19回表 託付(たくふ)
八回裏。
スコアボードには、重い数字が刻まれていた。
出雲社学園 1―0 島大松江
残された攻撃は、あと二回。
七回まで島大松江は、出雲社学園の巧みな継投と堅い守備に封じ込められていた。
セーフティーバントの構え。
盗塁を匂わせるリード。
ファウルで粘り、相手に一球でも多く投げさせる。
鈴木監督はあらゆる手を使って、相手投手と守備陣の神経を削ってきた。
そして八回裏。
鈴木監督がベンチの選手たちを見渡した。
「もういい」
太一が監督を見る。
「バントの構えは終わりだ。ここからは積極的に振っていけ」
選手たちの目が変わった。
「相手は今、俺たちが何をしてくるのかを考えすぎている。だったら今度は簡単だ」
鈴木は右手を振った。
「来た球を――思い切り打て」
「はい!」
八回裏――振り切れ
先頭打者が打席へ入る。
初球。
ストレート。
いきなり振った。
カキィン!
「打った!」
実況の高瀬健一が声を上げる。
鋭い打球。
三遊間!
だが――。
ショートが横っ飛び。
捕った。
素早く立ち上がって一塁へ。
「アウト!」
一死。
『長岡さん、いきなり初球から振ってきました』
解説の長岡征一郎が頷いた。
『明らかに攻撃方法を変えましたね』
次の打者もバントの構えを見せない。
二球目。
強振。
カァン!
センターへ鋭いライナー。
しかしセンターが前進。
キャッチ。
二死。
そして三人目。
こちらも積極的に振る。
外角球を逆方向へ。
いい当たりだった。
だがライト正面。
「アウト!」
スリーアウト。
三者凡退。
結果だけなら、それまでと同じだった。
しかし。
出雲社学園ベンチでは、石塚監督だけが腕を組んだまま動かなかった。
「今度は振ってきたか……」
七回までは揺さぶる。
八回は突然、強振。
島大松江は一点も取っていない。
それなのに。
攻撃するたびに姿を変えてくる。
選手たちはまだ気づいていない。
1―0で勝っている。
その事実に安心している。
だが石塚だけは感じていた。
――まだ終わらん。
――むしろ、ここからだ。
九回表――八雲、最後の守備
マウンドには和田八雲。
捕手・竹内さおりがしゃがむ。
八回から通常配球に戻したことで、出雲社学園の打者は逆に球種を絞れなくなっていた。
六回は直球。
七回は変化球。
八回からは、その両方。
そして九回。
さおりには鈴木監督から一つだけ指示が与えられている。
――今日の八雲で、一番いい球を使え。
八雲が振りかぶった。
第一球。
ズバン!
「ストライク!」
実況席が沸く。
『九回に入っても和田の球威が落ちません!』
第二球。
変化球。
ファウル。
第三球。
打った!
三遊間への強烈なゴロ。
抜ける――。
梶谷出雲が飛んだ。
横っ飛び。
グラブに収める。
立ち上がる。
一塁へ!
「アウト!」
『梶谷、ファインプレー!』
梶谷は喜ばない。
何事もなかったようにボールを八雲へ返した。
一死。
続く打者。
八雲のストレートに詰まらされた。
セカンド後方。
難しい打球。
佐野慎之介が背走する。
センターのこなつも前進。
慎之介が最後に身体を伸ばした。
捕った!
「アウト!」
二死。
『佐野慎之介も捕った! 島大松江、九回に入って守備にまったく隙がありません!』
そして三人目。
八雲。
初球、ストレート。
ストライク。
二球目、スライダー。
ボール。
三球目。
ストレート。
ファウル。
1―2。
さおりがミットを構えた。
八雲が頷く。
第四球。
打った!
ライト前!
大和が猛然と前へ出る。
滑り込む寸前でグラブを差し出した。
捕った!
