表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/40

第25話「初詣と、おみくじの行方」

 コンビニの半額ケーキで祝った、ささやかだけど温かいクリスマスから数日。街はあっという間に年の瀬の雰囲気に包まれ、そして、新しい年が明けた。


「あけましておめでとう、カイト!」


「おう、おめっとさん。今年もよろしくな、ルナ」


 元旦の朝。俺とルナは、こたつでぬくぬくしながら、テレビの正月特番をだらだらと見ていた。これもまた、平和な日常だ。


すると、スマホに未来からメッセージが届いた。


『先輩、あけましておめでとうございます!よかったら、これからみんなで初詣に行きませんか?』


 メッセージには、未来と、なぜかレイジとアカネも一緒に写っている写真が添付されていた。どうやら、この三人で新年早々集まっていたらしい。組織の垣根を越えて、すっかり仲良くなったのか、あいつら。


「初詣か。まあ、行くか」


「はつもうで?それは、美味しいんですか?」


「いや、食いもんじゃねえよ。神様に、今年一年のお願いをしに行くんだ」


「お願い……!行きたいです!私、カイトともっと一緒にいられますようにって、お願いしたいです!」


 そんなわけで、俺とルナは、未来たちと合流して、近所で一番大きな神社へ初詣に行くことになった。


 神社は、晴れ着や着物姿の人々でごった返していた。

俺たちは、人の波に揉まれながら、なんとか本殿までたどり着き、賽銭を投げて、それぞれに手を合わせる。


(……今年も、この平和な日常が、続きますように)


俺が神様にそんな現実的なお願いをしていると、隣ではルナが、ものすごく真剣な顔で、長い時間手を合わせていた。

参拝を終え、次はおみくじを引くことになった。


「わあ!いっぱいくじがあります!」


「よし、じゃあ、今年の運勢を占ってみるか」


俺、ルナ、未来、レイジ、アカネ。五人それぞれが、おみくじの筒を振る。


「私は……『大吉』!やったわ!これで、今年はカイトを確実に射止められるわね!」


「僕は『吉』か。ふっ、だが、僕の運命は、僕自身が切り開くものさ」


「私は『末吉』……。微妙ですね……」


アカネは大喜びし、レイジはキザに決め、未来は少しがっかりしている。

そして、俺は……『凶』。新年早々、ついてない。


「カイト!私はどうですか!?」


ルナが、わくわくした顔で、おみくじを俺に見せてきた。

そこに書かれていたのは、『大吉』の二文字。


「おお、すげえじゃん、ルナ!大吉だぞ!」


「だいきち!やりました!」


ルナは、子供のようにはしゃいで喜んでいる。

俺は、彼女のおみくじに書かれている内容を、読んでやることにした。


「えーと、なになに……『願望ねがいごと:思うがままになるでしょう』。すげえな」


「『病気やまい:治るでしょう』。まあ、健康ってことだな」


「『失物うせもの:見つかるでしょう』。へえ、記憶とかも、見つかるかもな」


俺がそこまで読んだ時、未来が「あ!」と声を上げた。


「先輩!その下!『待ち人』のところ、なんて書いてありますか!?」


未来に言われて、俺は「待ち人」の項目に目をやった。

そこに書かれていたのは、思わず息をのむような、一文だった。


『待ち人:便りなく、来る』


「……たよりなく、きたる?」


どういう意味だ?

俺が首を傾げていると、アカネが「それはつまり、予期せぬ形で、待ち望んでいた人が現れる、ということよ。私の愛読書ラノベにも、そういう展開があったわ」と、得意げに解説してくれた。


待ち人……。

ルナにとっての、待ち人。それは、彼女の過去を知る人物、ということだろうか。


記憶が戻ることを望んでいないと言っていたルナ。もし、そんな人物が現れたら、彼女は……俺たちの日常は、どうなってしまうんだろう。


 さっきまでの和やかな空気が、少しだけ、不穏なものに変わる。俺は、その不吉な予感を振り払うように、わざと明るく言った。


「ま、まあ、おみくじなんて、ただの占いだからな!気にすんな!」


「はい!」


 ルナは、何もわかっていないのか、こくりと頷いた。

だが、未来だけは、そのおみくじの言葉の意味を、俺と同じように重く受け止めているようだった。彼女は、心配そうに、ルナの横顔を見つめていた。


その時だった。


「――見つけたぞ、滅びの鍵」


 冷たく、低い声が、すぐ近くから聞こえた。

振り返ると、そこに立っていたのは、神社の人混みにはあまりに不釣り合いな、黒いローブを纏った男たちだった。教団の連中だ。しかし、クロウやサイガではない。もっと、禍々しいオーラを放っている。


「あなたたちは……!」


アカネが、驚愕の表情で彼らを見ている。


「教団の『審問官』……!なぜ、あなたたちがここに!?」


「紅月アカネ。貴様の体たらく、上層部はお怒りだ。もはや、お前たち現場の者に、任務は任せられん」


審問官と名乗る男は、アカネを一瞥すると、その冷たい視線をルナに向けた。


「滅びの鍵よ。我らと共に来てもらう。世界の終焉は、我らの手で管理されねばならん」


男が、ルナに向かって手を伸ばす。

まずい!BBQの時とは、明らかに空気が違う!こいつらは、本気だ!


俺がルナの前に立ちはだかろうとした、その時。

俺よりも早く、一人の人物が動いた。


「――させません!」


未来だった。


彼女は、おみくじを結ぶための木の枝をへし折り、即席の武器として構えると、審問官たちの前に立ちはだかった。


「ルナさんには、指一本触れさせません!彼女の平穏な日常を、これ以上、壊させはしません!」


その瞳には、もう迷いはなかった。


 それは、スパイとしてでも、恋する乙女としてでもない。ただ、大切な「友達」の幸せを守ろうとする、一人の人間としての、強い、強い意志の光だった。


 おみくじに書かれていた「待ち人」。

それは、過去からの使者か、それとも――。

新年早々の平和な初詣は、突如として、新たな戦いの舞台へと変わってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