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1. 今後の行動指針

ルイーズと少し話した中で、いくつかの今後の方向性は見えた。

とはいえ、ここまで完璧に状況が変わったからには、考え直さなくてはいけないだろう。


リアムやベアリング卿にせよ、テイラー先生にせよ、やたらとこのゲームのキャラに関わらざるを得ない状況になるなとは、思っていたけれど。

アイリスと知り合ってからでさえ、私自身は如何にゲームの展開に関わらずにいられるか、ということだけ考えていた。

記憶を探っても、友人からはセオのこともイライザのことも、全く聞いた覚えがなかったし。

――もう何度目のどうしようもない後悔だけれど、彼女の話をもっと真剣に聞いておけば良かった。


イライザ・ハーヴェイが、このゲームにおいて一体どんな役割を果たすのか。

攻略対象キャラの幼馴染みで婚約者候補というだけで、ヒロインにとって厄介なライバル令嬢になることは、十分考えられる。

ただ、私がこれまで聞いていたイライザの性格からは、そもそもの彼女が悪い人間とは思えないのだ。

こういうタイプの話の場合、ヒロインにとって障害になるだけで、故意に邪魔をする悪役タイプでないことが多い。

この前、アイリスとセオが出会ったのが、ゲームの正式なイベントなのだとしたら。イライザとアイリスは、ゲーム内でも友人のはずだし。

となると。

もしアイリスがセオのルートに入っても、私が身を引けば丸く収まるのだろうか。

というのが、今の私が一番楽観的に考えられる展開だ。


けれど、鬱ゲーと呼ばれるゲームで、そんな展開が成り立つのだろうかとも思う。

今までは何も言われていなかったけれど、もしルイーズが言っていたように、親同士の意思でセオと婚約をさせられるとしたら。

いくら星詠の神子といえど、曲がりなりにも貴族令嬢の婚約者に手を出すのは、この世界でも御法度だろう。

しかもセオと私の関係は、間違いなく親同士の仲に起因するわけで。私たち二人だけでなく、家同士の問題でもある。

セオがもしアイリスを選んだとしても、現状では爵位を継いでいるわけでもない彼の感情だけで、婚約を解消することができるとは思えない。

そうなれば。


「どう考えても、邪魔な私が死ぬやつよね…」


考え得る最悪の事態を想像してしまい、思わず声に出して頭を抱える。

どういうタイプの展開になるかはわからないけれど、私がいなくなれば、その面での障害は解決する。

事故死や病死なら、展開的には簡単そうだけれど。

病み死にゲーである以上、そこまでの展開は色々あるとしても。

最終的にセオから…ということは、十分考えられる。

念の為にと選択したとはいえ、本気で自分の身を守る必要がでてくる可能性が生じた今となっては、護身術を習っておいて、結果的には良かったのかもしれない。

全く嬉しくないが。


これまで、自分自身の次はセオと思っていたけれど。

ここに来て間違いなく、そうも言っていられない状況になってしまった。

セオのことも、このゲームの展開から守れたらと思っていたのに――なんなら、本人にも言ったばかりにも関わらず。

これ以上首を突っ込むと、私の命が危ない。


かといって今更、私が彼らから引いたところで、話が進んでいくのを止めることができるのかといえば。

既にセオとアイリスは出会っているし、なんなら好感度を左右するイベントであろう慰問に行くことも、確定している。

それでも、もし今後アイリスがセオのルートに入らなければ、なんとかなる可能性はあるのか。

今までは、私の存在自体がこのゲームの不確定因子なら、原作からかけ離れた行動は取るべきでないと思って、なるべく尖ったことはしないようにしていた。

けれど最早、自分自身の命が懸かっているのだ。できることは、やるべきだろう。


というと、今のうちにアイリスに、セオの悪口を吹き込むとか――そんなの性格が悪過ぎて嫌だし、それ以前にもし私が言われたら、幻滅して相手への信頼ごと失ってしまいそうだ。

