あなたのためのデウス・エクス・ラットゥス
冷たい刃のような、冬の空気を顔面に浴びたサトシが、我に返ったかのように周りを見回した。
生物園の前は猫とネズミの鳴き声以外に何もなく、異国の光景は最初からなかったかのように消えていた。おそらく、同じ思いだったのか、横にいるイロハも同じようにキョロキョロと顔を動かしている。
一方の、原初の猫とサナエは凍り付いたかのようであった。サナエは目を大きく見開き、仰ぎ見るかのように背後の黒い影を見ている。だが、原初の猫も何かを言うわけでもなく、ただ硬直するばかりであった。
『これが、余の一族の物語である』
最初に口を開いたのは、王様グンディだった。左の前足で持っている赤い宝玉の杖を掲げながら、王様は話を続ける。
『王様ネズミの祖は、決して神と貴様を裏切ったわけではない』
『シカシ……ドウシテ……』
『どうして、貴様のもとへ早く来なかったのか、であるか?祖は世界を揺るがす魔物との戦いで力を使い果たしていた。そして、子孫と眷属たちに貴様を探すように頼んだのだが、ことごとくうまくいかなかったと伝わる。眷属たちの力をもってして、何万年も足跡さえたどれなかったのか疑問であったが、今ならなぜか推測できる』
そこまで言うと、王様がサトシの方を振り向いた。
『下僕、原初の猫がいた村、つまりこの女の村の名前は何であった?』
『え、ええっと、確か、ねなし、でしたっけ?』
『では、その漢字は?』
『根っこの根に、果物の梨、でしたっけ?サナエさん?』
思わず向こう側に確認してしまったサトシへ、サナエは何も言わずに小さくうなずく。その様子を苦笑いするかのように軽く頬を歪ませた王様グンディが、軽くひげを揺らした。
『全く仕方のない下僕よ。だが、本来の漢字は違うのであろう、憑代の女よ。子に無しで、子無ではなかったか?』
『えっ、待ってくださいよ!つまり、ネズミがいないってこと……?』
サトシの疑問に、サナエも原初の猫も一切反応をしなかった。代わりに応えたのが、イロハの口を借りた王様猪である。
『ご名答だよ、小童。名前の通り、根梨は昔からネズミが全くいない村だったらしいねぇ。風の噂には聞いていたけど、キジがいたのだったら納得だよ』
『だが、それが裏目に出たようだな。そのせいで、余の眷属がその村の真相を掴むことができなくなってしまったのだから』
『ネズミフゼイガ、ボクヲグロウスルカ!』
原初の猫が、怒りを滲ませた口調で喚く。だが、その声に震えが帯びていたことは、サトシでさえ察してしまえるものであった。
『愚弄?まさか。この一件は余の一族に責がある。砂漠にこもることなく、再び探し出さなかったこと、それが余の一族の落ち度である。そして、その償いを今から行うのだ』
王様グンディがそう宣言すると、サナエのほうへ歩み寄る。そうして、サナエの足元にたどり着くと、深紅の宝玉が付いた杖を原初の猫へと差し出した。
『受け取るがよい。わが祖が神と交わした約束、今果たそう』
『ア、アア……カミサマ……』
原初の猫が、その影を震わせながら杖を受け取る。グンディ用のサイズでしかなかった杖は、徐々に大きくなりあっという間に一メートルほどの長さの杖となった。
杖はまるで黒檀のように漆黒で、夜の中でもわかるほどの光沢を帯びていた。それを握りしめる黒い霧が唐突に崩れ落ちた。いや、崩れ落ちたのではない。その杖を覆うように身を屈め、再会を喜ぶかのように嗚咽していたのだ。
『これで、貴様もまことの意味で神の弟子であるな』
『ボクガ……カミサマノ……?』
『当たり前であろう。神が与えた杖を持つ生き物であるのだからな』
その言葉に、一層咽ぶ原初の猫に、唐突に声がかけられた。
「待ってください、大猫さま。復讐は?盗人への復讐はどうするのですか?」
必死の形相でそう言うサナエへ、王様グンディが呆れるように返した。
