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第80話 イマジナリー、ファイナル

 俺自身は、両手にジャガイモとレシピノートを、しっかり握った。深く息を吸い込む。そして——頭の中に、これまで召喚した全ての物を、頭に浮かべる。

 お地蔵様、ブロッコリー、こけし、納豆、除草剤、巨大ハサミ、シャボン玉装置、巨大ラジコン。そして、俺自身の本『転ポテ』。ベルフォードの指輪。ゾルダンの青い宝石。

 全部揃った。


「イマジナリースキル、ファイナルッ!」


 次の瞬間、玉座の間の空中に、次々と物が現れ始めた。

 

 お地蔵様が七十体、にこやかに床にずらりと並ぶ。そして、淡い光を放ちながら、ダグラスの周りを取り囲み、絶望の黒い心を吸い取ってゆく。

「な……なんだ、この奇妙な感覚は……妙に、心が休まる…」

 そして、ブロッコリーの森が天井まで伸び……丸っこいこけし「タクヤ二号」が、床にころころ転がって足元にまとわりつく。

「う……なんだこれは、思うように動けぬ」

 納豆の樽の蓋がぱかりと開いて、独特の匂いが玉座の間に広がる。除草剤の缶がぼとりと落ちる。巨大ハサミがちょきちょきと動き周り、ダグラスを切り裂こうとする。シャボン玉装置がぶわぶわとシャボン玉を放出、幻想的な光景が広がる。

「な……何が起こっているのだ!」

 天井近くには、リーラの銀の指輪、ゾルダンの青い宝石、そして俺の本『転生したらポテトフライでした』が、ふわりと浮かび、ゾルダンを取り囲む。


 混沌の祝祭。俺の旅の、全ての召喚物が、戦場に揃った。

「これが、俺の旅の、全てだ」

 俺は両手を広げた。

「絵心のないおかげで……、間違って召喚したガラクタばかりだ。でも、これに、全ての絆がこもってる」

 ダグラスが、ふっと初めて小さく笑った。

「勇者よ……お前は、全く、奇妙な男だ。こんなガラクタで、我の動きを封じるとは」

 俺は、声高らかに、言い放つ。

 

「効けばいいんだよっ!!」


◇◇◇◇


「今だ!」

 アメリアが、シエルの青い剣を両手で握り、地を蹴った。

 彼女の耳元に、母の声、そしてシエルの声が——ふっと聞こえる。


 「アメリア、あんたの三段斬りは世界一よ」

 「私の四段を、お前に託した」

 

 彼女の目に涙が滲んだ。誇りの涙だった。

「ファイナル、三段斬り!」

 さらに加速し、一気に踏み込む。

「そして、シエルの四段、合わせて、七段斬りィッ!」

 

 彼女の剣が円の軌道を描いた。一段、二段、三段、と回転し、四段目の突きがダグラスの中心を貫いた。それでも終わらず、彼女の体が回転して、五段、六段、七段目が、彼の全身を——深く薙ぎ払った。

 

 ダグラスの体が、ぐらりと傾き——片膝が地についた。彼のローブは、あちこち深い斬撃で切り裂かれている。

 シャボン玉が、ぱちんぱちんと優しくはじけ始めた。ハサミはずどんと落下して、地面に突き刺さっている。混沌の祝祭が、しずかに収まっていく。

 

 アメリアが青い剣を、しずかに下ろした。彼女の頬に汗が伝っていた。

「シエル……そして、母さん! 見てくれた?」


 


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