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2. 見えない未来を回避する

現状、私の周囲に関して思いつくことも思い出せることも、これくらいだろう。

それよりも、最も大きな問題は神子のこと。


今は6月。

あと1ヶ月弱で夏季休暇が始まり、休暇が終わると9月から学年が上がって、秋学期が始まる。

神子が一体どのタイミングで入学してくるのかわからないけれど、この時期では流石に中途半端なので、ゲームなら、キリの良い9月から始まるのではないかと思う。


神子の年齢もよく知らないけれど、第二王子は一つ上の学年で、エヴァンス卿は同い年、ベアリング卿は二つ上の学年なので、バランスを考えると一つ上か同い年だろう。

全く話の流れはわからないが、年末の国王祭の晩餐会はイベントとしてよく出来ていると思うので、エンディング前には相手キャラとそこで踊るはず。

けれど、セオが確か去年の晩餐会の時、ダンスに誘われることはできても、相手を誘うことは4年生しかできないと言っていた。

もし私たちより一つ上だとすると、神子の卒業時に3年生のエヴァンス卿とは踊れない。

神子とはいえ、女生徒が自分から男子生徒を誘って良いものなのか――この国のマナーや世界観としては、難しいような気がする。

だとすると、私たちと同学年なのかもしれない。

ということは、神子は入学時に2年生。

卒業まで2年間のゲームとすると、少し長めの設定なような気もする。ベアリング卿なんて、卒業してしまうし。

けれど。まあ、これは考えても仕方なさそうなので、今はやめておこう。

どうせ、入学してくればわかる話なのだし。


それ以外のこと。

みんなが言っていたおとぎ話については、図書館で少し調べてみた。

まず、この国の建国に関わる、星の女神という神様がいる。

女神が統べていた国は、ある時から邪悪なドラゴンに荒らされてしまう。

それを聞きつけた騎士が現れると、女神は星の力と予知の力で騎士の戦いの手助けをして、ついに騎士はドラゴンを倒す。

女神の国を救ったお礼に、女神は騎士を王として認め、癒しの力を使って荒らされた国土を癒した、と云われている。


星詠の神子は、女神の国に危機が訪れた時に現れて、星を詠んで女神の神託を受けて未来を知り、癒しの力を使って国を癒す存在。

多神教の国なので様々な神様が祀られているけれど、星の女神だけは別格で。お話の中では、救国のため遣わされる星詠の神子に、王すら頭を下げていた。

それなら、神子の各地の厄災予防と癒しの旅に、王子や貴族令息が着いていくというのも。庶民出身の彼女に、教育の機会を与えるために学校に通わせるというのも。

まあ、設定として理解はできる。

そして、おとぎ話では、神子は王子と結婚して共に国の繁栄を導いた、という終わり方だった。


この流れから考えて、ゲームとしてメインの攻略対象キャラは、王子だろう。

フィン王子は第二王子なので、彼とのルートがメインルートだとするなら、第一王子で婚約者がいるヒュー殿下の存在があれでどうにかなりそうで、非常に嫌な予感はするけれども――そういえば国王祭の時にも、何か怪しげな噂が聞こえていたような。

とりあえず誰のルートに入るのかはわからないので、この嫌な予感も、今は気にしないでおく。



多分。

これから現れる神子が、誰のルートに入るか、どういうエンディングを望むかで、攻略対象キャラや神子自身の生死まで含め、展開は全く変わってしまうのだろう。

異世界転生系の小説なんかでは、私のようにメインでないキャラに転生してしまう話の場合、主人公も転生していて、今後の展開を知っている場合が多かったような気がする。

あるいは、メインルートの主人公であるか。

神子にも私のように、この世界の記憶があるのなら――私に記憶があると言っていいのかは別として――協力し合えることもあるかもしれないし、接触してみる方が良いと思う。

けれど、もしそうでないのなら。

攻略対象キャラの面々同様に、私から関わってしまうことで、余計なトラブルに巻き込まれてしまう可能性は、極めて高くなるだろう。

選択は一度きりしかないし、もしも失敗すればどうなるか検討もつかないし、やり直しもできない。

それならば。

ひとまず、自分の中での当面の行動指針を考える。


この世界が、私の知る――あるいは知らない、乙女ゲームの世界なのだとしたら。


腐っても乙女ゲームなのだから、神子の入学早々に何かが起きて誰かが死ぬ、なんてことはないはず。

それなら、全く先の展開がわからない以上、とりあえずは神子や攻略対象キャラと思しき方々とは距離をとりつつも様子を観察して、できるだけ情報を集めて整理しておく。

ゲームの展開が予想できる情報が出てくるかもしれないし、私自身も何か新たに思い出すことがあるかもしれない。

神子や進んでいるルートの状況がある程度掴めたら、神子に接触すべきなのかを、その時に改めて考えることにして。

もしも、やむを得ず神子や攻略対象キャラと接触してしまった場合は、なるべくすぐに接点を消す。


基本的には、このスタンスでいくとして。

家ぐるみで親しくしているセオだけは、今更知らないフリをして距離を置くなんてできない。

攻略対象キャラの可能性も高いので、近くにいるのは危なっかしいとは思うのだけれど。

そもそも、初めて会った時から今もずっと、私のことを心配して気遣ってくれていて、感謝してもし切れない相手だもの。恩を仇で返すなんてできない。

もしもセオが神子の攻略対象で、厄介な存在なのだったとしても。

彼のことは、なんとかして助けたいと思う。

あとの人は――ベアリング卿は、クラブで親しくしてもらっているとはいえ――今の私にとっては基本的に他人だから、そこまでの情はない。

できれば私が彼らに無縁で、セオが無事なルートに進んでくれれば。最悪、あとのことは諦めることを考えることも、あるのだろうと思っている。

今は表面上、特に何かがあるようには見えないのだけれど、この先どうなるかなんて、私には想像もつかないのだから。



神子が入学してきたら、一体みんなに何が起きるのだろう。

すぐ病むというのは各キャラクターの性格の問題としても、とにかく、すぐ死ぬというのがいただけない。

厄災を沈めるために神子がいるんだから、その関連で主要キャラが死ぬとは思えない。とすると、事件なのか事故なのか。

すぐ病むすぐ死ぬという謂れとして考えられるとしたら、攻略している途中で、すぐヤンデレ・バッドエンドになってしまうというイメージだけれど。

このイメージであっているのだろうか。

攻略難易度の高いゲームとしては、有り得そうな気もするけれど。


それだけで「最早鬱ゲー」と呼ばれるものなのだろうか。

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