『分からぬか、女?もはや誤解は解けた。復讐は無為になったのだ』
「そんなっ!?そうしたら、私はどうなるのですか!」
原初の猫の震えが止まった。サナエは畳みかけるように叫ぶ。
「あなたに従って、手を汚してきた、私は……!もう、私には何もないのに!」
血を吐き出すかのように絞り出された言葉に、原初の猫も王様グンディも、何も言えない。代わりに沈黙を切り裂いたのは、サトシであった。
「何もない、は違うと思いますよ、サナエさん」
「黙っていて!サトシくん、私のことを何も知らないでしょ!」
「いや、知ってますよ。この生物園で、いくらでも」
「そんなの、演技でしかないの!ここでの態度なんて——」
嘲るかのように顔をゆがめるサナエに、サトシは真剣な表情で返した。
「演技なんかじゃないですよ。真剣に動物たちを世話する姿も、グンディたちのために努力していた姿も。全部、本当のサナエさんです」
「ち、ちが……あんなのは、仕事だったからやっていただけ。本当は嫌で嫌で——」
「メウェの子供たちへ、あんなに親身になってくれた箱音さんが?」
遠慮がちな、それでもしっかりとした口調で、イロハが口をはさむ。その口調は、王様猪のとは違う、本来の彼女のものであった。
「箱音さんが、最後まで赤ちゃんたちを救おうとしていたの、知っています。その後、何もできなかった私をずっと慰めてくれていたことも」
「違うの、イロハちゃん!そんなの、いくらでもできるのよ。私は、あなたたちを油断させようとしただけなの!」
「でも、私にずっと寄り添ってくれていたことは本当です。そんな箱音さんが、私大好きでした」
「僕も、サナエさんが何もないなんて思いません。そんなこと、言わないでください……」
イロハとサトシの言葉で、何も言えなくなったサナエへ、王様グンディが告げた。
『二人ともよく言った。そこの女、もう充分であろう。そして、原初の猫よ、貴様へふたつ頼みがある』
そう言うと、王様は頭を下げる。
『まずは、この戦いで傷ついた者たちを共に助けようではないか』
***
幸運なことに、猫にもネズミにも死んだものはいなかったらしい。
『フンッ。命を失うことはないし、無益に殺生するなと言っておいたからな』
サトシの疑問に軽く鼻で笑った王様グンディは、列をなして待つ戦傷ネズミやネコたちを治療している。
イロハとサナエは、草陰や見えないところに怪我している生き物が残っていないか探しに行った。生物園の前の開けた場所には、サトシと王様グンディしかいない。真っ先に顔の怪我を治してもらったサトシは、治療を待つ生き物たちの列を整理していた。
『良かったんですか?サナエさんと迎江さんを一緒にいさせても』
『問題はあるまい。もはや、憑代にも原初の猫にも戦う理由はない。それに、万一があれば付き添っている我が眷属たちが守ってくれよう』
『そうなんですね……ああ、次はこの黒猫ですね』
治療されたモルモットがテクテクと歩み去り、体中に噛み傷のある、黒い猫の前に王様が立つ。猫は痛そうにしながらも、不審そうな目を王様へとむけていた。
『安心するがよい。余に二心などない。疾く、傷を見せるがよい』
王様は、ネズミだけでなく猫の怪我もみていた。博愛の精神からなのか、あるいはただの余裕の表れなのかはサトシからは分からない。しかし、王様が先ほどまで殺し合いをしていた相手にまで、誠実に治療を施していることは確かであった。
治療の終わった王様グンディが、猫の周りをクルクル回り怪我がないか確認しおえると、次の患者のもとへ向かった。すぐそばで尻尾がちぎれかけ痛そうにキーキー鳴いネズミの横に王様が立つと、杖を一振りする。
ちぎれかけていた尻尾が瞬く間に傷口がふさがる。ケガなど最初からなかったかのようにうれしそうな鳴き声を出すネズミに王様が軽くうなずいた。