「アウト!」
スリーアウト。
九回表終了。
出雲社学園 1―0 島大松江。
大和は立ち上がる。
何も表情に出さない。
八雲も吠えない。
九人が静かにベンチへ戻る。
そして全員がファウルラインを越えた。
その瞬間。
八雲が叫んだ。
「頼んだぞ!」
「おおっ!」
最後の攻撃。
あと三つアウトを取られれば。
島大松江の夏は終わる。
九回裏――最後の攻撃
先頭は二番。
キャッチャー・竹内さおり。
『ムーンライト伝説』が響く。
第一球。
ボール。
第二球。
ストライク。
第三球。
ファウル。
追い込まれた。
だが、さおりはここから粘った。
第四球。
ファウル。
第五球。
ファウル。
第六球。
ボール。
2―2。
第七球。
ファウル。
第八球。
際どい。
見送った。
ボール。
フルカウント。
第九球。
またファウル。
そして十球目。
外角。
さおりのバットは動かなかった。
球審の右手も上がらない。
「ボール!」
フォアボール!
ノーアウト一塁。
さおりはガッツポーズをしない。
静かに一塁へ向かう。
実況の高瀬が声を張った。
『さあ、先頭の竹内が攻撃の口火を切りました! 俊足の竹内です。鈴木監督はどのような作戦を取るのか!』
長岡。
『興味ありますね。まずは同点狙いですね』
その言葉を聞いたかのように。
鈴木監督の目が光った。
突然。
応援が止まった。
数秒の静寂。
そして――。
応援主将・島崎が右手を上げた。
振り下ろす。
吹奏楽部長・青木が指揮棒を振る。
応援団長・長谷川。
チアダンス部・江上。
合唱部・若林。
ITシステム部・佐々岡。
放送部・徳川。
そして全校生徒。
新たなチャンステーマが球場を包んだ。
『誰がために』。
全員がグラウンドを向いている。
決勝戦で行われる、あの前代未聞の応援ではない。
今はただ。
選手へ力を届ける。
それだけだった。
しかし。
音圧が違った。
空気が変わった。
『また島大松江、応援を変えてきました!』
球場全体がざわめく。
三番・和田八雲
第一球。
スライダー。
「ストライク!」
0―1。
第二球。
低い!
ワンバウンド!
捕手が身体で止めた。
その瞬間。
さおりが走った。
『竹内スタート!』
捕手が拾う。
だが間に合わない。
セーフ!
ノーアウト二塁。
『竹内、二塁を陥れました!』
応援席の覇気が一段上がる。
長岡が言う。
『強打者が続きます。ここは送りバントでまずは同点にすることです』
第三球。
外角ストレート。
ボール。
しかし。
八雲に送りバントの気配はない。
第四球。
ストレート。
八雲が強振した。
カキィィン!
