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栄冠は君に輝く  作者: konatsu


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14/20

7回裏 希望

保護者会の翌日。


グラウンドに衝撃が走る。


一年生の若槻太一が、


野球部への入部届を提出した。


ざわつく部員たち。


太一は入学以来、


野球とは距離を置いていた。


野球経験者であることは知られていたが、


入部を希望したことは一度もない。


鈴木監督の表情が曇る。


「本気か。」


太一は監督を睨む。


「本気です。」


「野球部に入りたい。」


鈴木監督は首を横に振る。


「認められない。」


部員たちも困惑する。


その時。


さおりが前へ出る。


「監督。」


「チャンスをあげてもいいと思います。」


こなつも頷く。


「野球部は誰にでも門戸を開くべきです。」


鈴木監督は黙る。


松田コーチが笑う。


「面白い。」


「テストでもするか。」


鈴木監督。


「入部テストだ。」


太一。


「望むところです。」


グラウンドに緊張が走る。


テスト開始


最初は打撃。


マウンドには出雲。


島根屈指のエース。


出雲。


「本気で行くぞ。」


145キロ近い速球。


カキーン!


左中間フェンス直撃。


部員騒然。


二球目。


変化球。


カキーン!


今度は右翼線へ。


三球目。


高めの速球。


ホームラン。


静まり返るグラウンド。


出雲。


「嘘だろ・・・。」


次は守備。


三遊間の深いゴロ。


太一は滑り込む。


立ち上がる。


レーザービーム。


一塁アウト。


浜口が呆然とする。


次は走塁。


50メートル。


チームトップクラス。


ベースランニング。


完璧。


全てが終わる。


部員たちは確信した。


「受かる。」


「いや。」


「即レギュラーだ。」


太一も自信に満ちていた。


実は。


日本へ帰国してからも、


太一は野球を続けていた。


誰にも知られず。


目立たないように。


試合では手を抜いた。


だが。


人のいない河川敷。


早朝の公園。


夜のバッティングセンター。


誰よりも練習していた。


誰よりも野球を愛していた。


そして。


誰よりも野球を憎んでいた。


太一は鈴木監督を見る。


「これで文句ないでしょ。」


「俺は合格だ。」


しかし。


その瞬間。


前へ出たのは鈴木監督ではなかった。


主将・竹内さおり。


副主将・石川こなつ。


二人だった。


さおり。


「若槻太一。」


こなつ。


「入部テスト。」


二人は顔を見合わせる。


そして。


「不合格。」


グラウンドが凍りついた。


太一。


「・・・は?」


出雲も。


八雲も。


大和も。


全員が驚く。


太一が怒鳴る。


「なんでだ!」


「全部できただろ!」


さおりは静かに答える。


「あなた。」


「野球が好きじゃない。」


太一の表情が変わる。


こなつ。


「いや。」


「好きすぎるんだよね。」


「だから壊そうとしてる。」


太一は何も言えない。


さおり。


「島大松江高校野球部は。」


「野球が上手いだけじゃ入れない。」


「仲間になれるかどうか。」


「それが試験だから。」

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