『他は大事なさそうだな。ではもう良いぞ』
ドブネズミが感謝するかのように一礼する。チュルチュルと鳴いたネズミは二三度その場でくるくる回り、去っていった。
『今のは、なんて?』
『ふふっ。『保存食』だけでなく、ケガまで直してくれるなんてありがとう、と言っておったわ』
『保存食?チモシーでもあげたんですか?』
『いいや、数ヶ月ほど前に余の侍女を攻撃した『無礼者』をな。まあよい。次のものはどれだ?』
前言撤回、博愛の精神など王様には無縁のようである。そう思える不穏な発言があったが、深く聞く気も起きず、まだまだたくさんの怪我した生き物たちがいることもありサトシは今の話を無視することにした。
「あの!王様、丑前さん、戻りました」
しばらく猫やネズミの怪我を治していると、見回りをしていたイロハとサナエが戻ってきた。
「怪我をしている動物たちは、見当たりませんでした。ここにいるのですべてだと思います」
『ふむ、それは重畳。では、原初の猫よ、残りの治療の手伝いをしようではないか』
原初の猫が治療に加わったことで、怪我している生き物の数はあっという間に減っていく。一時間もしないうちに、うめき声や痛みをこらえる鳴き声も消え、辺りはもとの静かな公園へと戻っていた。
『手伝ってくれたことに感謝するぞ、原初の猫』
『ボクノケンゾクモチリョウシタ。ソレニコタエタダケダ』
『礼くらい、素直に受け取ったほうが良いぞ。まあよい、今日はこれで十分である。余は、貴様らが壊した王国を直した後、妃と王子たちを迎えに行かなければならぬ』
そう言った王様が、今度はイロハのほうを向いた。
『王様猪よ、そちにも感謝する。そちがいなければ、このような結果にはならなかったであろう』
『礼なら、イロハちゃんに言うことだねぇ。わたしぁ、この子の頑張りがなければここには来なかったんだからねぇ』
イロハの口を借りて、王様猪がのんびりした声で返す。
「あの、ひとつ良いですか?原初の猫の杖がなくても、魔物でしたっけ?それは大丈夫なんですか?」
『心配かい、小童?安心するといいさぁ。もう、魔物は永遠に動かないよ』
サトシの不安に対して、王様猪は愉快そうに答えた。
『若い王様ネズミ。あんたたちが去ってからも、ずうっと見守っていたネズミたちにも礼を言っておくんだね。あの子たちが魔物の最期を見届け、杖を拾ってくれたんだから』
『ふむ。確かに承った。砂漠に残ったものたちにも会いに行くとしよう。だが、まだやらねばならないことがある』
王様グンディは、今度はサナエのほうを向くとチュルルと鳴いた。
『冬至が近い。原初の猫よ、大地を鎮めるための儀式を共に行おうぞ』
***
冬至の日は、あっという間に訪れた。
雲ひとつない星空の下、王様グンディと原初の猫が静かに向かい合う。杖の先端にある宝石を地面に向け、日付が変わるのをじっと待っていた。
『時間であるな』
日付が変わり、王様グンディが言った。公園の中で一番大きな芝生スペースには、サトシとサナエしかいない。王様が人払いの呪文を公園にかけたため、フラフラと入り込む人もいない。夜遅い時間であるため、イロハは直接参加せず、サトシのスマートフォン越しに儀式を眺めていた。
『では始める。……掛けまくも畏き、天地の始めより在りまして、万物の命を守り給ひしかみの御名を称えまつる』
王様グンディと原初の猫が、揃って呪文を唱え始める。古の祝詞を思わせる言葉が、遮るもののない公園に響き始めた。
『——彼の世の闇より生まれ出でし禍津日神の眷属どもが、大地を揺るがし、天を覆い、天乾ち地亡ぶる夜をもたらしたること、かみは御知しめしき』
その時、急に大地が揺れた。木々がざわつき始め、祝詞を止めようと音を立てる。だが、王様と原初の猫の呪文が止むことはない。風の音を貫く声が、サトシたちの体で響き、増幅され、満ちていった。