『打ったぁ! 大きい!』
ライトが下がる。
さらに下がる。
『ライト、バックする!』
球場中が立ち上がる。
だが。
上空の風が押し戻した。
ライトがフェンス手前で捕球。
「アウト!」
さおりはタッチアップ。
二塁から三塁へ。
一死三塁。
八雲は表情を変えずベンチへ戻る。
ラインを越えた瞬間。
頭を抱えた。
「ちくしょう! あと少しでゴジラになれたのに!」
一瞬、ベンチに笑いが起こる。
実況席。
『惜しかったですね』
長岡が分析する。
『風だけではありません。球威で少し詰まった打球です。しかし最低限の仕事はしました。一死三塁です』
高瀬の声が低くなる。
『そして――四番です』
四番・竹下大和
球場アナウンス。
「四番、ライト――竹下君」
大和が立ち上がった。
一死三塁。
一点取れば同点。
しかしアウト二つで試合終了。
実況。
『ここで四番・竹下君!』
解説。
『まずは同点です。強打者・竹下君ですが、ここはスクイズでしょう』
『島大松江、鈴木監督どうする!』
大和が鈴木監督を見る。
サインが出た。
大和の目が鋭くなる。
ヒッティング。
スクイズではない。
打て。
大和がベンチを見る。
全員が立っている。
皆。
笑っていた。
誰も。
不安そうな顔をしていない。
――皆が信じてくれている。
大和は打席へ向かった。
――集中しろ。
バーンズコーチのクラッシュ理論。
松田コーチの心眼。
弓道で学んだ集中。
間。
溜め。
すべてを魂に詰め込む。
――初球だ。
大和は考える。
――この状況なら外角ストレート。
――向こうは俺が初球を見送ると思っている。
――まず状況を落ち着かせるためのストレート。
――それを打つ。
出雲社学園バッテリーはベンチを見る。
大事な局面。
石塚監督の指示を仰ぐ。
石塚も考えていた。
――初球。
――スクイズもある。
――だが竹下は県下屈指の強打者。
――スクイズなど、ほとんどしたことがない。
そして。
気づいている。
――竹下は初球から来る。
石塚はサインを出した。
変化球。
タイミングを外せ。
両者とも。
初球から勝負だった。
武田がセットポジション。
三塁走者さおりを牽制する。
そして。
投げた。
さおりが胸の前で一瞬だけ手を合わせる。
――信じているよ、大和。
大和の目に白球が入った。
――来た。
――外角ストレート。
――必ず打つ。
――兄ちゃん、見ててくれ。
大和が強振する。
石塚監督が目を見開いた。
「スクイズじゃない!」
だが次の瞬間。
白球の軌道が変わった。
大和の顔色が変わる。
「ス……スライダーだ!」
カンッ!
乾いた音。
打球は高く上がった。
一塁側。
ファウルゾーン。
大和が走りながら見上げる。
――しまった。
――打ち損なった。
一塁手が追う。
――捕られる。
――くそっ。
そして。
――兄ちゃん。
――すまない。
その時だった。
大和には。
兄の声が聞こえた気がした。
――よくやってるよ。
大和の目が揺れる。
――野球は、お前一人でするものじゃない。
幼いころ。
兄とキャッチボールをした河川敷。
何度捕れなくても。
兄は怒らなかった。
――次の仲間を信じろ。
大和が天を仰いだ。
その瞬間。
「うわああっ!」
球場が揺れた。
実況が絶叫する。
『ファーストが落球しました!』
白球がグラウンドに転がっている。
ファウル。
アウトではない。
長岡がすぐに解説する。
『太陽の光が目に入ったかもしれません。それに少しフェンスも気になったでしょう』
さらに。
『無理な体勢で捕球してボールがフェアゾーンへこぼれれば、三塁ランナーは俊足の竹内さんです。一塁手にはいくつもの判断が一瞬で重なったと思います』
島大松江ベンチ。
誰も喜ばなかった。
本当なら。
命拾いした。
そう叫びたい。
だが。
一塁手の気持ちが痛いほど分かった。
同じ高校生。
同じ野球選手。
同じ夏を懸けている。
こなつが静かに言った。
「……野球、すごいね」
鈴木監督が呟く。
「これが野球だ」
出雲社学園ベンチ。
石塚監督が叫んだ。
「顔を上げろ!」
一塁手が見る。
「まだ終わってない!」
「はい!」
一塁手は帽子を直した。
大和もその姿を見る。
そして。
もう一度。
バットを握った。
――兄ちゃん。
――見てくれてる?
