表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/40

第26話「未来の覚悟と、仲間たちの逆襲」

 新年で賑わう神社の境内。その一角だけが、凍てつくような緊張感に支配されていた。


教団の精鋭『審問官』と名乗る男たちが放つ、禍々しいオーラ。それは、今まで対峙してきたクロウやサイガのような、どこか詰めの甘いポンコツたちとは明らかに異質だった。こいつらは、本気だ。


「どけ、元JESUSの裏切り者。我らの目的は、滅びの鍵ただ一人。貴様らに構っている暇はない」


審問官の一人が、未来をゴミでも見るかのような目で見下し、手を払うような仕草をする。

すると、地面から鋭い岩の槍が何本も突き出し、未来へと襲いかかった。


「危ない!」


俺が叫ぶより早く、レイジが未来を突き飛ばし、その場から回避させた。


「ふん、僕のプリンセスと未来を傷つけることは、この僕が許さない!」


「あなたたち、教団の中でも過激派で有名な連中ね……!こんなところで騒ぎを起こして、ただで済むと思っているの!?」


レイジとアカネが、それぞれ未来の前に立ち、審問官たちと対峙する。


だが、相手は格が違った。


「黙れ、ポンコツども」


 審問官が指を鳴らすと、レイジとアカネの足元に、まるで魔法陣のような文様が浮かび上がり、二人の動きを完全に封じてしまった。


「なっ!?体が……!」


「くっ、これが審問官の『言霊拘束』……!まずいわ、手も足も出ない……!」


レイ-ジとアカネ、二人がかりでも、一瞬で無力化されてしまった。審問官は、もはや邪魔者はいないとばかりに、ゆっくりとルナに歩み寄る。


「さあ、来るんだ、滅びの鍵よ。お前の居場所は、そんな偽りの日常の中にはない」


「いや……!」


俺は、震えるルナの腕を引き、背後にかばう。だが、足がすくんで動けない。圧倒的な力の差を、肌で感じてしまっていた。


その時だった。


俺の前に、再び、小さな背中が立ちはだかった。


「……まだ、私がいます」


未来だった。

彼女は、ゆっくりと立ち上がると、審問官たちをまっすぐに見据えた。その瞳には、もう恐怖の色はない。あるのは、静かで、しかし燃えるような、強い覚悟だけだった。


「……先輩」


「未来?」


「私、ずっと考えてたんです。私にできることは、何だろうって。先輩の隣にいるルナさんを見て、何度も、諦めようと思いました。でも……」


未来は、一度、言葉を切った。そして、決意を込めて、続ける。


「でも、やっぱり、ダメでした。私は、先輩が好きです。そして、ルナさんも……もう、私にとって、大切な友達なんです。だから、決めました。この恋が報われなくてもいい。でも、二人が笑って過ごせる日常は、私が、絶対に守り抜く!」


彼女がそう叫んだ瞬間、未来の体から、淡い光が溢れ出した。


「な、なんだ、この光は……!?」


審問官たちが、驚きの声を上げる。


 未来は、胸元で輝く小さなペンダントを、強く握りしめた。それは、JESUSのエージェントに与えられる、ただの認識票ではなかった。


「JESUS最終プロトコル、コード『ガーディアン』……限定起動!」


未来が叫ぶと、ペンダントから放たれた光が、彼女の全身を包み込む。光が収まった時、そこに立っていたのは、純白の軽装甲に身を包んだ、まるで戦乙女のような姿の未来だった。その手には、光で形成された二本の短剣が握られている。


「そ、それは、JESUSが開発した決戦兵器『Gシステム』……!なぜ、お前のような落ちこぼれがそれを!?」


「私は、この力を、自分のためじゃなく、大切な人を守るために使います!」


 次の瞬間、未来の姿が消えた。

いや、常人には捉えられないほどの速度で、審問官の一人の懐に潜り込んでいたのだ。


「なっ――ぐはっ!?」


閃光のような斬撃が、審問官のローブを切り裂く。

圧倒的なスピードと、パワー。これが、未来の秘められた力……! 


「おのれ、小娘が!」


残りの審問官たちが、一斉に未来に襲いかかる。

だが、その時、レイジとアカネを拘束していた魔法陣が、パリン、と音を立てて砕け散った。


「……ふう。助かったわ。あの子、あんな力を隠していたなんてね」


「ああ。だが、僕たちも、ただ見ているだけでは騎士の名が廃る!」


アカネが扇子を構え、レイジが薔薇(どこから出したんだ)を口にくわえる。


「援護するわよ、未来!」


「行こう、アカネ!僕たちの愛のコンビネーションを見せる時だ!」


「誰があなたと愛のコンビよ!」


 アカネの扇子が起こす風が、審問官たちの視界を奪い、レイジが投げた薔薇の花びらが、彼らの足元を滑らせる。それは、相変わらず直接的なダメージにはならない、ポンコツな援護だった。


だが、その一瞬の隙が、未来にとっての決定的なチャンスを生み出した。


「はあああああっ!」


未来の双剣が、審問官たちを薙ぎ払う。

黒いローブの男たちは、なすすべもなく吹き飛ばされ、神社の石畳に叩きつけられた。


「……ありえない。我ら審問官が、たった一人の裏切り者に……」


審問官たちは、ほうほうの体で立ち上がると、忌々しげに呟いた。


「……覚えていろ。滅びの鍵は、必ず、我らが手に入れる……」


そう言い残し、彼らは煙のように姿を消した。

戦いは、終わった。


「……はあ、はあ……」


未来を包んでいた光の鎧が消え、彼女はその場にへたり込んだ。


「未来!大丈夫か!?」


「……はい。なんとか……」


俺が駆け寄ると、未来は、少し照れくさそうに笑った。

その笑顔は、いつもの健気な後輩の笑顔だった。


「すごいじゃないか、未来!君は、まるで戦場の女神のようだったよ!」


「まあ、私の足元にも及ばないけど、少しは見直してあげてもいいわ」


レイジとアカネも、それぞれの言葉で彼女を称える。

そして、ルナが、おずおずと未来の隣にしゃがみこんだ。


「……未来さん。ありがとう、ございます。私のために……」


「ううん。言ったでしょ?ルナさんは、もう、私の大事な友達なんだから」


 未来は、そう言って、ルナの手をぎゅっと握った。

その光景は、まるで姉妹のようで、温かくて、でも、少しだけ、切なかった。


 俺は、そんな彼女たちを見ながら、強く、心に誓った。

未来が、命がけで守ってくれたこの日常。

今度こそ、俺が、俺自身の力で、守り抜かなければならない、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