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栄冠は君に輝く  作者: konatsu


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12/19

6回裏 敬意

春季大会敗退から二週間。


島大松江高校野球部は新たな取り組みを始めていた。


主将・竹内さおり。


副主将・石川こなつ。


そして鈴木監督。


三人を中心に始まった改革。


最初は戸惑いの声もあった。


特に和田八雲だった。


「打席で礼?」


「三振しても礼?」


「意味あるのか。」


さおりは怒らない。


「分からない。」


「でもやってみたい。」


八雲は首を振る。


「変なチームだな。」


その言葉に、


こなつが笑った。


「今さら?」


週末。


練習試合。


相手は県内の強豪校。


試合開始。


一回表。


こなつが打席へ向かう。


帽子を取る。


「よろしくお願いします。」


球場が少しざわつく。


結果は空振り三振。


しかし。


こなつは振り返る。


帽子を取る。


「ありがとうございました。」


相手捕手が思わず笑う。


「面白い奴だな。」


四回。


八雲が死球を与える。


その瞬間。


ベンチ全員が立ち上がる。


脱帽。


深々と頭を下げる。


「申し訳ありません。」


相手打者が驚く。


観客席もざわつく。


八雲は初めて感じた。


「俺の失敗を。」


「みんなが背負ってくれている。」


その後の八雲は、


いつも以上に丁寧に投げた。


六回。


浜口がエラー。


以前なら、


「ドンマイ!」


が飛んでいた。


しかし今は違う。


浜口。


「すまん!」


すぐに守備位置へ戻る。


梶谷出雲。


「次を取る。」


玉木。


「俺が抑える。」


誰も責めない。


誰もごまかさない。


試合終了。


島大松江高校勝利。


整列。


相手チームへ礼。


審判団へ礼。


応援団へ礼。


そして。


相手応援席へ向き直る。


「ありがとうございました!」


相手応援席から拍手が起こる。


それを見たさおりは思う。


「これがやりたかったんだ。」


その夜。


寮の談話室。


佐野慎之介が黙々とスパイクを磨いていた。


隣にはひまわり。


「珍しいね。」


慎之介。


「監督の言う通りかなと思って。」


「何が?」


「道具への感謝。」


磨き終えたスパイクを見る。


「こいつがなかったら野球できないから。」


ひまわりは少し笑う。


「お兄ちゃんらしくない。」


「うるさい。」


しかし顔は少し嬉しそうだった。


翌朝。


練習前。


全員が円陣を組む。


手を繋ぐ。


さおり。


「今日は小村。」


突然指名され、


小村が慌てる。


「えっ?」


全員が笑う。


小村は少し考えた後、


口を開く。


「俺。」


「このチームが好きです。」


静かになる。


「だから甲子園に行きたいです。」


誰も笑わない。


全員が頷く。


鈴木監督はその様子を見つめていた。


隣には美佐子部長。


「変わったわね。」


鈴木監督。


「ああ。」


「強くなった?」


監督は少し考える。


「まだ分からん。」


そして微笑む。


「だが。」


「良いチームになった。」


夏の予選まであとわずか。


島大松江高校は、


勝利だけを追うチームから、


野球に敬意を払うチームへ変わり始めていた。

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