――病室で。
――今、弟が全部を懸けて勝負しているところを。
――だから兄ちゃんも病気に負けないで。
大和は深く息を吸った。
――僕は、必ず勝つ。
石塚監督は考える。
――竹下は迷っている。
――初球は変化球。
――もう一度変化球か。
――それともストレートか。
――ここは見てくる可能性が高い。
そして鈴木監督を見る。
――いや。
――鈴木ならスクイズもある。
石塚は腹を決めた。
「逃げた方がやられる」
サイン。
ストレート勝負。
武田が頷いた。
一方。
鈴木監督もサインを送った。
大和が確認する。
そして。
三塁上のさおりも。
サインを見た。
『さあ、試合再開です!』
武田。
セットポジション。
第二球。
投球動作へ――。
「あっ!」
実況が叫んだ。
『三塁ランナー竹内、スタート!』
さおりがホームへ走る。
「大和!」
走りながら叫んだ。
「頼んだぞ!」
武田の目が一瞬だけ三塁へ動く。
――スクイズ!
ほんのわずか。
投球フォームのリズムが遅れた。
実況。
『スクイズだ!』
ところが。
『あっ!』
大和は。
バントの構えをしていない。
『竹下君はスクイズの構えではありません!』
『サイン間違いか!?』
石塚監督が思わず前へ出た。
――サイン間違いだ。
――もらった。
――ボールになれ!
だが。
白球は。
内角のストライクゾーンへ入ってきた。
ストレート。
その瞬間。
大和の頭から。
すべてが消えた。
兄。
病院。
観客。
応援。
鈴木監督。
石塚監督。
さおり。
何も聞こえない。
何も考えない。
ただ。
白球だけ。
心眼。
間。
溜め。
そして。
クラッシュ。
大和が振り切った。
カキィィィィィィン――!
先ほどとは。
まるで違う打球音。
白球がレフト方向へ高く舞い上がった。
『打ったぁぁぁぁぁ!』
レフトが下がる。
下がる。
大和は一塁へ全力疾走。
心の中で叫ぶ。
――行け!
さおりは途中で止まった。
三塁へ戻る。
タッチアップの準備。
石塚監督が。
打球を見上げた。
「……やられた」
ようやく理解した。
さおりのスタートは。
スクイズではなかった。
フェイク。
走者をスタートさせることでスクイズを意識させ、武田の投球リズムをほんの一瞬だけ乱す。
しかし。
最後に打つのは。
四番。
鈴木監督は。
大和のバットに勝負を託した。
実況。
『大きい!』
『レフト、バック!』
『まだ下がる!』
球場中が立ち上がった。
『どうだ――!』
レフト。
フェンス際。
振り返った。
白球は。
その頭上を越えた。
レフトスタンド。
一瞬。
時が止まった。
そして。
球場が爆発した。
『入ったぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『ホームラン!!』
『竹下大和!!』
『逆転サヨナラ、ツーランホームラン!!』
『島大松江高校!!』
『1対2!!』
『決勝進出です!!』
大和は。
叫ばなかった。
ガッツポーズもしなかった。
一塁。
二塁。
静かにベースを踏む。
ベンチでは。
全員が立っていた。
だが。
誰一人。
グラウンドへ飛び出さない。
実況が気づいた。
『島大松江高校――誰もグラウンドへ飛び出しません!』
長岡が静かに答える。
『最後まで相手への敬意を崩さないんですね』
三塁。
大和とさおりの目が合った。
さおりは小さく頷いた。
大和も頷く。
さおりが先にホームを踏む。
そして。
大和。
ホームベース。
踏んだ。
その瞬間。
大和の唇が動いた。
「……兄ちゃん。」
ベンチの仲間たちは。
いつの間にか。
手をつないでいた。
こなつ。
八雲。
梶谷。
山内。
阿知波。
太一。
慎之介。
玉木。
ひまわり。
美佐子部長。
全員。
涙をこらえながら。
大和を待っている。
大和がベンチへ歩く。
ファウルラインを越えた。
その瞬間。
大和の顔が。
崩れた。