『——彼の世より来れる禍津日の眷属どもよ、聞けよ聞けよ。汝らが這い出でし穴は今ぞ閉じられん。汝らが渡りし橋は今ぞ朽ち落ちん。汝らが在るべき彼の世へと帰り去れ。帰り去ることあたわずんば、その力をことごとく削がれ、眠りにつくべし』
唱えられている呪文の意味は、サトシには半分も分からない。だが、呪文が効いてきたのか、地面の揺れが弱まつつあった。
『——掛けまくも畏きかみの御心のままに、此の祓い清めの言の葉を捧げまつる。祓いたまへ、清めたまへ。現世に在るすべての命の安寧を守りたまへ、幸えたまへと、畏み畏みも申す』
祝詞を唱えきった刹那、二本の杖から白い閃光が地面に向かって零れ落ちる。閃光が地面に触れた途端、最後のあがきとばかりに地面がドン、と揺れ、次の瞬間には元通りの静かな公園となった。
『これで今年の使命を果たした。しかし、よくぞ大祓の言葉を知っていたな』
『ボクモカミサマノデシダ。コレクライノコトバハシッテイル』
『ならばよい』
そう言うと、王様グンディは冬の寒さで枯れかけた芝生の上へ座り込む。
『して、貴様はこの後、どうするのだ。余と共にこの地を治めるか?あるいは、昇天して、神の御元へ行くか?』
『……ボクニカミサマノトコロニイクシカクハナイ』
サナエの背後で、黒い靄が揺らめいた。とても静かで、わずかに震える声がサトシたちの脳裏に響く。
『ボクハコノセカイガオワルマデ、コノセカイニイル。ソレガ、ボクニデキルカミサマト、アラビィヘノツグナイダ』
『殊勝なことであるな。でもよいのか?この世界はなかなかにしぶといぞ。なんせ五万年前の大災害でも、滅ぶことはなかったのだから』
『カマワナイ』
『おふたりとも、ちょっとよいかなぁ?』
会話に割り込むような少女の声がスマートフォンから響く。サトシがスマートフォンの画面を王様たちへ向け、王様猪が通話越しに話をつづけた。
『かみさまはねぇ、もうじき目覚めるよぉ。もうすこししたら、またそっちへ戻ってくるからねぇ』
寝耳に水な事実を聞き、サトシとイロハが目を見開く。同じ思いだったのだろう、原初の猫も大きく揺れ動いた。
『カミサマガ!ホントウナノカ!?』
『嘘じゃないさ。たった数万年の辛抱さぁ。そうしたら、キジもまたかみさまに会えるよ』
『ソウカ……タノシミダヨ……』
そう言った原初の猫が、サナエの背後から離れていく。靄は芝生の上で形を変え、やがて白い絹のような毛並みにところどころ黒い柄のある、美しい猫が現れた。
『サナエ、イママデセワニナッタナ』
『大猫さま!私は、どうすれば……』
『スデニセキヨリトキハナタレタ。サナエハジユウダ』
『そんな、私はそんなもの、いらない……いらないです!』
『ボクハナンマンネンモイカリトフクシュウニトラワレテキタ。ボクノヨウニナッテハイケナイ』
『でも、でもぉ!』
『サナエハツヨクテカシコイ。ズットミテキタカラホショウスル。ボクニイウシカクハナイ、ケドイワセテホシイ。シアワセニナッテ、サナエ』
そう言った原初の猫は再び黒い靄になる。そのまま、薄れていって、虚空へと消えていった。
『……殊勝が過ぎるな』
原初の猫が消えた空を見つめながら、王様グンディがポツンと呟く。そうして、まだ嗚咽するサナエのほうを向いて、言った。
『憑代の女、そなたの主がああ言った以上、もはや貴様を縛るものはない。それを放り出されたと思うのは自由であるが、余から言えることはただ一つ。原初の猫のねがいを無下にするでないぞ』
そう言うと、王様はサトシへ向かって言った。
『我々も引き上げるとするか』
『えっ、あっ。はい』
座り込み泣き続けるサナエを置いておくことに後ろ髪を引かれる。それでも、サトシは王様グンディに従い、振り向くことなく生物園へ戻った。
