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ザ・ロイヤル・グンディ~王様ネズミはワガママかわいい~  作者: 三田春日
第三部:小さな砂の王国よ、永遠なれ
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もうひとつの寝物語

──これはのう……さっき話したお話の、もう少しだけ続きなんじゃ。

 この村の猫たちそして人間たちが、代々そう信じてきた、もうひとつのお話さ。


──むかし、むかし、かみさまがまだ世界におはしたころのお話じゃよ。


 そのころ、かみさまのそばには、いつも一匹の猫がおりました。

 白と黒のまじった、小さな猫でのう。昼はかみさまの足元をちょろちょろと歩き回り、夜になると、その膝の上で丸くなって眠る、そんな猫じゃった。


 その猫は、かみさまのことが大好きでな。

 かみさまが呼べば、どこへでも駆けていき、落としものがあれば探し、泣いている子がいれば先に見つけて知らせる。

 自分にできることは、どんな小さなことでも、どんな大変なことでも、手伝っておったそうな。


 そんな猫だから、かみさまの体の具合がしだいに悪くなっていることも、知っていたのじゃ。

 だから、少しでも楽になるようにと、東へ走り、西へ走り、冷たい水を運び、薬になる草を集め、疲れたかみさまの代わりに、人やいきものの様子を見て回っておったんじゃ。


 そして、ある日のこと。

 とうとう、かみさまは自分の足で動けなくなったのよ。


 猫は、胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。

 けれど、泣いているひまはなかった。世界にはまだまだ心配事が山のように残っているからの。


「わたしが代わりに巡ってくる」

 そう心に決めた猫は、かみさまの看病を、一緒にかみさまに仕えていたネズミに頼んだそうな。

──そう、このころはネズミと猫はまだ友達だったんじゃ。


 猫は、親友のネズミへ頼んだ。

 水を飲ませること。風が当たらぬようにすること。なにか変わったことがあれば、すぐ知らせること。

 猫は何度も何度も言い聞かせ、そして世界へ走り出した。


 山を越え、川を渡り、森を抜けて。

 猫は休まず歩き、世界でおこった悪いことに立ち向かった。小さな体をふるわせながら、ただ、かみさまのために。


 けれど……。


 長い旅を終えて戻ってきたとき、そこにいたのは、静かに横たわるかみさまの姿でした。

 その顔はとても穏やかで、まるで深い夢の中にいるようでした。


 かみさまは、もう眠りについておられたのです。


 猫は何度も呼びました。

 小さな声で、そして大きな声で。

 けれど、かみさまは二度と目を覚ましませんでした。


 そのとき猫は知ったのです。

 もう、永遠に、かみさまと会えないのだと。


 しかし、猫は一つ疑問に思いました。


 かみさまが眠りについたとき、ネズミはどこにいたのか。

 なぜ、看病を怠ったのか。

 なぜ、猫に何も告げずに去ってしまったのか。

 なぜ、かみさまが大切にしていた杖がなくなっているのか。


 でも、猫にはもう確かめる術がなかったのじゃ。

 ただただ、猫の胸には深い悲しみと恨みだけが残っていたそうな。


 こうして猫は、今でもネズミを追いかけ続けているそうな。

 恨みは消えず、失ったものへの悲しみは、どれだけ年が経っても消えないということなのじゃろ。


 難しいことは、まだわからなくていい。

 ただ、覚えておおき。


 わたしたちは、その悲しみを受け継いでいるじゃ。


 さあ……もう目がとろんとしてきたね。

 今夜はここまで。続きは、また大きくなってから。


 おやすみ。

 いい夢を見るんじゃよ。


***


 幼い頃の『私』に、この話を聞かせてくれたのは祖母だった。

 それから何年もたった。大人になった『私』は、時折この話を思い返すことがある。


 本当に、ネズミは裏切ったのだろうか。

 本当に、杖は奪われたものなのだろうか。


 グンディたちを見ていると、どうしても疑問が湧いてくる。

 この子たちの祖先は、本当に「悪いこと」をしたのだろうか。


 でも、伝わる話を信じないわけにもいかない。

 猫神さまへの忠誠は、『私』の誇りなのだから。


 『私』は、答えの出ない問いを抱えたまま、今日もあの場所へ向かう。

第三部の始まりです。

とある人物が幼少期に聞いた、もうひとつの寝物語です。

イロハが聞いた物語と見比べてみると、何かが少し違うようで……?

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