「兄ちゃあああん!」
涙が溢れた。
仲間たちも。
もう我慢できなかった。
大和を囲む。
泣く。
笑う。
抱き合う。
ベンチの中だけで。
歓喜が爆発した。
実況の高瀬も声を震わせた。
『ここで――ここで初めて島大松江高校、感情を爆発させました!』
長岡は静かに言った。
『これが、このチームなんでしょう』
そして。
『両校とも、これぞ高校野球です。誰も逃げなかった。最後まで正々堂々と戦い抜きました』
一呼吸。
『本当に素晴らしい試合を見せてくれました。両校の選手たちに、ありがとうと言いたいです』
大和が鈴木監督へ向かった。
「監督……!」
涙で言葉にならない。
「ありがとうございました!」
大和が鈴木に抱きついた。
鈴木は大和の背中を一度だけ叩いた。
そして。
「礼を言うなら」
ベンチの後ろを指した。
「兄貴に言え。」
大和が振り返った。
そこに。
一着のユニフォームが飾られていた。
兄。
竹下大樹。
鈴木監督が島大松江に就任した時の主将。
甲子園を夢見た男。
そして。
大和へグラブを託した兄。
大和の目から。
さらに涙が溢れた。
「兄ちゃん……」
美佐子部長が。
静かに大和を見る。
そのユニフォームを飾ったのは。
九回裏だった。
美佐子はずっと迷っていた。
病気や怪我でグラウンドを離れた選手のユニフォームを掲げることが、まるで不幸を予感させるようで。
どうしてもできなかった。
だが。
九回裏。
これが大和の最後の高校野球になるかもしれない。
そう思った。
だから。
せめて最後だけは。
兄も一緒にベンチへ入れてあげたかった。
その頃。
病院。
テレビから。
実況の絶叫が響いていた。
母親が大樹の手を握っていた。
「大樹!」
テレビには大和。
「勝ったよ!」
母親の顔が涙で崩れる。
「大和が打ったよ!」
「決勝だよ!」
「大樹、聞こえた?」
返事はない。
母親は。
息子の顔を見た。
そして。
気づいた。
大樹の心臓は。
静かに。
その鼓動を止めていた。
母親は。
しばらく何も言えなかった。
ただ。
大樹の手を。
両手で包んだ。
「大樹……」
涙が落ちる。
「あなたも、よく頑張ったね」
「本当に……」
「本当によく頑張った」
声が震える。
「あなたは最期まで、決して諦めなかった」
そして。
母親は。
泣き崩れた。
「でもね……生きてほしかった。」
「甲子園なんかより……」
「もっとずっと……」
「生きていてほしかったよ……」
テレビでは。
サヨナラホームランのリプレイ。
大和が一塁。
二塁。
三塁。
そして。
ホームへ。
映像がアップになる。
母親は。
泣きながら画面を見た。
大和の唇が。
確かに。
動いている。
「にいちゃん。」
母親が口元を押さえた。
そして。
大樹へ顔を戻す。
その時だった。
大樹の目尻から。
一筋の涙が。
静かに。
こぼれ落ちていた。
球場。
球審が両校に整列を促した。
島大松江の選手たちは。
涙を拭いた。
相手への敬意。
最後まで。
島大松江は。
島大松江でなければならない。
名門・出雲社学園。
そして。
島大松江。
死力を尽くした両校が。
ホームベースを挟んで向かい合った。
「礼!」
「ありがとうございました!」
深い一礼。
勝者も。
敗者も。
同じ高校球児だった。
島大松江は校歌を斉唱した。
その後。
審判団へ一礼。
自校の応援席へ一礼。
そして。
最後に。
出雲社学園の応援席へ向き直った。
全員で帽子を取り。
深く。
頭を下げた。
出雲社学園のスタンドから。
大きな拍手が返ってきた。
大和は。
その音を聞きながら。
空を見上げた。
兄から託されたグラブには。
かつての文字が残っている。
『皆で甲子園』
その下に。
兄が最後に書き加えた言葉。
『託したぞ 大和』
大和は胸の中で答えた。
――兄ちゃん。
――まだだよ。
――あと一つ。
――みんなで。
甲子園へ行くから。




