四つん這いに近い姿勢で……【自慢のケツを差し出した】のだ。


「……さあ、ナオミ。俺にも『メンテナンス(成形)』が必要だ。昨夜の分も込めて、俺のこのケツを……存分にバシバシしてくれッ!!」


「…………。…………は?」


私は、持っていたティーカップを落としそうになった。

違う。そうじゃない。お仕置きって、そっち!? 叩く側じゃなくて、叩かれる側なの!?


「……キモいーーーッ!!」

「あ、ひゃんっ!!?」

私の羞恥心と怒りが限界突破し、手に持っていた(なぜか新調した)鉄パイプが唸りを上げた。


【ナオミ流・事務職フルスイング】


「――場外ホームランよッ!! 事務用品として成仏しなさいッ!!」


パッカーーーーンッ!!!


執務室の窓を突き破り、王宮の彼方へと飛んでいく銀色の閃光(レオン様)。

空には、キラリと光る星が一つ。

……誰か。この国、王様から山賊まで、変態しかいないんだけど。

私はチベスナ顔で、遠くへ消えた王様を見送った。


(つづく)


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