なら、他のキャラのことをゴリ押ししてみるとか。

リアムもベアリング卿も悪い人でないことはわかっているし、編入以前から知り合いのテイラー先生も、全然アリだと思う。

王道なのは第二王子だろうけれど、全く知りもしない人のことをどうこう言うのも変だろう。

逆に、相手キャラにアイリスを推すと言うのも、彼女が良い子なのは本当だし、いいかもしれない。


「でも、保身のために、敢えて他の人を差し出すみたいなのもな…」


このゲームの特性上、病んだり死んだりという可能性は、間違いなくある。

ルートに入ればそれが回避されるのか、逆に入らない方が良いのかわからないとは言っても。

それぞれのキャラの感情を考えると、私が自分の身を守るために無理に展開を捻じ曲げようとするのは、倫理的にどうかと思わなくもない。

ただ、それで自分が死んだら倫理も何もないわけで。

ゲームの展開が、アイリスの編入からいつまでかわからないけれど、それを越えれば、後はきっと解放されるのだろうし。

そこまでは、当初の方針から変わらず、自分のこと(物理)を第一に考えると、腹を括るしかないのだろうか。

そうなれば。

私が今後の行動指針として、これから意識していかなければいけないことは。


1.なるべくアイリスを、セオのルートに進ませないよう行動する。


これが一つ。

そしてもう一つ、できることがあるとすれば。


2.なるべくセオと離れる。

婚約なんて可能性が出てこないよう、他の人にもそう思われないように振る舞う。


当初は、セオと距離を取ることだけは、やりたくないと思っていたけれど。これも最早、背に腹は変えられない。

ルイーズと話していた時にも、考えたけれど。

もしアイリスがセオのルートに入ってしまったとして、私と彼に関係がなければ、何も起こらないのではないか。

――少なくとも婚約者でないのなら、展開的に邪魔だから消されるという選択肢はなくなるか、なくなりはしなくても、何か変わるはず。

婚約以前に私の存在自体が邪魔になる可能性だって考えられるのだから、そもそもゲームの時系列にいる間は、彼とは一緒にいない方がいい。

逆に、私がセオルートの関係キャラなのだとしたら、今まで避けようとしていた他のキャラの方が、安全な気さえする。

嫌な話、アイリスがセオ以外のルートに進んでくれることを望むのなら、むしろ彼らのことも、ある程度は知っておく方がいいのかもしれない。

とはいえ、近付き過ぎてそちらに巻き込まれても困るから、露骨に避けるまでしなくても、やはり今まで通りの距離感でいるべきか。


「うーん…となると、そっちは無理か」


幼馴染みで婚約者候補のように思われている私が、一番手っ取り早くセオと離れられる方法。

一つだけ、思いついてはいる。


これまでそれどころではなかったけれど、そもそも寄宿学校自体が貴族令嬢にとって、花嫁修行機関であって。

女子生徒はここで高位の男子生徒に見初められて、玉の輿に乗ることが想定されている。

周囲がどう考えていて、ゲームでどういう展開になるかは知らないが、私も初めから両親にはセオのことは何も言われていないどころか、そいういう相手を見つけることを期待されていたのだ。

その上で、問題ないと言われている。

私が寄宿学校に在学中は、好きな人と好きにいればいいと。

――本人にはそんなことを言っておきながら、セオとのことを期待されていたのだとしたら、とんだ食わせ物だが。

あるいはセオとのことが決まっているからこそ、在学中は好きにしていいと言われたのか。


それでも、ひとまず言質はあるのだ。

在学中なら家格なんて関係なく、私が誰かと恋人同士になったとしても、家としては問題ないわけでしょう。

実際、客観的に将来性を感じない相手だとしても。

とりあえず今の間だけでも、それらしい相手がいさえすれば、セオと私はただの幼馴染みという扱いに、なるのではないか。


まあ、問題は。

アイリスが共通ルートの間に、私にそんな相手が見つかるかだが。

「なんだかんだ親しい男性がゲームの関係者過ぎて、アテがないのよね…」

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