『これで、今年も安心して年を越せる……ああ、そうだった。下僕よ、そこに立て』
しばらく歩いていると、突然命令されたサトシは生物園の入り口の前で直立する。そんな彼に、王様グンディが杖を向けると、そこから黄色い閃光が放たれサトシの体に当たった。
暖かい液体が体中に広がる感覚がする。突然のことにキョトンとするサトシへ、王様が言った。
『貴様にかかっていた呪いを解いてやった。この一年、大儀であった』
慌てて、スマホの画面をのぞき込む。まだついているイロハとの通話画面の右側には、一年ぶりにネズミ顔ではないサトシの顔が写っていた。
『わあ、丑前さん!元のお顔に戻ったんですね!』
『本当だ!確かに治って……あれ、なんで一対だけひげが残っているんですか!?』
よく見ると、左右の頬に一本ずつひげが残っているサトシへ、王様がフフッと笑う。
『それは、余の下僕であることの証明よ。安心せよ、それ以上は毛が増えることはない』
『おやおやぁ。それはそれで、男前じゃないかぁ、小童』
『まったくよ。ところで、そちは、どうするのだ?』
クスクスと笑う、王様猪に王様グンディが質問する。王様猪は笑うのをやめ、イロハの口を借りて答えた。
『どうもしないさぁ。わたしはまた眠りにつくだけさぁ』
『えっ!?そうすると、もう会えないのですか?』
『そうだねぇ。こんなふうには話せないかもしれないねぇ』
イロハが、自分の中の王様猪に聞くが、返ってきたのはあっさりとした答えであった。
『でも大丈夫だよぉ。わたしは、イロハちゃんをずうっと見ているからねぇ。それじゃあ、わたしも失礼するかのぉ。みんな達者でねぇ』
『貴様もな』
画面越しのイロハが瞳と口を閉じた。再び、口を開いたとき出てきたのは、イロハ自身の言葉であった。
『行っちゃいましたね』
『そうであるな。では、もう我々も休むとするか。侍女も休むがよい』
『……はい。おやすみなさい、王様、丑前さん』
そう言って、イロハは通話を切った。後に残されたのは、サトシと王様グンディだけであった。
『下僕、余は疲れた。疾く、余の住まいへ向かえ』
サトシは、王様をそっと持ち上げると、従業員口から生物園に入る。生物園の当直は王様の魔法で眠っているらしく、サトシたちは誰もいない園内をゆったりと歩いた。
『でも、サナエさんはあのままでよかったのでしょうか?』
バックヤードを行く長い廊下でサトシが、心の中でわだかまっている質問をする。すると、王様は、にべもなく答えた。
『それは、自分で考えるがよい』
『でも、まだ自分にできることがあったんじゃないかって思うんですよ。たとえ今ではなかったとしても』
『そう思うのは自由だが、あの女の抱えるものは貴様ごときがどうにかできる代物ではないぞ』
それは、本当なのであろう。サトシは歩きながら心の中で瞠目した。
『……それでも、です』
『強情であるな。だが、嫌いではない。よく考えてみることだ』
サトシたちは、展示室についた。グンディたちを展示する一角では、ヒーター付きの擬岩の上でアンドレとその子どもがウトウトしながら待っていた。
『王さま!おかえりなさい。さあ、ライラも挨拶するの』
『下僕、それに大きいの!おかえりなさい!』
『アンドレにライラよ、ただいま戻った』
ガラス板をすり抜け、王様が展示の中に入ると、小さいグンディたちへ声をかけた。王様とライラ、アンドレが挨拶をするかのように鼻先をくっつけあう。
『それにしてもライラ、もう寝ないと偉大な王様ネズミにはなれないぞ』
『ふんっ!アタシは、寝なくたって大きくなれるわよ!』
『そうであるか。では、余と共に、寝屋へ向かおう……ああ、下僕よもう下がってよい』
王様たちが巣箱に入り、砂漠を模した展示はがらんどうになった。サトシは、ひと欠伸をすると、自身も帰るべく外へと向かったのだった。
次回、最終話の予定です。




